共産系と誤認し講演依頼撤回 横浜市緑区、理由も虚偽説明

 横浜市緑区が昨年12月に開いた人権啓発講演会で、講師を依頼した男性の所属する団体が共産党と関係があるとの誤った臆測から、依頼を取り消していたことが17日、分かった。また取り消す際、「ダブルブッキングだった」と虚偽の理由を説明。区は事実関係を認め、「中立性を過度に懸念した」などと釈明している。

 区が当初、講師を依頼したのは、視覚障害者で、NPO法人日本障害者協議会(東京都新宿区)代表の藤井克徳さん(70)。共同作業所の全国組織「きょうされん」の専務理事も務めている。

 区は昨年7月、きょうされんを通じて依頼。その後、区総務課の担当係長がきょうされんをインターネットで検索したところ、予測検索ワードに「共産党」などが出た。

 係長は「区民から、きょうされんが共産党と関係があるかのように思われ、区の中立性が疑われるのではないか」などと指摘。区は内部で再度協議し、別の人に講師を依頼し直すことを決めた。

 きょうされんに取り消しを申し入れる際、区は講師を他の人にも依頼していたかのように装った。

 神奈川新聞社の取材に対し、区は「中立性を過度に懸念してしまった」と説明。「ネット検索の結果で安易に判断すべきでなく、仮に(区民から)批判があったとしても、藤井さんを選んだ理由や活動実績などを逆にきちんと説明すべきだった」とした。

 一方、藤井さんは「一度承諾を得た依頼を、判然としない理由で『藤井はこうだろう』と思い込んで取り消すとは、あまりにも軽率だ。ばかばかしくてコメントする気にもなれない」と苦笑。その上で「人権とは多様性や異論を大事にしようということが根本の一つ。反省していただければ」と諭した。

 区は昨年12月4日、緑公会堂で講演会を開催。特別支援教育が専門の大学教授が講師を務めた。

© 株式会社神奈川新聞社