「感染広がるの当然」 クルーズ船下船の乗客、不満あらわ

「陰性」の検査結果が記された下船許可証を手に取材に応じる乗客の女性=21日午前11時10分ごろ、横浜市西区

 横浜港・大黒ふ頭に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」からは21日にも、陰性が確認された乗客ら253人が下船した。バスで横浜駅近くまで送迎され、ようやく解放された乗客の中には「死を覚悟して過ごすしかなかった」と悲壮感をにじませながら、感染が広がった船内の状況を明かす人もいた。

 「下船してから考えてもやっぱりおかしい」。静岡県熱海市に住む会社経営の男性(66)はバスを降りても、硬い表情だった。

 男性によると、客室待機の状態から室外に出る許可が出た今月8日以降、デッキを散歩するなど行動できる範囲が広がった。一部には立ち入り禁止のテープが張られていたが、何も施されていないドアを妻(69)とともに開けると、防護服を着用した関係者と鉢合わせしたという。

 感染危険地帯と安全地帯のゾーニング(区画)について、妻は「見た限りではできていない。立ち入れる場所に防護服姿の人が大勢いて、あれでは感染が広まるのも当然」と憤る。下船許可証を手に「今日から14日間、大切な人とは会わない。自分で守るしかない」と視線を落とした。

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