<隠れた名盤> iri『24-25』 スムーズなボーカルとキレの良いラップが痛快

iri『24-25』

 1994年生まれ神奈川県逗子市在住の女性シンガーソングライター。配信ではアルバムが週間TOP10入りしたり、「会いたいわ 今すぐ会いたいわ」と歌う2017年の『会いたいわ』がSNSで頻繁に引用されたりと、実はWeb界隈ではかなりの人気者だが、幅広い年代にはまだ知られていない逸材なので、20年の新作にも触れておきたい。

 表題曲は、都会の雑踏の中で紛れそうになる20代半ばにおいて、かけがえのない“君”を支えに生き抜こうという自分へのエールソング。カップリングの『SUMMER END』は、Abema TVの恋愛リアリティー番組の主題歌に起用されており、夏のまどろむような雰囲気の中で、(恋愛における)“本当の意味”よりも“甘い言葉”に酔いしれたいと歌うミディアム・チューン。もう1曲の『Wonderland(Seiho Remix)』は、無機質な都会の日常を描いたクールなダンス・ナンバー。

 どの曲もスムーズなボーカルとキレの良いラップが痛快な分、伴奏はただリズムがループしているのが基本形で、余計な効果音など一切使われていない。そこが歌詞や歌声のカッコよさを一層引き立てている。本作がセンスの良いTシャツ付きCDや、アナログ盤でも発売されていることも肯ける。

 90年代や00年代のヘビーリスナーならUAや、10年代以降ならDAOKOあたりが好きな人にもおススメ。本作を聴けば、自分本来の能力やあるべき姿をより強く意識して行動したくなるはず。

(ビクター・通常盤 1100円+税)=臼井孝

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