また不正受給!?政務活動費 「自分だけはバレない」となぜ思う?【選挙ドットコムちゃんねるダイジェスト】

またまた出ました! 議員の政務活動費、不正受給疑惑のニュース。
過去には不正を行った議員による伝説の「号泣会見」や14人もの議員が辞職に追い込まれたニュースなど、全国的に注目されて散々バッシングを受けているのに、同じような事例が続発するのは一体、なぜ?

今回の番組では、どうにも解せない議員の金銭感覚や、松田氏が「穴だらけ」と評する議会の政務活動費にまつわる支給のシステムや運用ルールなどについて、詳しく見ています。番組内容をダイジェストでご紹介しましょう。

現役最高齢の県議の不正受給が発覚!

乙武 「今回のテーマはこちら!『政務活動費不正受給』ということですけれども。新しいニュースが入ってきたんですね?」

松田 「なくならないね、これねー(ため息)」

千葉 「はい、そうなんです。福井県の石川与三吉(よそきち)県議が2013年から16年度までに44回、現地に足を運ばないカラ出張を繰り返し、政務活動費およそ280万円を不正に受給した疑いがあることがわかったんですね。

ご本人は取材に対して『現地には行っていない』と認める一方で『誰かが誤って書類を作成、提出したのかもしれない。不正という指摘があるなら返還したい』と述べたということなんです」

乙武 「問題の県議は89歳じゃないですか」

松田 「現職最高齢の県会議員さんです」

乙武 「これってご本人なんですかね? 事務所がご本人の預かり知らぬところでチャッチャッチャッとやちゃってる可能性はないですか?」

松田 「まあそういう可能性もなくはないですが……。ご本人も『誰かが』っておっしゃってますしね。でも実際、過去に行われた数々の政務活動費の不正受給の事例を見ていると、本人がやっているケースが圧倒的に多い」

乙武 「あ、そうなの?」

松田 「僕自身も、もう10年以上前ですけど、当時お手伝いしていたある県議会議員さんに3月に呼ばれて、何の打ち合わせかなと思ったら『ホームページを作ったことにして30万円の領収書を書いてくれ』と言われまして」

千葉 「えー?」

乙武 「これピー入れるんで名前行きます?」

松田 「いや、もう引退した方なんで名前は言いませんけどね。『先生、それ犯罪ですよ』って言って、2度と手伝わなかったんですが。本当にあるんですよ、実際にね」

乙武 「へー、じゃあ虎視眈々と狙っている人はけっこういるってことですね」

松田 「そうですね。これだけ全国的なニュースになって、それでも認知が歪むんでしょうかね。『自分だけは大丈夫だ』って」

乙武 「そうじゃなかったらニュース見てないか」

松田 「見てないはずないです。一応、議会はどこも全部、政治・議会関連の新聞の記事とかね、スクラップして毎日議員に届けてくれるんで、絶対、見ているはずなんですけど」

乙武 「この県議さん89歳ですよね。当時でも余裕で80代でしょ。それだけご高齢でもこういうちょろまかしをやってるって、なんかモチベーションがすごいっすね! そこまでして何に使いたかったんだろう」

松田 「何に使いたかったのかねー。選挙にお金をかけたかったのか……。でも福井県だってことを考えるとまあそんなに…」

乙武 「福井県は自民が強いから圧勝だもんね」

松田 「楽に勝てると思いますしね。なんだろうな、退職金代わりのつもりだったのか」

乙武 「孫にお年玉をあげたかったのか」

松田 「いやどんだけのお年玉?って話ですよ。お孫さんだっていい年だと思いますしね」

乙武 「そうだよね」

松田 「まあなんでそういう気になったんだか気になるところですけどね、本当にしょうがない」

政治活動費の「前払いシステム」が不正を誘う?

