40代夫婦「4500万円の家を30年ローンで購入したいけど…」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、マイホーム購入に踏み切れない45歳の主婦。未就学児の子ども2人を抱え、40代で住宅ローンを組むことに不安を感じているといいます。FPの渡邊裕介氏がお答えします。

40代での住宅購入に悩みます。結婚自体が遅く、40代で2人の未就学児を育てています。マイホームはいらないと言い続けていた夫が、ここ半年で持ち家志向になり、困惑しています。私はもともと、中古マンションを購入し手狭な賃貸から引っ越したいと思っていたのですが……。

4500万円の家を30年ローンで購入したとして、子どもの教育費、老後資金は大丈夫でしょうか? 私が自営業で先が見えない分、夫に意見しにくいところがあります。中古マンションに引っ越したいとは言ったものの、私自身は子どもたちをしっかり育てていければ、特に家にこだわりはありません。学資保険は300万円ずつかけています(上の子は払込済みです)。

いざ住宅購入となると不安に駆られ、相談させていただきました。

<相談者プロフィール>

・女性、45歳、既婚(夫:43歳、会社員)

・子ども2人:4歳、2歳

・職業:自営業(年収100万円ほど)

・居住形態:賃貸

・毎月の手取り金額:44万円

・年間の手取りボーナス額:200万円

・毎月の世帯の支出目安:38万円

【支出の内訳】

・住居費:6.8万円

・食費:7万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:2.5万円

・保険料:2.5万円

・通信費:2万円

・車両費:2万円

・お小遣い:8万円

・その他:5万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:6万円

・年間ボーナスからの貯蓄額:160万円

・現在の貯蓄総額:2000万円

・現在の投資総額:200万円

・現在の負債総額:なし


渡邊:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。40代での住宅購入についてのご相談です。お子さまがまだ小さい中での40代での購入は不安を抱えますよね。将来の教育費、住宅ローンの返済、老後の準備とどうバランスを取っていくのかを考えなければいけません。

退職金は考慮せず、20年で返せる計画に

ご相談者の場合、今年住宅を購入するとして30年ローンを組むと、繰上げ返済しない前提だと73歳までの返済となります。また、下のお子様が大学を卒業するのが、ご主人63歳、奥様65歳となります。教育費を賄いながら繰上げ返済の計画を立てておかないと、リタイアした後、住宅ローン返済の負担が重くのしかかります。

ご主人の退職金制度がわかりませんが、20年先になってくると、確実に受け取れると想定するのもリスクなので、返済計画は退職金を考慮しないで考えた方が賢明です。お仕事をする期間を考えると、20年で返済を終えるペースでの繰上げ返済を考えておく必要があるでしょう。

40代、年収850万円の適正な借入額は?

では、年収や年齢を考慮した上で、適正なローン金額について考えてみましょう。

家族構成や生活費は各家庭ごとに異なりますが、住宅ローンの返済額は、年収に対して20%~25%に抑えるのがひとつの目安です。ご相談者の場合、手取り収入から年収を850万円と想定して考えます。

850万円×20~25%÷12ヵ月=14万円~17万7000円/月

月々の支払は、この範囲に抑えた方がよいでしょう。奥様の収入が安定して見込めるのであれば、世帯収入で考えてもよいですが、自営業で先が見えない部分もあるとのことなので、計画には入れないで考えます。

住宅ローンを組む際、前述した通り、返済期間を30年で組んだとしても、実質働くのが65歳までとすれば、退職までの期間は約20年となります。20年で完済できる計算での借入れを目指したいところです。

借入期間20年、固定金利1.5%と仮定して考えると下記のようになります。

<奥様の収入を考慮しない場合>

借入額:3600万円、金利1.5%、借入期間20年、月々173,716円

すなわち、ご相談者が43歳~45歳で購入を考えるのであれば、借入は3600万円程度に抑えておいた方がよいでしょう。

3600万円借入すると、月々の返済と貯蓄は…

現在の家賃が月6万8000円、3600万円のローンを組むと、借入期間20年だと月17万3716円、借入期間30年だと12万4243円です。今よりも約5万6200円~10万5700円、住宅にかかる費用が増える計算になります。管理費や修繕費を考慮すると、物件にもよりますが、2~3万円はプラスかかります。

住宅ローンを長く組んで月々の支払を抑え、将来繰上げ返済をすることで、退職までに完済するという方法もありますが、ご相談者は、退職目前が一番教育費の負担が大きい時期となるため、余程退職金が見込める方でない限りは、20年で住宅ローンを組んだ方が賢明かと思われます。

そう考えると、現在月々の貯蓄が6万円のため、月の収支はマイナスとなり、ボーナスで補てんすることになります。ボーナスでの貯蓄率が高いため、それでも年間100万円程度は貯蓄にまわせるかもしれませんが、今と比べるとだいぶ差が出てきます。

現在、手元に2200万円ほどの貯蓄があります。4500万円の物件に諸費用等を考慮し、総額4800万円と仮定すると、3600万円のローンにするためには、約1200万円程度を頭金や諸費用に費やすことになり、手元残りは約1000万円になります。

今後の子どもの成長に伴う生活費のアップや、教育や住宅ローン以外にかかるであろう、自動車の買い替えや、旅行、その他経済的な目標などを考慮した時に、生活が成り立つか考えてみてください。

年間の貯蓄目安を100万円とし、家計の見直しなどをしながら、10年間継続することができれば、1000万円貯めることができます。住宅購入後の手元資金と、支払済み学資保険を加えると、2300万円となるので、公立か私立、どのような教育を与えたいかにもよりますが、中学校以降の教育費としては十分となります。結果的に、進路によって余裕が出た部分をその他の経済的目標や老後資金にまわすイメージです。

ライフイベントに優先順位をつけて

住宅購入以外にも、教育費準備、老後準備、今の生活の充実など、これから生活設計するにあたり、優先順位をつけてください。ライフプランを作成し、優先順位の高い目標を達成するためには、どのような貯蓄計画をしていく必要があるか、その貯蓄計画を実行するにあたり、他の目標をどのように調整する必要があるかを整理する必要があるでしょう。

場合によっては、優先順位の低い目標については、金額を下げる必要が出てくるかもしれません。ご夫婦でも優先順位が異なる場合、また夫婦間だと感情も入り、話が進まない、まとまらないケースも多くありますので、その場合は専門家を間に入れるのも効果的です。ぜひよい機会と捉えてご夫婦で話し合ってみてください。

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