県庁緊迫、情報収集急ぐ 感染者が県内滞在、石井知事深夜に会見

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北陸新幹線を利用する乗客=21日午後7時ごろ、JR富山駅

 新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の感染拡大が、北陸地方に及んだ。県は21日深夜に緊急会見を開き、感染が確認された千葉県内の70代の女性が今月中旬に富山県内に旅行で滞在していたことを発表。同日には石川県で初の感染者が確認され、富山県内の自治体は感染拡大防止に向けた対応に追われた。

 21日午後11時に県庁で開かれた緊急会見で、石井隆一知事が女性の症状や行動歴などを説明。会場には報道陣が集まり、女性の詳しい立ち寄り先や宿泊先などに関して質問し、知事は県職員に確認しながら慎重に回答した。女性は今月16~18日に県内各地を訪れており、石井知事は緊張した表情で「濃厚接触者の情報収集を急ぐ」と語った。

 石川県内での感染者確認を受け、富山県内の自治体は防止策を打ち出した。

 富山県は、感染が確認された都道府県への出張の自粛を決定。急ぎではない出張が対象で、21日夜に全職員にメールと庁内イントラネットで伝えた。期間は未定。知事は「隣県の職員が東京出張で感染したことは、富山県も教訓にしなければならない」と述べた。県主催のイベントは、消毒液の設置や参加者のマスク着用などの対策を取り実施するとした。

 小矢部市は、通勤や通学など石川県との行き来が盛んなことから対策本部の設置を決め、22日午前11時から市役所で会合を開く。市幹部が出席する。総務課は「情報を共有し対応を検討したい」とした。

 南砺市は対策本部の設置を検討。21日に緊急メールなどで石川県内での感染確認を市民に伝え、過剰に反応せず手洗いなどの対策を取るよう求めた。射水市も対策本部などの設置を検討し、上市町は対策マニュアル作りを進めている。

 公共交通機関も感染防止に力を入れる。富山、金沢の両市間などで高速バスを運行する富山地方鉄道は、バス内に消毒液を設置し、乗客にはマスクを無料配布している。21日には「これまでの対策をさらに徹底する」との指示を従業員に出した。あいの風とやま鉄道も駅員のマスク着用や清掃の徹底を続ける。

 22日に金沢市の石川県女性センターで予定されていた環境省シンポジウムは中止となった。森雅志富山、村椿晃魚津、大野久芳黒部、上田昌孝滑川の各市長が出席予定だった。

■どうすれば… 県民警戒

 石川県内で初の感染者が確認されたことを受け、石川、富山両県を頻繁に行き来する人たちは「これまで以上に気を付けたい」と話し、警戒を強めた。

 「ついに近くに来た」。石川県内で働く小矢部市の40代女性会社員は不安を口にする。高校生の息子がIRいしかわ鉄道と直通するあいの風とやま鉄道で通学しており「しばらくは車で送り迎えしたい」。

 あいの風とやま鉄道、北陸新幹線で金沢駅とつながる富山駅では、多くの利用客がマスクを着用。仕事で週1回程度、石川県内を訪れるという富山市の男性会社員(49)はマスク着用や手洗いなど徹底した対策を心掛けており「これ以上どうすればいいのか」と表情を曇らせた。

 射水市の男性会社員(37)は「感染は都会でだけ流行しているものだと思っていた。マスクを手放さないようにするしかない」と語った。

■差別懸念の声 県の懇話会 「正しい知識で行動を」

 県が21日に県民会館で開いた人権教育・啓発推進懇話会で、委員から新型コロナウイルスを理由とするいじめや差別を懸念する声が相次いだ。出席者は「正しい知識に基づいた冷静な行動が重要」と確認した。

 市民団体「アレッセ高岡」の青木由香代表は「ある小学校で外国人留学生を招いた際、子どもを休ませた保護者が何人もいたと聞いた。差別は既に起こっている」と語った。

 会長の竹地潔富山大教授は、看護師が感染した相模原中央病院(神奈川県)の近くに住んでいたとし「現地はパニック状態で、流言が飛び交っている」と説明。「人権や病気について、正しい知識できちっとしておかなければならない」と述べた。

 懇話会では人権教育に関する基本計画の改定案を協議。感染症はHIV(エイズウイルス)など2項目を設けており、県はコロナウイルスなども踏まえた表記にするか検討するとした。

■感染拡大を危惧 県内 宿泊キャンセル1000人

 新型コロナウイルスを巡り、県は21日の県議会県土整備観光委員会で宿泊業への影響を説明した。中国人客のキャンセルが出ているものの現時点で打撃は限定的との見方を示し、「長期化すれば台湾など他地域への波及が懸念される」と先行きを警戒した。

 県によると、3月末までに千人分のキャンセルが出た施設があった。1~3月は県内では中国人客の割合が少ないこともあり、県ホテル旅館生活衛生同業組合や複数の土産物小売業者は聞き取りに「施設間で差はあるが、業界全体として大きな影響に至っていない」と回答した。

 一方、県の担当者は、今後の感染拡大で外国人だけでなく国内の旅行需要が縮小する可能性を示唆。県議からは影響に関する質問が相次ぎ、川上浩氏(自民)は「関係者が集う緊急会合の開催が必要だ」と指摘した。

■入試で特別措置 金沢大

 金沢大は21日、一般入試前期日程で、新型コロナウイルス感染と診断され受験できなかった志願者に対し、大学入試センター試験の成績などによる合否判定か検定料の一部返還を行う特別措置を取ると発表した。

 希望者はいずれかの措置を選ぶことができる。25日午前9時から午後5時までに同大に電話などで連絡し、後日医師の診断書と所定の申請書を提出する。

 対象となるのは医学類を除く全学類。医学類は面接を課すため対象外とした。後期日程の対応は未定。

 富山大は21日時点で救済措置は行わないとしている。