2月16日のInterFM897『Barakan Beat』(DJ: Peter Barakan)は、ゲストに元ちとせを迎えてお送りしました。
「民謡クルセイダーズ」との出会い
Peter Barakan(以下、Barakan):こんばんは、よろしくお願いします!
元ちとせ(以下、元):こんばんは。
Barakan:「元ちとせ Feat. 民謡クルセイダーズ」としてこの番組でもよく曲をかけてるんですけども、民謡クルセイダーズは共演前はご存じでしたか?
元:すみません、存じ上げていませんでした。
Barakan:一緒に録音したんですか?
元:せーので、というわけではななかったんですが出来る限り一緒に。皆さんに来ていただきまして。
Barakan:どっちからの提案だったんですか?
元:こちらですかね。シマ唄のアルバムを制作することになって、デビューしてからはやったことがなかったので。
Barakan:えっ、シマ唄やったことなかったの?
元:そうなんですよ、デビュー前にはあるんですけど。学生の頃に。このタイミングでそろそろシマ唄を見つめ直したいなと思っていて。シンプルに録るものがいいなと思いながら1つくらいはコラボレーションもいいんじゃないかなという提案がありまして。その時スタッフの方がこういう面白い人たちとやるのはどうかって。
Barakan:バックのオケを最初に作ってもらって録音したってことですか?
元:はい。キーを合わせたりとかそういう作業もありつつ。彼らのスタジオに突撃して。
Barakan:福生(ふっさ:東京都)に?
元:ええ。ここは奄美大島か?ってくらいバナナの木がありました(笑)。
中学2年生の大会の楽屋で、急にこぶしが回るように
Barakan:普段はどこに住んでるんですか?
元:奄美です。
Barakan:ついこの間、奄美アイヌというイベントで朝崎郁恵(加計呂麻島出身の歌手)さんと一緒にコンサートなども渋谷でやったんですけども。朝崎さんは昔からよく?
元:そうですね。民謡、シマ唄をやる前から知っていたので。生でお会いしたのは中学校2年生くらいだったんじゃないかな。私から見たら神様のような存在なので、そんな簡単にはお近づきにはなれなかったですけど、最近はイベントでお会いするとご案内させてもらったりとかはします。
Barakan:元さんは何歳くらいから島唄を?
元:小学校6年生の始まりくらいからですね。最初は三味線を公民館に習いに行っていて。でもシマ唄は楽譜がないので、基礎を習ったら自分で唄を覚えていかないと弾ける曲が増えていかないんです。すごく興味があったので、唄もどんどん覚えるようになって。口ずさんでいくうちにうちの師匠が「ちょっと変わった声してるから唄も練習してみないか」って。
Barakan:変わってる声って言われましたか。奄美の歌はそういう歌い方かなーと思ってました。
元:歌を始めた時はこういう歌い方ではなかったんですよ。単純に子どもが歌うように歌ってたんです。ファルセットもどれまでは出なかったですしこぶしも回らなかったんですけど、中学校2年くらいの鹿児島の県大会に行った時に、練習したら突然出来るようになって。師匠たちを見てこう歌いたいという気持ちはあったんですけどなかなかできずに、大会の楽屋で練習していたら急に。
Barakan:思いの強さが。
元:アレ?ってなって(笑)。すごくやりたかったことだったので、忘れないうちにと思って楽屋で直前まで延々と練習して。
Barakan:大会の結果は?
元:そこで初めて優勝したんです。
業界初!?「シマ唄」のリミックスアルバム
Barakan:「シマ唄」の島は、奄美の人はカタカナで書くんですか?
元:私たちはずっとそうやって思ってたんですけど、みなさんがよく目にしたりするのは、漢字で書かれてますよね。カタカナで書かれる意味は、どっちかっていうと「縄張り」とか奄美の中で育った集落とかを意味するんです。さっき歌った「くるだんど節」も私はこう歌いますけど、北の方に行くとまた違ったり。情報が少なかった時代はシマ唄を唄うと「君はどこどこの人なんだね」って唄で生まれた場所を知ることができるようなものだったんです。
Barakan:ライバル精神みたいなものはあるの?
元:いや、そんなことは。ラッパーみたいにケンカしたりはしないです(笑)。即興で唄われる歌詞が良かったりすると、どんどん歌い継がれて今のような時代まで残るんですよね。
Barakan:奄美って鹿児島と逆側に沖縄がありますよね。どっちとも違う?
元:文化的、例えばモノとか食事とか気候とかは沖縄に近いと思います。方言は鹿児島とも違いますし、沖縄とも違います。ちょうど間の、それぞれの文化が流れてきたんだなというものがありますね。三味線の民謡シマ唄が一番分かりやすいのは沖縄は「琉球音階」といって、いわゆるピアノの黒鍵だけで弾くもの。奄美は開放弦が日本音階なんですよ。なので黒鍵も白鍵も使える。あと沖縄はファルセットは使わない。
Barakan:そうとう高い声出しますよね。でもファルセットではない。
元:はい。細かいところは色々違いますね。
Barakan:リミックスのアルバムが出ますよね。シマ唄のリミックスのアルバムはかなり珍しいと思うんですけど。
元:リミックスという世界を今回お話を頂いて初めて考えたという段階なのでまだ色々把握できていなんですけど、「音楽」という、まさに音を楽しむ世界だなと。正解ってやっぱりないんだなということを教えていただきました。シマ唄をシンプルなものとして知っている奄美の人たちが逆に面白いって言ってくれてて、そっちの反応に驚きですね。
Barakan:僕も最初はえ?どういうこと?って思ったけど(笑)、聴いてみたら面白かった!6曲あってそれぞれ違うリミキサーがやってて、最後の曲に坂本龍一が入ってますけど、他の方は知ってる方だったんですか?
元:坂本慎太郎さんは面識がありまして、でも一緒に音楽をやるのは今回が初めてでした。最初に届いたリミックスが坂本さんの「朝花節」だったので、こういう変化をするっていう感覚がどうやって出てくるのかなって。人にこういう風に届いてるんだなというのが感じられて楽しかったですね。
Barakan:どれを聴いてもかなり中毒性がある感じでした。コンサートでも出来る……んじゃないですか?
元:経験はしてみたいですけど……。
Barakan:やろうと思えば出来ますよね?
元:……聞かなかったことにしておきます(笑)!
Barakan Beat
放送局:InterFM897
放送日時:毎週日曜 18時00分~20時00分
出演者:Peter Barakan
メール:barakan@interfm.jp
ハッシュタグ: #barakanbeat
※放送情報は変更となる場合があります。