ハワード大学はどんな大学?歴史や教育の特徴、著名な卒業生を紹介!

ハワード大学は、アメリカ合衆国ワシントンD.C.に本拠を置く私立大学です。アメリカには、「歴史的黒人大学」と呼ばれる大学が存在しますが、ハワード大学はその中でも屈指の名門として知られています。以下、ハワード大学の歴史や教育の特徴、各種ランキングにおける評価、著名な卒業生について紹介します。

ハワード大学の概要

まずは、ハワード大学の概要について見ていきましょう。

歴史

冒頭に述べた通り、アメリカには「歴史的黒人大学(※)」と呼ばれる大学が100校ほどあります。その多くは奴隷解放後のアフリカン・アメリカンの高等教育機関として、南北戦争終結後の30年間に設立されました。ハワード大学はハンプトン大学、フィスク大学、タスキーギー大学などと並び、「歴史的黒人大学」を代表する大学です。南北戦争直後の1867年に設立されました。

設立当初は黒人の牧師を対象とした神学校でしたが、現在は建築、工学、教育、薬学、ジャーナリズム、ビジネスなどの学部を擁する総合大学として10万人以上の卒業生を輩出しています。

※「歴史的黒人大学」は、Historically black colleges and universitiesの日本語訳で、略してHBCUと呼ばれます。

学生数

ハワード大学の学生数は、学部生が6,243人、大学院生が2,896人で合わせて9,139人となっています(2018〜2019年)。女子学生の割合が高く、全学生のうち67%を占めます。

学生の人種構成は、黒人が約85%、白人が約3%、アジア系が約3%です。

参考

Student Population at Howard University (HU)|College Tuition Compare

留学生の数

ハワード大学では、ナイジェリアやサウジアラビア、ジャマイカ、カナダ、バハマなど、世界各国からの留学生が学んでいます。全学生に占める留学生の割合は約8%です。

日本からの留学生は例年1人または2人となっています(2013〜2018年)。

参考

Howard University International Student Report|College Factual

教育の特徴

ハワード大学は、建築、工学、教育、薬学、看護、社会福祉、ビジネス、ジャーナリズムなどの学部を擁する総合大学です。法学、医学、歯学、神学の専門大学院が設置されています。

STEM教育(※)に定評があり、科学技術分野で活躍するアフリカ系アメリカ人を全米で最も多く輩出していると評価されています。

※STEM教育とは、科学・技術・工学・数学の教育分野を総称した言葉です。2000年代にアメリカで生まれ、日本でも広く使われるようになりました。

ハワード大学のレベル、評価

ハワード大学のレベルや評価はどの程度なのでしょうか。各種ランキングにおけるハワード大学の順位を見てみましょう。

US News 大学ランキング2020

アメリカの大手デジタルメディアであるUS News & World Reportは、1984年以来、全米の大学ランキングを毎年発表しています。各分野におけるハワード大学のランキングは下記の通りです。

  • 全米大学ランキング:104位
  • 歴史的黒人大学ランキング:2位
  • 社会的流動性に貢献している大学:4位
  • 学部生に質の高い教育を行っている大学:61位
  • 退役軍人の就学に積極的な大学:69位
  • 学部生向けのエンジニア教育が充実している大学:108位

全米で104位という順位は、アメリカ国内の4年制大学の数が2,000校以上あることを考えると決して低くはないでしょう。

歴史的黒人大学ランキングでは2位にランクインしています。社会的流動性(※)への貢献でも4位に位置するなど、経済格差や人種間の不平等がいまだに大きいアメリカ社会において同大が大きな役割を担っていることがうかがえます。

※社会的流動性(Social Mobility)とは、社会階層間の移動を意味する言葉です。社会的流動性が低いと貧困や経済格差が固定化され、職業選択の自由度も狭まるとされています。

参考

Howard University Overall Rankings|US News Best Colleges

アメリカの大学・カレッジ進学の魅力|EDU Japan By 海外教育研究所

世界大学ランキング(THE)

The Times Higher Educationが毎年発表しているTHE世界大学ランキングは、世界各国の大学の評価の指標として日本でもよく知られたランキングです。

ハワード大学は、THE世界大学ランキング2020で201〜250位にランクインしています。それほど高くない順位のように感じますが、東京大学(36位)、京都大学(65位)を除く全ての日本の大学よりも上位です。

参考

Howard University World University Rankings|THE

著名な卒業生

ハワード大学は、150年に及ぶ歴史の中で各界に著名なアフリカ系アメリカ人を多く輩出してきました。ここでは、卒業生の中から3人をピックアップして紹介します。

トニ・モリスン

トニ・モリスン(1931〜2019年)は、アフリカ系アメリカ人として初めてノーベル文学賞を受賞した小説家です。1953年にハワード大学を卒業後、コーネル大学で英文学の修士号を取得しました。1970年に「青い眼がほしい(The Bluest Eye)」で小説家としてデビュー。1993年にノーベル文学賞を受賞、アフリカ系女性としては世界初の受賞となりました。2012年には、その功績が認められ、バラク・オバマ大統領(当時)から大統領自由勲章を授与されています。

サーグッド・マーシャル

サーグッド・マーシャル(1908〜1993年)は、アフリカ系アメリカ人として初めてアメリカ合衆国連邦最高裁判所の判事を務めた法律家です。1930年に歴史的黒人大学の一つであるリンカーン大学を卒業し、メリーランド大学法科大学院への入学を目指しますが、人種間の分離政策により入学を拒否されます。代わりに入学したのがハワード大学でした。1933年に同大学を首席で卒業。法律事務所を開業し、公民権運動に大きな影響を与えた裁判の弁護人を務めて勝訴するなど、人種間の不平等是正に尽力しました。

1967年、アフリカ系アメリカ人として初めて当時のジョンソン大統領から連邦最高裁判所判事に任命されます。その生涯は映画化されるなど、アメリカのアフリカ系アメリカ人の歴史を語る上で欠かせない人物です。

チャドウィック・ボーズマン

アメリカの俳優チャドウィック・ボーズマン(1976年生まれ)は、2000年にハワード大学を卒業(美術学士)。在学中にはオックスフォード大学に交換留学をし、演技を学びました。

2013年、アフリカ系アメリカ人初のメジャーリーガーとなったジャッキー・ロビンソンの伝記映画『42 〜世界を変えた男〜』に主演。2017年にはハワード大学の先輩でもある前述のサーグッド・マーシャルの伝記映画『マーシャル 法廷を変えた男』でマーシャル役を務めるなど、アメリカにおける黒人の権利獲得、地位向上に貢献した人物を演じています。2018年、マーベル・スタジオの大ヒット映画『ブラックパンサー』で世界的な名声を得ました。

まとめ

日本ではあまりなじみのないハワード大学ですが、アメリカでは歴史的黒人大学の名門として広く知られている総合大学です。150年の歴史の中で、アメリカ社会の人種間の不平等、経済格差の是正に貢献してきました。ノーベル賞受賞者をはじめ、多くの著名人を輩出しています。日本人留学生は例年1人または2人ほどと多くはありません。留学先として検討する人は少ないかもしれませんが、アメリカの歴史や社会問題を知る上で欠かせない大学です。

参考

Howard University Home

トニ・モリスン氏が死去、米黒人女性初のノーベル文学賞作家|BBC

8月5日に他界した、巨人トニ・モリスンが私たちに問い掛けたこと|Newsweek

Thurgood Marshall|Biography

チャドウィック・ボーズマン|映画.com

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