中国、米紙記者に国外退去命令 新型ウイルス対応の批判記事に反発

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中国外務省は19日、同国の新型コロナウイルスへの対応について「人種差別的」な意見記事を掲載したとして、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの北京駐在記者3人を国外退去処分にしたと発表した。

今月3日に掲載された意見記事は、中国政府による、致命的な新型ウイルスのアウトブレイク(大流行)への初期対応について、「秘密主義で利己的」なものであり、中国への国際的信認を「揺るがした」としていた。

中国外務省の耿爽報道官は、この記事は「人種差別的」で、国内で2000人以上が死亡しているアウトブレイクに対抗するための中国の取り組みを「侮辱した」と主張。

「中国国民は、人種差別的な主張を掲載したり、悪意を持って中国を攻撃するメディアは歓迎しない」と述べたが、国外退去処分となるジャーナリストの名前は明かさなかった。

中国外務省は、ウォール・ストリート・ジャーナルに対し、複数回にわたり謝罪を求めたが、拒否されたと説明している。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、当該記事の執筆はしていないジャーナリストが、5日以内に中国から退去するよう命じられたという。

同紙によると、3人のジャーナリストは、米国籍のジョシュ・チン副支局長とチャオ・デン記者、オーストラリア国籍のフィリップ・ウェン記者

北京で取材するBBCのジョン・サドワース記者によると、有効な記者証を持つジャーナリストが中国国外への退去を命じられたことは、20年以上なかったという。

中国国営報道機関の規制を強化

この前日には、米国務省が、米国内で活動する中国国営報道機関について、海外の宣伝活動団に分類し、規制を強化していた。

対象となるのは、中国国営の新華社通信や、中国グローバルテレビジョンネットワーク(CGTN)を含む5報道機関。全従業員リストの提出が義務づけられる。一方で、報道活動自体への規制はないという。

「言論規制ではなく、反論を」

マイク・ポンペオ米国務長官は声明で、中国による同紙記者の追放処分を非難した。

「成熟した、責任感のある国々は、事実を自由に報道したり、意見を述べるということを理解している。正しい対応とは、言論を規制することではなく、反論を示すことだ」

ウォール・ストリート・ジャーナル発行人、ウィリアム・ルイス氏は声明で、中国の対応に「深く失望」していると述べ、意見記事と報道部門は「完全に別物」だと強調した。

「我々の意見ページでは、定期的に賛成派あるいは反対派の意見記事を掲載している。今回の記事の見出しについて怒りを買おうという意図はなかった。(中略)一方で、中国国民の間で動揺や懸念を引き起こしたのは明らかであり、我々は遺憾に思う」

「アジアの病人」

問題になっている記事には、「中国は『アジアの病人』」という見出しがつけられている。これは18世紀後半から19世紀初期に、中国に対して使われていた蔑称「東亜病夫(東アジアの病人という意味)」を使ったもの。この蔑称は、中国国内の分断や、世界の大国と比べて弱い立場にあった中国を指していた。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、この見出しを侮辱的だと捉えたウォール・ストリート・ジャーナルのスタッフから、見出しの変更を求める声が上がっていたという。

中国の外国人記者クラブ(FCC)は、今回の決定について、「外国の報道機関を脅迫するための、中国当局による極端で明白な試み」だと主張した。

ジャーナリストのビザ更新拒否、行方不明者も

昨年、中国は別のウォール・ストリート・ジャーナルのジャーナリストについて、外国のジャーナリストが同国国内で取材活動を行うのに必要な記者証の更新を認めなかった。

シンガポール国籍のこのジャーナリストは、オーストラリアの当局が、中国の習近平国家主席のいとこの1人について、調査しているとする記事を共同執筆していた。この人物に、組織犯罪やマネーロンダリング(資金洗浄)に関与している疑いがあるとの内容だった。

2018年には、中国でイスラム教徒のウイグル人などの少数民族が収容されていることについて報じた、バズフィード・ニュースのメガ・ラジャゴパラン北京市局長が、ビザを更新できなかった。

こうした中、新型コロナウイルスのアウトブレイクの発生地、湖北省武漢市内で取材をした、中国市民のジャーナリスト2人が、先週から行方不明になっている。

方斌氏と陳秋実氏は、封鎖されている武漢市内の様子を捉えた動画や写真をオンライン上で共有していた。


中国での報道の自由

  • 中国は、報道の自由において一貫して低い評価を受けており、外国のジャーナリストが活動しにくいであろう場所とされる
  • 非政府組織「国境なき記者団」は2019年、メディアの独立性や、ジャーナリストの安全や自由の尊重、多元論に関する調査に基づく、報道の自由ランキングにおいて、中国を180カ国中177位に位置づけた
  • BBCは中国国内では閲覧できないよう遮断されている。2019年、BBCは中国などの政府が検閲しようとする試みを阻止するため、ダークウェブ(発信元の特定などが困難なウェブ)上に、TORブラウザを介して、国際ニュースウェブサイトを立ち上げた
  • 中国のFCCによると、2013年以降、中国から国外退去あるいはビザの更新ができずに事実上国外退去となったジャーナリストは9人

(英語記事 China expels reporters for article it deemed racist