全国に4万人以上いる、日本語を学ぶ子どもたちとの関わりから生まれた絵本『ランカ にほんにやってきたおんなのこ』発売!

『ランカ にほんにやってきたおんなのこ』の作者・野呂きくえさんは、 25年以上の経験をもつ日本語教師。偕成社の編集者との出会いは、 まったく別の作品を投稿したことがきっかけでしたが、 よく知る「日本語を学ぶ子どもたち」のことを書いたらいいのでは、 との提案を受けて、 このテーマで、 初めての絵本を手がけることになった。

それから10年以上、 さまざまな活動をしながら、 日本で日本語を学ぶ人や子どもが直面する問題を見ていくなかで、 至った結論は、 「言葉の習得は本当に力になる。 けれど、 言葉以前のだれかとのつながりは、 もっと力になる」 ということ。 それを伝えるためにできたのが、 『ランカ』のストーリー。心細いランカの気持ちを表現しながらも、 やさしくあたたかみのある絵は、 松成真理子さんが手がけている。

ランカは、 外国からやってきて日本の小学校に入ることになった、 10歳の女の子。 これまで通っていた学校とはちがう毎日に、 一生懸命ついていこうとしますが、 まわりの子の言葉も、 文字もわからず、 孤独な気持ちを抱ている。ある日、 ふるさとを思い出して木登りをしていると、 クラスメイトの男の子に足をつかまれたランカ。 「なんでひっぱるの」と胸がいっぱいになり、 泣き出してしまう。 すると、 足をつかんだ男の子も、 泣き出した。 実は男の子はランカに、 「木に登ったらあぶないよ」と教えようとしていたのだ。 ちがう文化で、 言葉がわからないのは、 クラスメイトの子たちも同じだった。

文部科学省の調査によると、 日本の公立学校に通う、 日本語の教育が必要な生徒は、 小学校、 中学校、 高等学校、 中等教育学校及び特別支援学校を合わせると、 4万3千人以上いる。日本国籍をもち、 日本語教育が必要な生徒の数も、 増加傾向にある。主人公ランカのふるさとがどこの国かは、 本の中に明示されていない。 今、 日本のあちこちの学校に通う外国の子もランカであり、 また、 日本の子が外国の学校に通うことになったら、 自分がランカの立場になることもある。

異なる文化をもつ国で、 聞こえてくる言葉や目に入る文字が読めないと、 どんな不安な気持ちになるだろう。 そんな想像力が芽生える一冊。 日本語を学び始めた子にも読めるよう、 文章はすべてひらがなで構成されている。

© 有限会社ルーフトップ