千葉 「政務活動費の問題ってけっこう多いと思うんですけど、どうして起こっちゃうんでしょうか」

松田 「そうですね、これやっぱり人間の性みたいなところもあると思うんですけど、多くの自治体で問題だなと思うのは、政務活動費が前払い制のところが多いんですよ」

乙武 「よく言われるよね、それ」

松田 「その前払い制というのも議会によりけりで、毎月支払われるところもあれば、年に4回とかに分けてまとめて支払われるところもあるんですけど、前払い制を採用している議会ですと、3月のいわゆる年度末にこれまで使った政務活動費の金額を、全部領収書をつけて提出することになっているんです。

たとえば年間で500万円の政務活動費があります。そのうち300万円しか使いませんでした、となると200万円返さなきゃいけないんですよ。

それは当然、返さなきゃいけないわけですが、人間の心理としてね、やっぱり1度受け取ったものは返したくないっていうのがあるわけです。

『余って返すくらいだったらなんかに使っちゃえ』だったら、まだいいんですが、その余ったお金を不正に使ったことにして、自分のぽっけに入れちゃう人が残念ながらまだけっこういると」

乙武 「ちなみにこれってお咎めなし?」

松田 「いやいやこれは詐欺行為。詐欺事件ですよね。当然、事件になりますし、事実なら普通は辞職勧告を出されたりとか、ご自身が辞職されたりとかになると思います」

乙武 「辞職しない、って言い張って居座ったら居座れるものなの?」

松田 「詐欺事件で有罪になれば、当然犯罪者ということになりますからね…。直ちに議員の職を失うことになるかどうかは別として、基本的には自分から辞める方が多いです。普通は耐えられないですよ」

*編集部注:公職選挙法第11条では「執行猶予のつかない禁固以上の刑が確定した場合などに、被選挙権を失う(公民権の停止)と定めている。また国会法109条では「被選挙権を失ったときは退職者になる」と規定されています。

乙武 「でもよくニュースになるのは国政レベルですけど、刑事事件になっても耐えられる人、多くないですか?」

松田 「国政はね、別の意味ですごいですよね。もうメンタルが普通とは違うタフな人が多すぎてですね……」

乙武 「すごいよね。一有権者として感想としては『やらかしたことの大きさに比べて、受ける罰がちょっと軽すぎない?』って思うんですけど」

松田 「そうですね。今回の件に関しては実際に捜査が進んでますから、その結果、本当に横領ということになれば、詐欺事件ですよね。で実刑も、となればですね、社会的にも大きな制裁を受けるということになるんですけど、どうですかね。

ご本人は否定されていて、『誰かが誤って……』っていうけど、じゃあ誰が指示したんだって話になりますよね」

乙武 「でもこの写真、ちょっとずるいよね。なんか許したくなっちゃうな。なんかいい人なのかなって思っちゃうよね」

千葉 「ちょっと優しそうな人に見えますよね」

松田 「まあ、写真を見るといかにも『犯罪を犯すドン』みたいなイメージじゃないですね。でも長く議員をされてきて、晩節を汚すようなことはされない方がいいと思うんですけどね」

乙武 「ホントだよね」

 

そもそも「政務活動費」って どんなことに使うお金なの?

千葉 「えーと基本的なことなんですけど、政務活動費って何なのかっていうところを、お伺いしたいんですけれど」

松田 「基本的には色々な政務、政治活動や議員活動に使用できるお金という位置づけですね。

議員であれば調査研究、たとえば地方自治において、他の自治体でどのような先進的な取り組みがあるとかについて、日本だけでなく海外のいろいろな取り組みなどを調べたりとか、公害の問題についてどのような訴訟があって、どこが問題となったかとか、そうした政治課題についての書籍や資料の購入費や関連の勉強会への参加費用に充てられます。

ほかにも情報公開請求をした場合の、資料のコピー代などについても使っていいことになっています。ただ各議会によって『こういうことには使えます・こういうことには使えません』という限度が分かれているものもあります。

たとえば会合の昼食費用。お弁当代まで政務活動費で支払っていいよというところと、昼食代はダメですというところとか、議会や自治体によってどこまで何の費目なら出るかということについてはバラつきがあるんです。

