疑惑をかけられた経験者が語る?!「政務活動費」使用のリアル

昨年の統一地方選で、国内最高齢で都道府県議会議員に当選した、福井県の石川与三吉(いしかわ・よそきち)さん(89)が、2月12日に議員辞職願を提出し、受理されたというニュースがありました。報道によると、辞職の直接の原因は、2013年から2016年にかけての4年間に44回のカラ出張を繰り返し、政務活動費計約280万円を不正受給した疑い、ということになってました。

「それは、議会事務局は分からないよな…」

真相が明らかになるかどうか、は、今後次第ですが、同じ都道府議議員レベルの議員を務めた経験のある筆者の経験から、報道されている内容をみると、『それは、議会事務局は分からないよな』というものになります。議員自らが、その場所へ政務活動のための視察に行った、といい、領収書も含めた報告書が出されていれば、私の所属していた自治体に限らず、『性善説』に立って、議員の政務活動費の報告書をチェックしていく議会事務局が、疑義を挟む余地はなくなってしまうのです。

政務活動費の用途ですが、「政務活動」にしか、政務活動費は使ってはいけないのです。交付額、交付方法は各自治体によって異なりますが、①議員視察のための諸費用 ②議員活動に関係する書籍などの購入 ③議員研修会などに出席するための費用 ④人件費を含む事務所経費 などが正当な支出として認められているものです。しかし、この規定も含め、実は絶対に大丈夫、という規定がない、というのが実情です。

たとえば、調査研究、という名目がありますが、さきほどの①でどこかへ行った時のことを当てはめても、内訳として、交通費、研修費、会議費、などが入ってきて、さらに、その①の視察の際、ほかのことをしていなかったか(例・選挙運動の手伝い)などで、グレーなゾーンが出来上がってしまいます。それが明確な時は、按分により、分けることになりますが、按分というもの自体、すでにどこまでか、が分かりにくいものとなってしまっています。

おなかが痛くてトイレに1日20回行ったとしたら…?

議会事務局の『性善説』によるチェックが甘い、とか、市民オンブズマンなどに指摘されて、議会事務局の職員の方も大変だと思うのですが、簡単にいうと、何をやっても100パーセントはない、ということから、起こる問題なのです。たとえば、先ほどから挙げている視察の際、おなかの調子が悪くて「トイレ」に一日、20回以上行き、その総時間が2時間にも上った、としましょう。「トイレ」は生理現象ですが、その時間、「政務活動」をしていたことにはならないわけで、ということは、経緯費から差し引く(按分で分ける)、ということを、やれ、ということになるのか、といったら、ならないですよね。でも、仕事してない時間が、2時間ある、ということになってしまう。

多くの、実際に出張に行っていたり、政務報告をしていたり、は、この「トイレ」の例に近いものがあります。食事していた時間はどうする?業務が終わって、そのあと映画観たら、ダメなのか、一泊しなければいけない時間は、政務活動なのか、とか。一般の会社の、出張と同じに考えると、いかに議員の方の「政務活動費」の使い方が、理不尽な指摘にさらされているのか、お分かりになると思います。

コインパーキングは一日料金で停めたほうがオトクなのに…

私の指摘された経験で言いますと、「駐車料金」がありました。コインパーキングの利用ですが、一日最大700円とかあるとします。朝夕の、駅立ち(この駅立ちも、政党の旗を掲げてしまうと、それは政党活動です。少なくとも、私はそう考え、駅立ちでは、まず政党の旗を立てませんでした)、議会での所属会派と名前の分かるネームカードだけ下げて、通行される方が、何か相談に来られれば、これは、立派な政務調査、政務活動なのです。現実に、私は、そういった状況で一般(政党の関係はありません)の方からお聞かせいただいたことを、本会議や委員会での質問に生かさせていただいていました。

で、駐車料金に戻りますと、これ、もし、車の出し入れをしますと、2時間で400円とかかかるわけです。そうすると、朝、夕、2時間ずつ立つとそれだけで800円は要ることになります。だったら、一日、車を置いておいたほうが100円安く済む。税金を原資としている政務活動費の節約なのです。しかし、いかに高くても、あとのほうは、純粋に「政務活動費」100パーセント。先の、ずっと預ける方法は、朝夕の政務活動の間に何をしていたか、が問われてしまうのです。『なんで?』と、今も私は思っていますが、税金を少しでも使わないように、と考えた方が、『おまえ、何、政務活動の間にごはん食べてるんだ?』と、言われてしまうのです。

疑いが起こった場合の最善策は

政務活動費の不正使用で、明らかに、といえるのは、架空と分かった場合ぐらいしかないのでは、というのが議員経験からの私の考えです。今回の福井県会議員だった石川与三吉さんのケースもそれを疑われています。元祖「政務活動費」問題ともいえる、号泣議員とされた元兵庫県会議員の野々村竜太郎さんは、架空の出張を繰り返して政務活動費約913万円をだまし取った詐欺罪などで2016年7月に有罪判決(懲役3年、執行猶予4年)を受けていますが、こういう形で、まずは住民監査請求、それから民事裁判。加えて、刑事として司法に問うのが、疑いが起こった場合の最善策なのではないのでしょうか。

訴えるのは自治体、市民、だれでもいいと考えます。しかし、詐欺罪などの刑事事件として立件され、起訴されるぐらいの疑惑でない限り、そして、議員の側の故意の意思が、本人の口、もしくは司法を含めた場所で明らかにならない限り、どこまでが正しい政務活動費の使用か、は、政党活動などど隣り合わせとなり、見えにくいのです。その現状から考えても政務活動費のことは、主にメディアやネットを通じての「バッシング」自体が、重大な人権侵害を生みかねないといえます。「政務活動費」の問題が生じた時、慎重に検討する姿勢が、事の本質をつかむ結局は、近道のような気が私はします。
(オフィス・シュンキ)

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