“大人向けファンタ”は「オトナのフルーツ炭酸離れ」を止められるか

「ファンタ?もう卒業したつもりだったけど」――。日本コカ・コーラは、俳優の松田龍平さんと永山瑛太さんを広告に起用した、30代以上の大人向け炭酸飲料「ファンタ プレミアムグレープ」を3月2日に発売します。

これまでも同社は大人向けのファンタを期間限定で扱ったことがありますが、今回の商品はどのような違いがあるのでしょうか。2月18日に開催された「2020 炭酸カテゴリー戦略発表会」の内容から深堀りします。


果汁13%の濃厚ファンタ

「ファンタ プレミアムグレープ」は、収穫から24時間以内にしぼったブドウの果汁と、すりつぶしたピューレを使用。果汁13%と通常のファンタよりも高く、フルーツの味わいを濃厚に仕上げました。

ペットボトルキャップに「ゆっくりひっくり返してからお飲みください」と書かれており、底に沈んだブドウのピューレを循環させてから飲むことが推奨されています。

日本コカ・コーラマーケティング本部 炭酸&エナジーカテゴリーの島岡芳和バイスプレジデントは、「フルーツ炭酸のおいしさを一段引き上げた」と、自信をのぞかせます。

この商品には、同社として初となる新技術の製造ラインが活用されています。沈みやすく脆いピューレの粒を壊さずにやさしく運ぶことが可能になりました。

また、一般的な果汁入り炭酸飲料は熱水シャワーで殺菌しているので、ガス圧を低く抑える必要がありますが、今回は無菌環境で充填することで、ガス圧を高く保つことができるようになりました。

こうした技術により、高果汁ながら強い炭酸の刺激を実現しているといいます。

なぜ「フルーツ炭酸」から離れた?

同商品を導入する背景にあるのは、2015年以降、少しずつ進む「フルーツ炭酸」市場の縮小です。同社の調査によると、年代別で30代と40代のフルーツ炭酸消費量が他の年代と比較して大きく下落しているといいます。

島岡バイスプレジデントは、大人になってからの飲料の選択肢の増加や、ライフスタイルなどの変化が要因と分析します。「ゼロカロリー系」飲料や、炭酸水などに切り替えるユーザーがいるようです。

今回の商品は、ファンタとともに青春時代を過ごした30〜40代がターゲット。「炭酸飲料から少し離れた、もしくは別の炭酸を飲んでいる人、自分はあまり選ばないという人に、もう一回ファンタに触れていただくきっかけを作る」と、島岡バイスプレジデントは狙いを語ります。

30代以上も「おやつ」はある

同社の調査で30代以上の多くは甘いものが好きで、15時以降におやつの時間があることが判明。「甘いものから離れている人も、疲労がたまりメンタルをリフレッシュしたい時に甘いものが欲しいと感じる。3時すぎると、われわれにとってゴールデンタイム」(島岡バイスプレジデント)。

容量は380ミリリットルで、希望小売価格が150円(税別)と、通常のファンタより価格はやや高め。30代以上は「価値があるものにはお金を払いたい」と考える人が多いことや、満足度が高いうちに飲み切れる量のバランスを考慮した結果といいます。「ファンタに戻ってきてほしいので、お求めやすい手頃なプレミアムに設定した」と、島岡バイスプレジデント。

ペットボトルの紅茶飲料でも一度離れた大人世代を「甘くない」味で呼び戻す動きがありますが、ファンタの場合は味をリッチ化して大人の「おやつ需要」を狙う構えのようです。はたして、すでにファンタを「卒業」した世代の心をつかむことはできるでしょうか。

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