三越伊勢丹とノース・フェイス、最新決算から「消費増税」の影響を読み解く

2月17日、目を疑うような数字が飛び込んできました。2019年10~12月のGDP(国内総生産)速報値が前期比年率換算6.3%減と大幅なマイナス成長となったのです。

市場ではマイナス3%台の予想でしたので、予想をはるかに上回る悪さでした。これはやはり、消費増税の影響が非常に大きいということでしょう。

さらにご存じの通り、現在、日本や中国など世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大しています。外国人観光客の大幅な減少や大型イベントの自粛などが消費減退につながり、日本経済にとって深刻なダメージを与えそうです。もちろん、いちばん大切なのは人命ですし、早く事態が収束することを願うばかりです。


小売業は“踏んだり蹴ったり”の着地

2月中旬になって、上場企業の2019年10~12月期決算も出そろいました。今回の決算発表は消費増税後初めての決算発表とあって、その影響が懸念されました。

下表は、東証上場の3月決算企業の決算を集計したものです。やはり、「良い」とは言えない決算でした。売上高は前年同期比3%減、経常利益は同2.8%減と、それぞれ減少しました。

業種別に見ていくと、売上高の増収率が目立つのが医薬品ですが、これは武田薬品工業(証券コード:4502)が海外企業を買収した影響が大きいため、例外的です。

その後には、その他金融業、証券・商品先物取引業、保険業、銀行業など、金融関連業種の堅調さが目立ちます。10~12月は米中貿易交渉が進展し、株価が上昇傾向にあったことが奏功したのでしょう。

小売業は、やはり増税の影響からか、減収となっています。また、鉄鋼や鉱業、海運業などの景気敏感セクターは10%前後の減収と、非常に厳しい結果です。

経常利益を見ていくと、増益率では石油・石炭製品や海運業、電気・ガス業、パルプ・紙などの増益が目立ちます。一方で、小売業は22%の減益と非常に苦しい結果でした。

増税影響が直撃した三越伊勢丹

このように、全体としては苦しい結果で増税の影響を感じさせる日本企業の決算ですが、特徴が大きく出た企業の決算を簡単にご紹介します。

まず、非常に悪い決算だったのが、百貨店の三越伊勢丹ホールディングス(3099)です。10~12月の売上高は2,979億円で前年同期比11.8%減、本業の儲けを示す営業利益は72億円で前年同期比50%減となりました。

売上高に占める営業利益の割合を示す営業利益率は4.3%から2.4%に低下してしまいました。消費増税に伴う駆け込み消費の反動が出たということでしょう。さらに足元では新型コロナウイルスの影響で外国人観光客が大きく減少しており、2020年1~3月期の業績も芳しくないかもしれません。

高いブランド力が業績を下支え

一方で非常に良い決算が目立ったのが、ゴールドウイン(8111)です。同社はアウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」など、高機能製品が人気のスポーツアパレルメーカーです。

ゴールドウインの10~12月期の売上高は346億円と前年同期比14%増、営業利益は106億円と25%増となりました。営業利益率は28%から31%近くに上昇しました。

同社は好決算を受け配当の増額も発表しました。アウトドアブランドの人気が高いことに加え、ラグビーブランド「カンタベリー」がラグビーワールドカップの影響もあり好調に推移したことが好決算の理由となったようです。

筆者が年明けにアウトレットでザ・ノース・フェイスに立ち寄った際も、非常に混雑していました。同ブランドの機能性やデザインに支持が集まっており、高いブランド力につながっていると考えられます。

もちろんゴールドウインの株価が今後どのように推移するかはわかりませんが、株式投資ではこのように高いブランド力を持っている企業の株式を安く買うことが有効です。ぜひ最新決算を分析し、他社がマネしにくいブランドを築いている企業を探してみてください。

<文:マーケット・アナリスト 益嶋裕>

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