読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、いまの彼との結婚に不安を感じているという40歳の女性。というのも、彼の両親が息子の収入に頼って生活しているから。このまま結婚した場合、両親の介護費用と自分たちの老後資金を貯めていくことはできるのでしょうか。FPの飯田道子氏がお答えします。
結婚を考えている40歳女性です。いまの彼と結婚することで、老後が不安定になるのではないかと感じています。
私は手取りで年間250万円ほど。彼は46歳で、手取りは年間で300~350万円ほどです(土木関係のため、日当で勤務日数により変動あり。ボーナス、退職金はありません)。
ともに実家暮らし、両親は健在ですが、数年後には介護など生活に支障がでる可能性があります。私の両親は計画的に貯蓄しており、経済的に援助が必要ということはなさそうですが、彼の両親(65歳、70歳)はほぼ貯蓄なしとのことでした。話を聞く限りでは、年金はあるようですが、彼の収入に頼り貯蓄はしていないようです。
彼の家は一軒家でローンも完済しているので、家計を考えると彼の家で同居する以外、選択肢はないかなと思っています。まだ結婚生活が始まってもいないので家計の見直しも何もありませんが、貯蓄ゼロスタートとして、世帯年収600万円で両親の介護費の捻出と、自分たちの老後資金の貯蓄は可能でしょうか。子どもは経済的に難しいと最初から割り切った方がいいのでしょうか。
独身のまま現状の貯蓄を続けていけば、私の方は60歳で貯蓄2000万円程度は用意できそうだと感じています。
<相談者プロフィール>
・女性、40歳、未婚(結婚予定あり、相手46歳)
・職業:会社員
・居住形態:親の家で同居
・毎月の世帯の手取り金額:16.7万円
・年間の手取りボーナス額:50万円
・毎月の世帯の支出目安:13万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:3万円
・現在の貯蓄総額:1000万円
・現在の投資総額:60歳時に500万円予定(iDeCo)
・現在の負債総額:なし
飯田:結婚を考えているものの、義理の両親のための介護費用の捻出と、これから迎えるであろう、自分たちの老後資金を貯蓄できるのか心配されている相談者様。子どもを持つことも、経済的に難しいと最初から割り切った方がいいのかと、悩みの種はつきないようです。
相談者様の場合、将来に向けて、どのように考えていくべきなのでしょうか?
夫婦のライフプランを優先、同居は費用をクリアにしてから
義理の両親の将来を心配している相談者様。優しい方なのでしょうね……。とはいえ、何よりも大切なのは、相談者様、ひいては相談者様ご夫婦のライフプランです。
現在、40歳とのことですが、まだ訪れていない介護を心配するあまり、子どもを諦めるのは早計です。一番大切なのは自分の気持です。好きな人と結婚するのですから、子どもを授かることを望むのなら、その気持ちを大切にしていただきたいと思います。そのためには彼とじっくりと話し合い、子どもを産むかどうかを考えてみてください。
また、金銭面から彼の実家に同居をすることになりそうとのことですが、本当の気持はどうなのでしょうか?
同居をする場合の最大のメリットは家賃がかからないことなのですが、その他の水道光熱費や固定資産税等の費用はどうなるのか明確になっていない場合、かかる費用の多くを相談者様ご夫婦が負担することになりかねません。
最初から同居ありきではなく、どのような費用が必要になるのかを把握してから、同居するのかどうかを決めた方がよいでしょう。
貯金のない両親のお世話、兄弟姉妹にも負担を
義理の両親は、息子である、相談者様の彼の収入をあてにしているようですが、そのことについて彼はどのように思っているのかもポイントになります。本当に年金だけでは生活できないのでしょうか? 本当に貯金はないのでしょうか?
こちらには情報として届いていないのですが、彼に兄弟姉妹がいる場合は、同居をしているからというだけで、すべての金銭的負担をしなくてはならないというわけではありません。また兄弟姉妹がいる場合、遺言書などの準備をしておいてもらわないと、面倒をみたけれど、自宅を手放す羽目になってしまうということも考えられます。
愛する彼の大切な両親なので、いろいろしてあげたいという気持ちがあるかもしれません。とはいえ、相談者様の置かれている立場がどのようなものなのか、自分のことを客観的に見て判断することも必要なです。
彼にも協力を仰いで
また、相談者様の両親ももちろんのこと、義理の両親から「子どもはまだか?」などのプレッシャーが与えられることも考えられます。
おそらく、義理の両親のために子どもを諦めるといっても、「何とかなる」などと言われる可能性も高くなりますし、そのようなことを認めてくれないケースもよくあります。孫についてどのように考えているのか、彼にそれとなく聞いてみた方がよいでしょう。
もし、二人で子どもを持たないという決断をした場合、何かと攻撃の対象になりやすいのが、女性である相談者様です。彼が家族などから余計な口出しをされないように守ってくれなければ、辛くなるばかりです。このあたりも慎重に話し合い、二人の未来が描けるといいですね。
親の介護費用はどこから捻出するのか?
同居する・しないにかかわらず、義理の両親には万一に備えてお金を貯めてもらうことが大切です。今からでも遅くはありませんよ(義理の両親の覚悟が必要ではありますが)。
万一、介護が必要になり費用が発生するような場合には、まずは義理の両親の預貯金から切り崩していくのが鉄則です。一人っ子であれば問題にはならないのですが、兄弟姉妹がいる場合、こちらが立て替えても費用はもらえず、相続財産は均等に分配されるというケースもあり得るからです。
ご存知かと思いますが、介護保険を利用すれば、介護費用の実質負担金は1割で済みますので、必要以上に恐れる必要はありません。要介護になったときには、介護に必要な自宅のリフォームをした場合の助成金もありますし、介護に必要な道具なども1割負担で購入することができます。
相談者様には介護をすることよりも、家族が元気で過ごすためにはどのようにしたらいいのか、考えて欲しいと思います。
自分のお金は、自分の将来のために使う
彼の収入を義理の両親のために使わざるを得ないことも多いかと思いますが、相談者様は、堅実にお金を貯めていらっしゃいます。このお金は自分たちの将来のために、手元に置いてください。
優しい相談者様だからこその悩みだと思いますが、相談者様が思い悩んでいることはご両親にとっても苦しいこと。自分がどうしたいのかをじっくりと考えて、彼と相談してみましょう。素晴らしいご家庭が築けますよう、応援しています!!