基本的には、広告広報活動のための費用。広く市民の意見を聞くため、または市政(県政)などの情報をお伝えするための費用、調査研究費ですかね。議会によっては事務所費や秘書の人件費に一部充当できるとかというのもありますが、政務活動費を利用できるものは決まっていて、なんにでも自由に使えるわけじゃないですね」

千葉 「けっこう地域や議会によって、ルールが違うんですね」

松田 「ええ。東京都議会とか大阪府議会なんかは非常に用途の縛りが厳しいですね。兵庫県もね、例の号泣事件があってからすごく厳しくなったんです。それまでは『ザル』って言われていたんですが」

乙武 「首長にも政務活動費ってあるんですか?」

松田 「いやありません。議員だけですね。首長はやっぱりその仕事が役所のトップという形になりますので、そういった議員が議会で求められる活動とは別の扱いです。

その代わりというわけでもないんですが、首長の場合は4年の任期ごとに退職金がありますね。地方議員の場合は、退職金はありません」

働かない議員ほど 手元にお金が残る?

乙武 「松田さんの話を聞いているとね、モラルハザードが起こりやすい仕組みだなあって思うんです。
つまり、働かなければ働かないほど、手元にお金が残りますよね。

で一生懸命がんばって活動している議員ほど、支給される活動費以上にお金もかかって、どんどん身が削れて持ち出しも増えていくと。いいんですか?それで」

松田 「いや、よくないと思います!」

乙武 「海外もこういう感じなんですか?」

松田 「海外は、地域によってもずいぶん違うんですが、国によっては本当に地方議会というか基礎自治体の議員に関しては、ボランティアでやってもらう形式になっているところもあれば、ある程度税金で政務活動費等の支出が認められていて、秘書もちゃんとついて、政策立案がしやすくなっているケースもあります。

国によって制度はだいぶ違いますが、日本の場合は地方議員の待遇がネックになって、議員のなり手不足が問題にもなっているんです。

市でも人口規模の大きい政令都市だったりすると議員報酬が60万円くらい、政務活動費と合わせると90万円とかっていう風になるんですけどね。

一方で、自治体の人口規模によって報酬や手当なども変わってくるんですが、たとえば町村の議会議員などの場合、報酬は15万円から30万円くらい。小さな自治体の議員さんの場合、たとえば額面が30数万円でも、手取りだと20万円くらいになってしまうんです。

この金額で、専業で議員をやっていくというのはなかなか厳しいんじゃないか、という議論もあります。とくに家族を養っていかなくてはいけない若い世代の議員さんはね。

ただその反面、全国的に自治体がこれだけ赤字を抱えている中で、税金で報酬をもらう議員がすごく恵まれた待遇でやるというのはおかしいという声もあるわけです。これはよく維新の会が主張されていることなんですけど『これだけ財政赤字なんだから議員はまず身を切る改革をすべき』だという論調ですね。こちらは有権者に受け入れられやすい土壌があります。

どちらも納得できる考え方なので、非常に悩ましいところではあるんですけど」

あの「号泣会見」が、テコでも動かなかった兵庫県議会をガラリと変えた!?

千葉 「ちなみに過去の政務活動費がらみの不正はこんな感じですね。記者会見で号泣、ありましたね」

乙武 「へーそんなことがあったんだー(棒)」

千葉 「まぁ号泣したこと自体が不正ではないわけですが、結果的にそういう場面がありましたね」

松田 「すごかったですよね。あの画面のインパクト」

乙武 「富山の事件も記憶に新しい」

松田 「14人もやってるんですよ、コレ。そして神戸市議はね、チラシの架空発注ですよね」

乙武 「いつの話だっけ?」

松田 「17、18年くらいじゃなかったかな…。本当にこういった形で大きなニュースになって、それぞれの問題議員が当然、辞職されているわけです。職を失って、西宮のケースは裁判にもなっている。

それだけのリスクがあることはもう重々周知されているというのに今回のような事件が後を絶たないというのは非常に、非常に残念ですね」

乙武 「やっぱニュース見てないっしょ!」

松田 「ホントにニュース見てないのかよ!って思っちゃいますよね。じゃなきゃ自分だけはバレないと思ってるのか」

スタッフ 「今回の事件自体は13年とかなんで、これほど話題になる前だったかもしれないですね」

松田 「あ、そうか。その方がやられたのはほかのニュースが大きく出る前? でも号泣議員は14年くらいのことでしょ?

