【独自取材・第二弾!】ソーシャルレンディングの裏側、延滞ファンドの実態

 第2種金融商品取引業のmaneoマーケット(株)(TSR企業コード:297202863、千代田区、以下マネオ)から東京地裁に破産を申し立てられ、1月7日に同地裁から保全管理命令を受けたソーシャルレンディングを手がける(株)Crowd Lease(TSR企業コード:016377834、東京都港区、以下クラウドリース)。
 互いの主張の隔たりから、破産事件は泥沼化している。また、クラウドリースの代理人が「募集時にアナウンスした担保権等には実効性のないものもあった」(裁判資料)と衝撃の告白を行い、ソーシャルレンディングの危うさを自ら露呈させた。
 東京商工リサーチ(TSR)情報部は、これまでベールに覆われていた匿名のクラウドリースの貸付先を入手した。社名を特定できた貸付先企業への取材を進めると、すでに2社は破産開始決定を受けていた。このほか、2度の不渡りを出して銀行取引停止処分を受けた企業や代表者が音信不通の企業など、延滞した理由が次々と明らかになった。

 2月13日、クラウドリースの武谷勝法社長はブログに、「(一部ファンドは)全額配当が実現できた」と書き込んでいる。その上で、「(自社の)破産申し立てが却下または棄却されない限り、これらの回収金がファンドに紐づけられて配当されることはない」と、開き直りとも受け取られかねない言葉を連ねた。
 1月21日、クラウドリースはマネオが申し立てた債権者破産の却下などを東京高裁に抗告している。だが、マネオによると「(クラウドリースは)投資家の利益を著しく害する行為をしてしまう株式会社」などの理由で2月7日、抗告は棄却されたという。

貸付先は非開示

 ソーシャルレンディングは、基本的に貸付企業名を開示しない。だが、虚偽の表示などで相次いで行政処分を受け、信頼が失墜している。2019年3月、金融庁は借り手の社名公表も可能との見解を示した。
 マネオが募集し、クラウドリースの子会社を経由して貸し付けるスキームは借り手の社名が開示されていない。
 貸付先は「アミューズメント事業者MC」、「家具レンタル事業者L」などと表記され、社名の把握は事実上できない。そこで、投資家は「保全(担保)の遊技台」、「債権・動産譲渡登記や約束手形の徴収」、「代表者の連帯保証」などの表示を判断材料にして投資を検討する。
 TSR情報部が入手した資料によると、貸付先の中には「一度も約定に遅れたことはなく正常返済中」と全額回収が見込める案件もある。だが、その多くは「支払停止」や「減額」、「利息のみ」など、延滞事実が淡々と記載されている。

延滞の3社は同じ代表

 九州の貸付先A社は、クラウドリースの「親会社」(裁判記録より)の支店と同所に本社を置く。事業の急拡大で、クラウドリースから運転資金を調達し、その翌月には無担保私募債を発行して地銀が引き受けていた。資金は潤沢なはずだったが、わずか半年後に延滞を起こした。A社の代表は、他にもパチンコ店など2社を経営。それぞれクラウドリースから資金を調達しているが、現在は減額して返済中という。TSRの企業データベースでA社の代表を検索すると、新たに大阪のB社が浮かび上がった。B社の代表はA社代表と同一人物で、取締役にはクラウドリースの武谷勝法社長の名前もある。クラウドリースと延滞中の3社との関係に、釈然としない投資家もいる。

過去のホームページではグループだった2社

 クラウドリースの「親会社」の過去のホームページではクラウドリース以外に、3社が同じグループに属すと表示されている。
 そのうちの1社、C社にもクラウドリースが資金を貸し付けていた。C社は都内に本社を置く貿易会社だが、元代表はクラウドリースの武谷社長で、貸付金の返済が滞っている。
 同じグループだったファーストリアン(株)(TSR企業コード: 022721398、東京都港区)は2019年4月、破産開始決定を受けている。

クラウドリースが貸付先に破産申し立て

 グループ外でも、2019年1月に支払を停止した老舗パチンコ店D社は、動産、手形、連帯保証などで保全され、年利10%以上の利回りで募集されていた。
 クラウドリースは、「一定のリスクがある投資商品」とする一方、「万が一支払いが滞った場合でも事業者(貸付者)が対象動産を売却して弊社への返済原資に充てる事が可能」と開示していた。
 だが、蓋をあけてみると数千万円を返済しただけで、その後は元利金の支払いを停止。裁判資料では、「(クラウドリースが)債権者破産を申し立てた」と記載されている。
 関西のパチンコ店E社は、クラウドリースが手形や動産、代表者保証を取っていたが、内紛で手形が不渡りになった。クラウドリースは仮差押などに動いたが、会社と連絡が取れず、店舗に「警備員を配置し、第三者が店舗に入らないよう監視」していたという。

代表者が音信不通、申告より多い滞納税額

 急成長が見込めるとして数千万円を貸し付けたF社は、最後の貸付から約半年で延滞した。資料には「代表者は音信不通で、事業はとん挫したと思われる」と記載されている。
 神奈川県のG社は、クラウドリースが不動産の担保を取っていたが、返済が滞り、クラウドリースが担保不動産の競売を申し立てた。
 しかし、競売市場修正や滞納税額がG社の申告金額より大きく、競売は取り消された。

シートで覆われた競売物件(2020年2月撮影)

‌シートで覆われた競売物件(2020年2月撮影)  不動産登記簿を閲覧すると、もともと所有者はG社の前身と思われる会社だったが、度重なる差し押さえを受け、不動産は売却され、その後にG社が取得した。だが、数年後に再び差し押さえられており、G社は余裕のない資金繰りだったことがうかがえる。

 マネオは第2種金融取引業者として、募集時に投資案件の情報開示や説明、保全の信用度などの注意喚起をすべきだったと、責任を指摘する声もある。クラウドリースも甘い計画で混乱を招いたと言わざるを得ない。特に、関連会社が絡む案件は、詳細を把握しながらリスク開示のあり方に疑問を残している。
 今の時代、消費者や投資家対象の業界が、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」では言い逃れできない。ソーシャルレンディングは、その存在を真摯に問い直す時期にきている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年2月21日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

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