【レビュー】全米を騒然とさせた大事件の驚異の再現―アカデミー賞メイクアップ部門受賞作『スキャンダル』

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2016年、アメリカの超有名ニュース放送局であるFOXニュースのCEO ロジャー・エイルズを同局キャスターのグレッチェン・カールソンがセクハラで提訴するという事件に、全米ならず世界中が騒然とした。

その後、ロジャーが亡くなり、グレッチェンはFOX側と2000万ドル(約20億円)の支払を内容とする和解が成立したと報じられ、和解に含まれる守秘条項の影響で事件の詳細について多くが語られることはなかった。

ただし、当時グレッチェンの提訴に続いて複数のキャスターが同じ告発を行った事実や近年ではハーベイ・ワインスタインが多数の女優らに対する長年のセクハラを理由に逮捕されたりと、セクハラに対する厳しい糾弾の動きを受けてか、ハリウッドの脚本家とプロデューサーが立ち上がる。

この過去の事件をさらに掘り下げて、改めて日の目を見させたのだ。

真っ先にセクハラ提訴を行った、グレッチェン役に堂々たる深みを見せる名優ニコール・キッドマン

彼女の告発に揺れながら、同様の被害に向き合い自らの選択を迫られる主人公の売れっ子キャスター メ―ガン・ケリー役にこれを演じる意味と意思の強さをほとばしらせるシャーリーズ・セロン

そして、現在進行形の被害を受ける新人キャスター役に、今最も旬な女優マーゴット・ロビー

この3人のハリウッド女優の共演だけで見ものだが、この3人が三者三様に被害に立ち向かう様がそれぞれ描かれる内容の濃密さ。

3人はキャスターとして日常的にCEOエイルズからライバル視して競わせられてた事情もあり、決して互いに依存し合って共闘するわけではない。

それでも、いや、だからこそ、同じキャスターとして、同じ女性として、ある限られた瞬間に3人が意思を通じ合わせる時の「共感度」は、女性ならずとも男性の胸にも刺さること必至で、涙なしには見られない――。

シャーリーズ・セロンの意気込みは驚異のメイクからも伝わってくる。

正直な話、事前情報なしに観たため、「あれ?こんなに老けていたっけ?」と驚いてしまうほど、年齢とキャスター特有の濃いメイクを施して別人になり切っている。

それは被害者であるキャスター・メ―ガンの葛藤や苦痛をそのまま伝えたいといった、彼女の女優の本気度にほかならない。

実際、彼女は引退を口にしていたメイクアップアーティスト 辻一弘氏をその熱意で現場へ引き戻し、辻氏はその卓越した職人技が評価され、2年ぶり2度目のアカデミー賞(メイク・ヘアスタイリング賞)受賞と快挙を成し遂げたのだ。

これは、ハリウッドやテレビ関わらずアメリカのショービズ界全般で長年にわたり男性から性的に虐げられてきた女性たちからの強烈なメッセージだろう

本作が持つメッセージ性と演出・演技の圧巻のエネルギーを前にしたら、もはや男も女も見て見ぬふりはできないし、誰も起きたことをなかったことにはできないはず。

『スキャンダル』 あらすじ

2016年、アメリカニュース放送局で視聴率NO.1を誇る「FOXニュース」に激震が走った! クビを言い渡されたベテランキャスターのグレッチェン・カールソンが、TV業界の帝王と崇められる同社CEOのロジャー・エイルズを告発したのだ。騒然とする局内。看板番組を背負う売れっ子キャスターのメーガン・ケリーは、自身の成功までの過程を振り返り心中穏やかではなくなっていた。一方、メインキャスターの座を狙う貪欲な若手のケイラ・ポスピシルは、ロジャーに直談判するための機会を得て――。

■監督:ジェイ・ローチ
■脚本:チャールズ・ランドルフ
■出演:シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビー 他
■配給:ギャガ

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