だからニュースは見てたけど、バレないと思って続けてて、いよいよ16年くらいからヤバいと思ってやめたってことなんですかね」

千葉 「政務活動費の不正受給は、最近になって大きく取り上げられるようになったということですか?」

松田 「いや、以前から指摘されてはいたんですが、やっぱり一番衝撃を与えたのがこの号泣事件ってことじゃないですかね」

乙武 「ノノちゃんの事件だよね~」

松田 「僕、兵庫県に知り合いの議員がいるんです。彼はけっこう県議会や市議会の政務活動費の使い方がおかしいということで、厳しくすべきだと以前から何度も問題提起していたんですね。

例えば領収書も1円単位から公開ではなかったりとか、先払いだったりとか、使途が不明でも許されちゃうとかね。そういう抜け道があるのは良くないって、一生懸命議会でも主張したけど全くこれまで変わらなかったと。

ところがね、例の彼の号泣で全国から注目が集まったことで、本当に一気に変わったって言うんです。知り合いの議員は『彼は社会を変えた!』って言ってましたよ」

乙武 「いまだに領収書を公開しなくても政務活動費がそのままもらえちゃうような自治体もある?」

松田 「いやさすがに領収書の公開は、ほとんどの自治体がやっていると思いますけど。やってないところもあるのかな?」

*編集部注:政務活動費を利用するには基本的に領収書が必要。なお全国市民オンブズマン連絡会議が2019年に47都道府県議会、20政令都市議会および58中核市議会の計125議会を対象に行った調査によると、領収書の原本の提出が義務付けられているのは、都道府県では3県、政令都市で3市、中核都市で42市のみ。

松田 「政務活動費が先払いだったのを、後払いに変更した自治体はまだあまり多くなくて、たとえば東京都議会なんかも、2017年に都議会議員選挙で都民ファーストの会が大躍進してから後払いに代わって、1円から領収書も出さなくちゃいけないことになり、それを全部ネット公開するという形になったんですね。
こういう方式をとっていない自治体はまだたくさんあります。

まぁ基本的には使途に関してはちゃんと報告書を提出しなくちゃいけないですが、その公開方法もネットでは公開しないとか、公開する領収書は 1万円以上のもののみとか、ほんとうに自治体によって差があります。

あと、議員本人の活動報告のレポートなどに関しては、すごく厳しい自治体の場合はその費用を政務活動費から支出するなら、顔写真や名前を小さくしないとダメとか、後援会の活動内容を書いてはいけないというふうに細かく制限されています。

そういうのが緩い地方もあって、自治体によりけりなんですが。それでも政務活動費の使い方に関しては、しっかり限定していく、かつ公開もする、できれば後払い方式で、というふうに改革の流れは来ていると思います」

乙武 「東京都や大阪府は非常に厳しくやっているという風な改革ができたのは、都心部だからという地域性なのか、議会のなかで今、非自民が過半数を占めているからなのか、どっちの影響なんですかね」

松田 「非自民系が過半数を占めているのが大きいんじゃないかと思います。自民党が過半数を占めている議会だと、どうしても議会改革に及び腰になってしまうんです。『今までのやり方でいいじゃないか』みたいに考える、ベテラン議員も多いので。

ただ何か問題が表面化すると、一気に動くということになりますけど。これは自民党に限らず、地方議会で昔からそうやってきてるけど、ずっと当選している古参議員がいますから、そういう勢力が改革を阻むという現実はあります」

乙武 「なるほどね~。では今回はここまでとなります!チャンネル登録と高評価のほど、よろしくお願いします」

 

 

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