松坂桃李主演「微笑む人」原作者・貫井徳郎氏が語る“映像化困難”の理由

松坂桃李主演のドラマスペシャル「微笑む人」が3月1日(午後9:00)にテレビ朝日系で放送される。原作は作家・貫井徳郎氏自身に「僕のミステリーの最高到達点」と言わしめた同名作品だ。本作の映像化は不可能ではないかと思っていたという貫井氏は、それ故に今回のドラマ化の話を聞いた時に「映像畑の方々は映像化しやすい作品よりも、しにくい作品をあえて選んでやるんだな」と感じたと明かす。

ドラマは、「本の置き場所が欲しかった」という理由だけで妻子を殺害したと供述するエリート銀行員・仁藤俊美(松坂)の事件を追ううち、彼の過去に隠された事実が次々と明らかになっていく衝撃のミステリー。本作の映像化が難しいと考えた理由を、貫井氏は「テーマの難しさ」と語る。

「この本のテーマって『世間の人たちは、自分が分かる範囲だけで“分かった気になっている”』っていうことなのですが、そんなことって、『言われたくない』『目をつぶっていたい』って思っている方々が大半だと思うんですよ。大半の人たちが『受け付けられない』と思っているようなテーマでも、テレビで放送したら多くの方の目に触れてしまうので、ちょっと映像化は難しいのではないかな、と感じていました」と説明。

また、「原作そのままよりはアレンジした方が面白い作品になるのでは、と思っていたので、脚本を秦建日子さんが担当してくださると聞いた時は、『それならば僕が思いつかなかったようなアイデアを足して映像化していただけるのでは!』と楽しみになりました」と貫井氏。秦氏が用意したラストを読み、「なるほど!とびっくりしましたよ。テレビの前で気軽に視聴し始めた方々も、引き込まれるような展開で、満足感を得られるようなラストになっているのではないでしょうか!」と太鼓判を押した。

難しい役どころに挑んだ松坂について、貫井氏は「仁藤役に松坂桃李さんをキャスティングしたというだけで、もうこの作品は成功じゃないですか!?と思うくらい、ぴったりだと思いました」と絶賛。さらに、松坂の印象を「見るからにいい人。爽やかですし、裏に隠していることなどもなさそう」と分析した上で、「でも、そういう人が“本の置き場所が欲しかったから”というわけの分からない理由で妻子を殺す──そのギャップの大きさが、逆に怖さになると感じました」と述べる。

そして最後に「どんなフィクションでも度を越していると見たくはない。この作品が果たして度を越すのか越さないのか…。僕はそこが非常に興味のあるところです。僕は小説だと、意外と気にせずに度を越したものを書く方なので(笑)。どんなふうに受け取られるのか、楽しみです」と今回の映像化に期待を寄せた。

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