制限選手となった鷹コラスの未来は? MLB球団との契約は“半永久的”に無理!?

ソフトバンクのオスカー・コラス【写真:福谷佑介】

制限選手は国内外の他球団との契約、プレーも制限される

 ソフトバンクは19日、メジャーリーグ移籍に向けて亡命するため、キューバを出国したO.コラス外野手を制限選手とすることを発表した。日本野球機構(NPB)コミッショナー宛に制限選手申請を行い、受理された。NPBも制限選手として公示した。

 野球協約では「制限選手」について、以下のように定められている。

・第60条(処分選手と記載名簿)
(2)制限選手と制限選手名簿(レストリクテッド・リスト)
選手がその個人的事由によって野球活動を休止する場合、球団はその選手を制限選手とする理由を記入した申請書をコミッショナーに提出する。コミッショナーが、その選手を制限選手とすることが正当であると判断する場合、その球団の申請は受理され、コミッショナーによりこの協約の第78条第1項の復帰条件を付し制限選手として公示され、制限選手名簿に記載される。制限選手の参稼報酬については、1日につき参稼報酬の300分の1に相当する金額を減額することができる。なお、減額する場合は、上記の方法で算出した金額に消費税及び地方消費税を加算した金額をもって行う。

 昨季時点でのコラスの年棒は1500万円。これにより、ソフトバンク側はコラスに対して、1日につき5万円ずつ報酬を減額していくことになる。また、制限選手となると、もちろん国内外の他球団との契約、プレーも制限されることになり、これを解かれない限り、目指すMLB球団への移籍はできない。

 ソフトバンクの三笠杉彦取締役GMは球団を通じて「O.コラス選手に関し、来日してホークスでプレーする目途が立っていないため、野球協約上の『選手が個人的理由により野球活動を休止する場合』に該当すると判断し、『制限選手』としてコミッショナーに申請し本日受理、公示となりました。O.コラス選手とは、協議に応じるようアプローチを続けたいと考えています」とコメントを発表した。球団関係者によれば、球団側はコラスに対して翻意し残留するように説得を続けている。

 では、このままであれば、どうなるのだろうか?

ホークスにも“ジレンマ”、復帰に備えて支配下枠を1枠空けておく必要が…

 先にも記したように制限選手になっている間、MLBとNPBの間で結ばれている協定上、コラスは海外も含めて、保留権を持つソフトバンク以外の球団と契約を結ぶことはできない(効力は協定の結ばれている日本、アメリカ、台湾、韓国のみ)。また、球団関係者によれば、来年1月の保留期限を迎えた場合は資格停止処分になるという。この場合も保留権はソフトバンクに残る。つまり、ソフトバンク側が保留権を手放さない限り、半永久的にコラスは国内外の他球団と契約は結べないという。

 ただ、ホークス側にも、ある“ジレンマ”が生まれるという。コラスはソフトバンクの保留者名簿には入っているものの、支配下登録選手としては公示されていない。現時点での支配下登録枠はコラスを除く65人となっている。残り5人の空きがあるものの、仮にコラスが亡命とMLB挑戦を断念してホークスに復帰した場合のためには、1枠空けておく必要があるという。

 仮にMLB球団がコラスと契約を結ぼうとしても、MLBとNPBを通じてソフトバンク側には必ず身分照会が入り、ソフトバンクに保留権があることが伝えられる。コラスの亡命報道後に実際に数件の身分照会もあったという。身分照会によって、状況がクリアにならなければ、コラスがMLB球団と契約することはできないまま。そして、それは制限選手、資格停止選手となっている間、続くことになる。

 まだ21歳のコラス。おそらくはコラスだけの意志ではなく、裏で糸を引いている代理人やエージェントがいるはず。球団側もそう見ている。どことも契約できないまま“宙ぶらりん”になることを知らされぬまま、その人物の口車に乗せられた可能性もあるだろう。復帰を模索するソフトバンク。果たして、今後、どのような結末を迎えることになるのだろうか。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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