日本版GPS「みちびき」に米軍の監視センサーを搭載する動きが本格化

日本が運用する「準天頂衛星システム(QZSS:Quasi-Zenith Satellite System)」、通称「みちびき」は、日本周辺の上空に長時間留まることができる「準天頂軌道」に複数の衛星を投入することで、GPS衛星の電波がビルや地形に遮られやすい場所での測位精度を高めるためのシステムです。

この「みちびき」を構成する準天頂軌道衛星にセンサーを搭載するための予算が米軍において計上される見通しであることが報じられています。

■搭載されるのはデブリを追跡するための宇宙状況監視センサー

準天頂軌道衛星「みちびき」4号機の想像図(Credit: qzss.go.jp)

米軍が計上する方針としているのは、みちびきに搭載される「宇宙状況監視(SSA:Space Situational Awareness)」センサー2つ分の開発予算と、これらのセンサーを使った軌道上でのテスト運用を支援するための予算です。

「宇宙状況監視」(または「宇宙状況把握」)とは、軌道上の人工衛星が他の衛星やスペースデブリ(宇宙ゴミ)と衝突するような事態を回避することを目的に、衛星やデブリの状況を把握するための取り組みです。日米間では7年前の2013年5月、日本が米国から軌道上の物体に関する情報を得ることを念頭に、当時の岸田外務大臣とルース駐日米大使により日米SSA協力取極が交わされています。

昨年2019年4月に開催された日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)では、日本による軌道監視用のレーダー開発や「みちびき」へのSSAセンサー搭載を含めた協力促進で両国閣僚の意見が一致。これを受けて内閣府の宇宙開発戦略本部でもセンサー搭載の実現に向けた取り組みを進めるとしており、今回の米軍における予算計上方針はセンサー搭載への動きが本格化しつつあることを示すものとみられます。

急増するスペースデブリへの対策は世界各地で進められており、スイスの「ClearSpace」による世界初のスペースデブリ除去ミッションの実施が2025年に予定されている他に、国内でも専用の衛星を使った人工流れ星の実現を目指す「ALE」が宇宙航空研究開発機構(JAXA)と協力し、運用を終えた衛星のデブリ化を防止するための技術開発を進めています。

また、今年2020年2月には、日本政府と国連宇宙部がスペースデブリ対策に向けた共同声明に署名しています。「みちびき」への米軍SSAセンサー搭載もこうしたスペースデブリに対する協働のひとつであり、今後もさまざまな取り組みが国内外で進められていくことになるはずです。

関連:日本政府と国連宇宙部、宇宙ゴミ除去に関して協力

Image Credit: qzss.go.jp
Source: NHK/ みちびきウェブサイト/ USAF
文/松村武宏

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