巨人阿部2軍監督「怒られた」 “鬼軍曹”へ送られた原監督の助言とは

巨人・阿部慎之助2軍監督【写真:小谷真弥】

注目度抜群の40歳監督をインタビュー、熱血指導は「絶対に将来のためになる」

 リーグ2連覇と日本一奪回を目指す原巨人の目玉人事となった阿部慎之助2軍監督。Full-Countでは昨季までの現役時代に8度のリーグ優勝、3度の日本一に貢献した40歳の青年監督を直撃。若手選手に猛練習を課すワケや2軍監督としての指針、さらには原監督から春季キャンプ前に“説教”を受けたことなどを語った。

「まだまだ!もっといけるだろ!」 阿部2軍監督の野太い野次が響く。愛情たっぷりのゲキだけでなく、自らバットを持って実演指導も。若武者たちは足をプルプルさせながらも声を張り上げたり、一言一句をこぼさぬように熱心に聞き入ったり……。巨人2軍ではそんな光景が日が暮れるまで繰り返されている。

「2軍選手は技術が足りなかったり、あと一歩のところでチャンスを掴めない選手が多いだけ。いい物はみんな持っているし、そのためにあと一歩だったりを、なんとかを掴んで欲しいから練習量も必然に多くなるよね。いい物を持っている選手は多い。何とか1軍に上げさせたい気持ちだけだよ」

 春季キャンプでは育成のイスラエル・モタ外野手が破壊力のある打撃をアピール。育成の沼田翔平投手も沖縄キャンプから1軍昇格し、支配下登録へアピール中だ。その一方で、キャンプ前に一塁のレギュラー候補に挙げられた北村拓己内野手ら2軍行きを通達された選手も多くいる。「モタはすごくいい物を持っている。身体能力もすごいし、走らせても。飛ばす力もすごい。1軍から落ちてきた選手は何かをつかめなかっただけ。1軍の残っている選手たちとの競争に勝たせてあげたいよね」。その表情はまるで父親のようだ。

 スパルタと評される猛練習は自身の実体験に基づいている。入団当初のコーチだった内田順三氏から猛練習を課せられた。それが通算2132安打、406本塁打の実績につながったと振り返る。

「すごい練習をやらされた。それがあったからこそ、どんどん良くなっていったと自分で分かったから。1軍キャンプの時は泥んこになってやっていたよ。いや本当に。(ノックでは)毎日とりあえず2、3回飛びつかないと、というのはあった。(ノッカーは)とんでもないところに打ってくる。本当にいい経験だったと思う。夜間練習も毎日あった」

「内田さんには『キツいのは分かっているけど、絶対に将来のためになるから』とずっと言われていた。言われていた当時は『うるせぇな』と思っていたけど、やっぱりためになったよね。『あそこまでやったんだ』という自信にもなる。『練習量は負けねぇぞ』みたいな」

阿部2軍監督の評価基準は?「打率が2割前後でも監督のリクエストに応えたら1軍に推薦しようと思う」

 16日の広島2軍との練習試合(宮崎)で対外試合初タクト。走者にはノーサインで盗塁できる「グリーンライト」が与えられ、チームで盗塁を4度企画。その一方で、走者を確実に三塁に進めるチーム打撃も求めた。「1軍にいった時に必要になることだし、それが一番求められること。それが2軍でも出来るように教育していきたい」とした。指針もできている。

「なるべくこちら側から(選手に)リクエストをする。『この打席ではこういうことをしろ』と。それができるかできないかは、見てあげないと。いくら2軍で打率.350を打とうが、1軍では打てない。数字(成績)ばかりを見ても仕方ないところがある。打率が2割前後でも監督のリクエストに応えたら、1軍に推薦しようと思うね。こちらのリクエストに対応できる選手でないと、絶対に1軍では生き残っていけないから」

「例えば『変化球を狙って行け』と。なんでかと言ったら、若い選手には変化球から入ることが多いでしょ。真っ直ぐを待ちながらも、ピュッと変化球がストライクに来た時に振れるか、仕留められるか。振りにいけたりとか、できる子を1軍に推薦しようかなと思っている。そういうのを評価に入れようと」

 とはいえ、うまくいくことばかりではない。13日の1軍と2、3軍の紅白戦では2年目の直江大輔投手が四球を連発。試合中に“公開説教”し、試合後にはノックを浴びせた。

「(岡本に)『本塁打を打たせて来い』と言ったのに(四球を与えた)。なかなか投手も本塁打を打たれるのは難しいんだよ。『頑張って抑えてこい』と言っているわけではないんだから。(その結果の)最悪が四球なわけじゃん。本塁打でなくても安打を打たれたら反省できる。もうちょっと低くいったら、抑えられたとか。口酸っぱく言ってきて、四球だったら反省もできない」

阿部2軍監督「期待する若手はいない」発言に原監督から助言「叱咤する時はツバをゴクッと……」

 昨季まで常勝軍団を引っ張ってきたとはいえ、まだまだ新米監督。キャンプ前、原監督から「好きなようにやりなさい」とファームを託されたが、指揮官としての“説教”もあったという。昨秋に「期待する若手はいない」と発言したことについてだった。

「(若手への)メッセージとして言ったつもりなんだけど、(原監督から)怒られたよ。『監督として叱咤する時はツバをゴクッと飲んでから考えて発言しなさいと』。(原監督へは)『すみませんでした』と」

 19年間の現役時代に長嶋茂雄監督、堀内恒夫監督、原辰徳監督、高橋由伸監督に従えた。常勝を宿命付けられた指揮官の中でも、一番影響を受けたのは原監督だ。

「原さんが一番長かったからね。原さんの勝つ、勝ちたい執念はすごい。現役終わってから気づいた。勝つためなら手段を選ばないし、すごい勝負師だなと思ったね。(村田)修一が何回も代えられていたじゃん。ちょっとダメだったら、スパッと。それを1軍でできるんだから。主力をパンと1打席で代えて……。その決断ができることがすごいよね。なかなかできないこと。『自分が責任を取る』と思ってやっていることだろうから」

 このキャンプでは8時の首脳陣ミーティングに始まり、17時過ぎまで続く個別練習にも熱心に付き添っている。イースタン開幕となる3月14日の西武戦(ジャイアンツ球場)も迫っている。

「選手の時よりグラウンドに長くいるな……。こんな長くいたことはないよ。秋はきつかったけど、もう慣れた。全然疲れない。本当に毎日充実しているよ」

 巨人の次世代を支える人材を育てる――。熱い思いが阿部2軍監督を突き動かしている。(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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