阪神は助っ人8選手をどう使うべきか カギを握るのは日本人救援投手の活躍!?

今季から阪神に加入したジャスティン・ボーア、ジェリー・サンズ、ジョー・ガンケル(左から)【写真:津高良和】

昨季は4番も務めたマルテは残留、打率.284も…「マルテに何を求めるのか?」

 プロ野球は16日にオープン戦が開幕。例年より少し早い3月20日の開幕に向けて実戦も本格化してきており、各チームの新戦力の実力も徐々に明らかになってきた。

 一昨年の最下位から昨季は3位に浮上し、クライマックスシリーズ(CS)では2位DeNAを破ってファイナルステージ進出も果たした阪神は、オフに助っ人の顔ぶれが大きく変わった。2005年以来のリーグ制覇へ向けて、8人の外国人選手をどのように使っていくかが大きなポイントになりそうだが、専門家はどう見ているのか。

 ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、2018年までヤクルトで2年間、バッテリコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は、救援の日本人投手が復活できるかが助っ人起用の鍵になると指摘。状況によっては、2年目のジェフリー・マルテ内野手を「外すのも1つの手」と見ている。

 まず、昨季のマルテのプレーを野口氏はどう見ていたのか。1年前のキャンプでは、打てるポイントが限られているため少し厳しいのではないかという見方も示していたが、終わってみれば105試合に出場して12本塁打、49打点だった一方で、打率は.284とまずまずの数字だった。

「もうちょっとやってくれたら良かったのかなという感じでしたが、元々『そこまで期待していいのかな?』という目で個人的には見ていたので……。4番も打ちましたし、いいところで1本が出たりしていましたよね。タイムリーにならなくて、打点とかで目立ってはいませんでしたけど、後半慣れてきたところでは『まぁまぁ』だったのかなと。

 ボール球を振らないという良さがあるにしても、例えば今季は『不動の4番でいきます』となるかというと、どうなのかなという感じはします。ツボにはまったときの1本はさすがだなと思いましたけど、今年も同じような感じになるのではないかなと。つまり、ホームランがものすごく出る感じではない。なぜなら、ホームラン(を打てる)ゾーンは相手チームの研究が進んで、(対戦相手は)外していくというピッチングスタイルになっていくはずなので、投げミスを仕留めるくらいになってしまう。昨年は前半にあまり試合に出られなくて(本塁打が)この本数(12本)でしたが、今年はシーズン頭から最後まで全部出てもこのくらいの数字ではないかなと。打点は増えると思いますが、ホームラン数は伸びないのではないかと思います。

 昨年の成績は、打率は満足いく数字かもしれませんが、果たしてマルテに何を求めるのか、ということですよね。いいところで三遊間をゴロで抜くようなヒットが非常に多かった。ランナーが帰ってこられなかっただけで、近本のような選手が多くランナーでいれば、もっと打点は増えていたと思います。ただ、ホームランの内容を見てると、チームとしてはもっと放り込んでほしいのではないかなと。マルテのホームランは弾丸ライナーで甲子園に突き刺さるのですから」

大きかったジョンソンの移籍 「あの投手以上のセットアッパーはなかなかいない」

 今季、阪神はメジャー通算92本塁打を誇り、2017年にはマーリンズで25本塁打を放っている大砲ジャスティン・ボーア内野手を獲得。昨季、韓国キウムで28本塁打をマークしたジェリー・サンズ外野手も加入した。

「外国人枠の問題で、野手を3人使うというのは考えづらい。ボーアも打撃練習はすごいですが、メジャー時代のバッティングを見ていると、日本のピッチャーをどの程度打てるのかなと。もちろん、やってみないと分かりませんが」

 当然、守備位置の問題も出てくるが、野口氏が指摘するように「外国人枠の問題」もポイントになる。投手に何枠を使うかで、構成は変わってくるからだ。投手陣で言えば、阪神にとって大きかったのがピアース・ジョンソン投手のメジャー復帰。昨季1年目で58試合に登板し、2勝3敗40ホールド、防御率1.38、58回2/3を投げて91奪三振、13四球とセットアッパーとして大活躍した右腕は、1年で退団してパドレスに移籍した。

 さらに、抑えるを務めるなど4年間、阪神のブルペンを支えたラファエル・ドリス投手もブルージェイズに移籍。代わりにジョン・エドワーズ投手、ジョー・ガンケル投手、前ソフトバンクのルイス・スアレス投手を獲得した。昨季から所属するオネルキ・ガルシア投手、3年目の呂彦青投手も含め、外国人投手を何人を使うことになるか、注目が集まるところだ。

 野口氏はまず、昨季活躍したジョンソンについて「抜けるのは大きい」と指摘。「ジョンソンは真っ直ぐが速いし、カーブも良かったのですが、四球を出さない。そこが一番でした。ベンチも安心して出せます。8回を任されていましたが、シーズン終盤などでは7回2死満塁のような場面でも、ジョンソンだったら(コントロールが良いので)出せる。セットアッパーとしては理想的で、あの投手以上のセットアッパーはなかなかいないと思います。あのパワーカーブはメジャーでもトレンドです。フライボール革命の中では落差が大きくて早く曲がるカーブは非常に有効でしょう」。今季、メジャーでも結果を残すことのできる実力の持ち主だと評価する右腕が抜けた穴をどのように埋めるかで、外国人枠のバランスも変わってくる。

「サンズが長打を打てそうなら、マルテを外すのも一つの手」

「ブルペンは(藤川)球児が一番後ろで、岩崎がいて、そこに助っ人が入って7~9回(を任せる)となりますが……未知数ではありますよね。助っ人がダメだったときにカバーできる日本人がいればいいですけど。ドリスもなんだかんだでかなりのセーブ数を残しました。1度に2枚も抜けるのは痛い。

 桑原(謙太朗)は昨年は故障だったので、復活してくれれば。彼の投げる球は特殊なタイプで、横曲がりのサイドスローのピッチャーが投げるような大きいスライダーも投げますし、小さい速いカットボールに近いスライダーもある。第一に真っ直ぐが“ぐちゃぐちゃ”。だから怪我さえ治れば戦力になります。シュートもえげつないですし、投げられる状態でさえいてくれれば計算していいと思います。ただ、ジョンソンくらい抑えられるかといったらまた別の話になってきます。ジョンソン一人の穴を束になって埋めようということであれば、疲れている選手を抹消したりして、それを繰り返しながらやっていけば穴を埋められるメンバーはいるでしょう。

 そう考えると、外国人で後ろのピッチャーは1人は入れておかないとけないでしょうし、先発でガルシアも入るので、やはり助っ人野手3人の同時起用は考えづらい。マルテとボーアになるのか……。サンズが長打を打てそうなら、マルテを外すのも一つの手ではないかと思います」

 ブルペンが安定しなければ、救援だけで助っ人2投手を登録するという時期もあるかもしれない。そうなれば、野手で使える枠がさらに減る可能性もある。課題の攻撃力を上げるために、日本人救援投手の活躍も鍵となりそうだ。(Full-Count編集部)

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