京都丹後鉄道は京都・兵庫北部を走るローカル鉄道。北近畿タンゴ鉄道(※)の時代から「丹後くろまつ号」「丹後あかまつ号」「丹後あおまつ号」という三種の観光列車を運行しています。
車両デザインを担当したのはJR九州の観光列車デザインでも名を馳せる水戸岡鋭治さん。既存車両をリニューアルして生まれ変わった三本の松は一級河川由良川や奈具海岸といった風光明媚な沿線地域を駆け、乗客に北丹後の景色を披露しているようです。
過去にスカパー「鉄道チャンネル」の「旅する観光列車 ~あの絶景と絶品グルメを求めて~」でも「あおまつ号」「くろまつ号」を取り上げていますが、今回取材で乗せていただいたのは「あかまつ号」と「くろまつ号」。各列車の違いから乗車方法、アテンダントさんのサービス、丹鉄沿線の絶景スポットに至るまで、がっつりレポートします!
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※……設備や車両を北近畿タンゴ鉄道が保有し、車両の運行をバス事業者であるWILLER株式会社の100%出資子会社「WILLER TRAINS株式会社」が担う上下分離方式を採用し、2015年4月1日より「京都丹後鉄道」の名称で運行しています。
グレードは「くろまつ」>「あかまつ」>「あおまつ」
丹鉄の誇る観光列車「丹後くろまつ号」と「丹後あかまつ号」(と、あおまつ号)。実際に乗ってみて感じたのは、観光列車の基本がしっかりと抑えられていることでした。
・由良川や奈具海岸など沿線の景色が楽しめる
・美味しいお料理やお茶菓子
・アテンダントのサービス
他にも、同じ路線に複数の観光列車を走らせることで様々な価格帯のサービスを提供しているのも他の鉄道に対する強みと言えるでしょう。
取材してみて分かったもう一つの強みは、現場のアテンダントの意見を重視していること。
たとえば「丹後あかまつ号」では前述の通り車内のグッズ類はアテンダントが揃えていますし、写真撮影用のグッズなども手作り。「丹後くろまつ号」でもコース料理の提供タイミングやアナウンスなどはアテンダントが決めています。最終的な観光列車のコース設定に関しては他の事業者さんとの兼ね合いもありますが、現場のことを良く知るアテンダントの意見は全て企画営業にフィードバックされており、現場の権限が強い観光列車とみなすこともできるでしょう。
アテンダントさん同士の連携も強力です。たとえば今回の記者のように午前は「あかまつ」午後は「くろまつ」といった形で観光列車を乗り倒す方も大勢います。そういった場合はアテンダント同士で情報を共有し、午前と午後で提供する丹鉄コーヒーのブレンドを変えておすすめしてみるなど、利用者により良い体験を提供できるよう工夫を重ねているようです。
印象深いエピソードも一つ教えていただきました。少し前の話になりますが、「丹後くろまつ号」の今でいう「ほろ酔いコース」に相当する回に、シンガポールからのご家族が乗車されたことがありました。偶然にも貸切状態となり、アテンダントとのやり取りの中でその日がお父さんの誕生日であったことが判明。そこで、アテンダント一同でサプライズとしてハッピーバースデーの歌を歌い、ケーキを切り分けて提供することになりました。
これは偶然がいくつも重なった特殊な事例ですが、東雲駅の駅マルシェしかり、茶会列車しかり、京都丹後鉄道の観光列車は「コト」を重視し、なんらかの体験をサービスの中に盛り込めるようにしているそうです。ただ単に綺麗な景色が見たいとか、美味しい料理を食べてみたいだけじゃなくて、何か特別な体験をしたい……そんな思いを抱いたら、丹後へ足を運んでみるのが良いでしょう。
記事/写真:一橋正浩