【祝・デビュー21年目】新生・氷川きよし独占インタビュー 「苦しめば苦しむほどいい歌が出てくると思う」

昨年末、「第70回NHK紅白歌合戦」で、デビュー20周年記念曲『大丈夫』のサビに続き、金の龍に乗って『限界突破×サバイバー』を熱唱、圧巻の歌唱力とパフォーマンスで視聴者を魅了した氷川きよし。歌手別視聴率では40.4%と高視聴率を記録、さらに「週刊文春デジタル」の「一番良かった歌手」アンケート調査では、見事1位に輝いた。

皆様のおかげで20年間連続で紅白に出場させていただきましたが、昨年は、自分でも満足のいく、達成感のあるステージで、20周年の節目の年を締めくくることができました。節目の年に、演歌とは違う『限界突破×サバイバー』という素晴らしい曲をいろいろなところで披露できたことも幸せでしたし、自分の中でこうあるべきと頑なにとらわれていた形式からはみ出して、自分というものを表現できた最高の時間にもなりました。そこをまた、たくさんの視聴者の方に評価していただけて、皆さまの真心を心から感じて、本当に幸せに思っています

本番では「とにかく一生懸命歌うことだけを考えていた」と言い、自らのステージは、「帰宅してからゆっくり観た」と微笑む。

これまで紅白の出演にあたっては、こちらから演出面でのリクエストを出したことはないのですが、今回は、龍の色が渋めではなく、光沢感のあるゴールドがいいと思い、少しだけ、その希望を伝えさせていただきました。帰ってから録画を観たら、自分が思い描いていた以上にキレイなゴールドで、迫力もあって、本当にデッカイ龍がいるように見えて、感激しました。客席の雲も迫ってくるような感じでしたしね。いろいろな方が携わって、素晴らしいステージを作り上げることができたので、すごく感謝しています

昨年は、東京・日本武道館と大阪・大阪城ホールで「デビュー20周年記念コンサート」も開催。計5公演4万人を動員し、大好評となった。

多くの皆様に来ていただき、立派なところでやらせていただき、演歌あり、歌謡曲あり、ポップスあり、EDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック)ありと、自分がやりたかったこともすべてやらせていただいて、丸ごと氷川きよしを表現できました

紅白で歌唱した『限界突破×サバイバー』は、記念コンサートでも披露。「最近は、演歌好きな昔からのご高齢のファンの方からも、『〈限界突破〉が好き!』って言われることが増えて、嬉しいんです」と笑みをこぼす。さらに、ファンの中には、『大丈夫/最上の船頭』のIタイプのカップリング曲で、本人が発案、初めて制作に携わったビジュアル系ロックミュージシャン顔負けのMVもカッコイイと話題になったロック曲『確信』が好きだと言う高齢者も増えたそうで……。

まぁ、洒落てますね~ってお応えしているんですけど(笑)、自分としては、基本は演歌でも、自分の好きな、やりたかった音楽も表現していきたいと考えているので、喜んでいただけるのはとてもうれしいです。自分が好きな表現で、自分の見せたい見せ方をしたときに、それは好きじゃないと思う方もいらっしゃると思うんですが、『人間としてのきいちゃんが好き』『きいちゃんの歌声が好きで励まされる』と言ってくださる方がいる限り、信念を持って歌い続けていこうと思っています。とにかく、ジャンルにこだわることなく、いい言葉を送りたい、歌詞を読んでいいと思ってもらえる歌をお届けしたいと思っています

『限界突破×サバイバー』でも〈限界を突破して可能性を広げよう〉という歌詞をメッセージとして大切に届けたいと考えている氷川。その奥にあるのは、“歌は道標”という、“うたびと”としてのこだわりだ。

ある先輩に、『歌手というのは、聴く人が生きるか死ぬかというギリギリの気持ちのときに、生きなきゃって思わせることができるかもしれない、人の命を左右するくらいの仕事なのだから、すごく責任重大なんだよ』と言われたことがあって、ああ、そうだよなって。歌詞というのは、激励的なメッセージですから、歌手は、人生の道標を作る仕事なんじゃないかと思っているんです。とともに、芸術はみんなそうだけど、届ける側の苦しみが深ければ深いほど、いい作品が生まれますよね。自分も20年間歌ってきて、苦しめば苦しむほどいい歌が出てくると思うから、これからもいっぱい苦しみたいと思います

そんな自分の心を磨くために、2020年の始まりとなる正月は、ロサンゼルスへ行ったのだそう。

両親に、一緒に過ごそうって言ったら、『今年はいい』って断られたので(笑)、海外に行ってきました。引きこもりがちな性格で、2日くらい休みがあると、部屋の中から出なくなってしまうので、海外で陽を浴びながら、ゆっくりしたいと思って。時差があって、体は疲れたけど、心の栄養をすごくもらいましたね。海外に出て、その国の文化やいろいろなものに触れると、考え方が広がりますし、アイデアも浮かびますし。今回もブロードウェイでミュージカルの『フローズン(アナと雪の女王)』を観たんですが、もう感動して、後半は、こんなにミュージカルで泣けるんだって驚いたくらいウルウルきて。やっぱり、ジャンルにこだわらないで、これからも感動するものをたくさん観たいと改めて思いました。歌をお届けする自分自身も、常に感動と歓喜溢れる人生を送りたいですからね

21年目を迎える2020年は、新生・氷川きよしとして、一回ゼロに戻してスタートするつもり」と目を輝かす氷川。一歩目となる2月4日リリースの『母』は、「ゼロからのスタートにあたり、母から生まれたような真っ白な思いで歌っていきたい」という思いが込められた新曲だ。

自分の中で一番大事なのは、感動する歌を届けること。アイドルになって、お客様に夢を見ていただくことも大事だけれど、それよりも、人にとって大事なものは何かを伝えることが、氷川きよしの使命だということを20周年を迎えて確信したので、もう迷いません

次回は、氷川きよし『母』について語る

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