大げさなほどに

 「大げさの反対」という意味だろう。新語を全国から募り、国語辞典ふうにまとめた本「辞書に載らない日本語」(大修館書店)に「小(ちい)袈裟(げさ)」という単語がある。「深刻な出来事をささいなことであるかのように語ること」らしい▲午前3時ごろ、助けを求める声を聞いたというのに、まったく「小袈裟」な受け流しだろう。今月、神戸市こども家庭センター(児童相談所)を真夜中に訪れ、「家を追い出された」と訴える小学6年の少女を、当直だったNPO法人の職員が追い返していた▲インターホンで訴えを聞き、画面に映る姿を見たが、小学生よりも上だと思い込み、緊急性を感じなかったらしい▲たとえ中学生、高校生に見えたとしても、救いの手を要しなかったか。職員は「警察に相談して」と告げ、女の子は交番に行って保護された▲NPO法人は再発防止に努めるという。手はず、対応の方法を確かめたり、改めたりするのは、もちろん大切なことだろう。もう一つ改めるとすれば、変事を無事と思い込み、小事で済ませようとする「小袈裟」の心かもしれない▲寒さと不安で、女の子は身を震わせたろう。今この時も、親の言動に身を震わせ、救いを求める子どもは、ごまんといるに違いない。大げさなほどの仕草で、手を伸ばし、守れる社会でありたい。(徹)

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