声震わせ「返して」 法廷に響いた慟哭 相模原殺傷で美帆さん母が陳述

中学1年時の美帆さん(遺族提供)

 「美帆を返して」。17日に横浜地裁で開かれた津久井やまゆり園事件の公判で、まな娘の美帆さん=当時(19)=を失った母親が初めてついたて越しに植松聖被告と向き合った。止めどなくあふれる言葉に処罰感情をあらわにした。「憎くてたまらない。極刑でも軽い。どんな刑が与えられても絶対に許さない」。震える声に怒気を込めた。

 美帆さんが生を受けた12月の冬晴れの日から、とうとうと生い立ちを語り始めた。娘が3歳半で診断された自閉症を独学し、周囲にも理解してもらおうと、学校や地域で障害をテーマにした語りの場を開いた。「娘は私の全てでした」。ひたすらに娘を愛した日々を振り返り、「美帆はたくさんのことを教えてくれた。おかげで私は人の長所を見つける褒め上手になれた」と亡き娘に感謝を重ねた。

 人からあいさつされるだけで泣き叫んでいた娘は少しずつ、でも一歩一歩成長した。自分から人に歩み寄ってあいさつし、知り合い同然に接するように。娘が生きた足跡をたどり、「ひまわりのような笑顔で周りを癒やす存在だった」と誇らしげに語った。

 だからこそ、被告の「障害者は不幸を生み出す」との独善を真っ向から否定した。「勝手に決め付けないで。私は娘がいて幸せだった」と声色を変えた。

 事件から3年半余り。「あなたはこうして生きている。ずるい。おかしい」。何度も声を詰まらせたが、ため込んだ思いはあふれる涙とともに止まることはなかった。「美帆は未来を奪われた。だからあなたに未来などいらない」。途切れることのない慟哭(どうこく)を法廷に響かせた。

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