女は産んでも産まなくても地獄。ヘルジャパンを生きるコツ

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「子どもを産んだ方がいいよ」「産まないと後悔するよ」「子育ての喜びをあなたにも知ってほしい」

……などなど。

#女子を困らせる人 今回は、こんな“子育て教”を布教してくる人々への対抗策を考えたい。

■子育て教の人々への対抗策

恋愛・結婚・出産は個人の自由であり、他人が口出しすることじゃない。人には様々な事情や生き方やセクシャリティがあり、それを人に話したくない場合もあるだろう。

だが、いまだに「女は子どもを産むべき」「出産・子育てが女の幸せ」というジェンダーロールを押しつけてくる勢が存在する。

選択的子ナシの私は「キミみたいな人がいるから少子化が進む」と面と向かって言われたこともある。そういう相手には「質問を質問で返すなあーっ!!」返しをキメる。

◇「質問を質問で返すなあーっ!!」返し

「キミみたいな人がいるから少子化が進む」と言われたら「じゃああなたは国のために子どもを作ったんですか?」と質問すると「そういうわけじゃないけど……」と相手はモゴモゴする。

そこで「地球全体では人口爆発によって環境破壊が進み、数百年後に人類は滅亡するといわれてますが、それについてはどうお考えで?」と質問をかぶせると、相手は黙る。

続けて「残された資源をめぐって争いが繰り返される、暴力が支配する世界に現れた暗殺拳……!!」と北斗神拳返しをキメると、相手はビビって去っていく。

ちなみに「人口爆発って?環境破壊って?」と逆に質問されたら「興味があるならググってください」とピシャリと返そう。「丁寧に説明して俺を納得させてみろ」と上から聞いてくる奴に、わざわざ時間を割いてやる必要はない。

◇哲学返し

前回提案した、哲学返しもおすすめだ。「出産・子育てが女の幸せ」的な発言をされたら「“子どもをも、生命をも、その他のことをも真理以上に重視するようなことをするな”とソクラテスは語ってますが、どう思いますか?」と返して「やばい、こいつかしこや!」とビビらせよう。

いろんな哲学者の言葉をストックしておくと便利。「古代ローマの哲学者、アニキウス・マンリウス・トルクアトゥス・セウェリヌス・ボエティウスは語ってますが」と返せば「かしこのうえに、めっちゃ滑舌もいい!」と相手は舌を巻くだろう。

◇“○○の話しかしない人”認定される

毎回書いているが、ちゃんと人の話を聞いてあげる女子が、面倒な人にからまれやすい。なので“○○の話しかしない人”認定されるのがおすすめだ。

「出産といえば、オメガバースって知ってます?」と、BLの話しかしない人になるもよし。「これうちの猫が生まれたときの写真なんですよ」と、猫の話しかしない人になるのも素敵。子キャット様の画像を見せると皆が笑顔になって、世界平和にもつながる。

そこで「猫は老後の面倒見てくれないよ」「猫を飼ってる女は婚期を逃すらしいよ」とか言う奴は吐き気をもよおす邪悪なので、肉体を222分割(ニャンニャンニャン)に刻んでやるといい。

だが、いつもカバンにジャックナイフが入っているとは限らない。なので「レオナルド・ダ・ヴィンチは“結婚とは蛇がいっぱい入った袋に手を入れてウナギを取り出すことを望んでいるようなものだ”と語ってますが」と哲学返しをお見舞いしよう。

続けて「ちなみにダ・ヴィンチは“ネコ科の一番小さな動物、つまり猫は最高傑作である”とも語ってますよ」と猫の話をするといいだろう。

■「選択的子ナシ」を表明する理由

私は4年前に子宮全摘手術を受けたので、「なんで子ども産まないの?」と聞いてくる人に「病気で子宮を取ったんですよ……(小声&伏し目)」と、明菜返しをお見舞いできる。

そうすれば「安易に子どもの話題に触れるべきじゃない」「それはデリカシーに欠ける発言である」と相手に反省させることもできるだろう。もしくは「あ、取った子宮の画像見ます?」とグロ画像返しでビビらせることも可能。

しかし私がそれをせず、「我、選択的子ナシ也」と表明するのは「子どもを産まない選択を批判する方が間違っている」という意見だからだ。

選択的子ナシだと表明すると「産みたくても産めない人もいるのに」と批判してくる人がいる。「産みたくても産めない人もいるのに、産まないなんておかしい」と批判する人は「女は子どもを産むのが自然、産まないのは不自然」と考えており、その価値観こそが産みたくても産めない人を苦しめている。

私は子どもを授からなかった読者の方から「子どもがいなくても幸せそうなアルさん夫婦の姿が励みになった」と感想をよくいただく。産まない選択をした者の存在は救いにもなりうる。それを実感しているから、己のスタンスを明確にしたいと思う。

というわけで「なんで子ども産まないの?」と聞かれたら「子どもが欲しい、という欲求がないから」と返してきた。これぐらいシンプルに伝えた方が「ないものはしかたない」と相手は納得するもの。

そこで「子育てが大変そうだから」「自分には無理だと思うから」と返すと「大丈夫!産んだらなんとかなるよ」「産む前はみんな不安なものよ」と励まされてしまう。なので「不安があるからじゃなく、欲求がないから産まない」と伝えた方がわかりやすい。

「猫を飼うのは大変だし責任も重いけど、飼ったらなんとかなるよ」と言われて「そもそも飼いたくないんで」と返すのと同じである。そもそも飼いたくない人に「飼ったら絶対かわいいよ」「飼わないと後悔するよ」と押しつける人はあまりいないし、それこそ無責任な話だろう。

「私も子ども欲しくなかったけど、産んで本当によかった、あなたも産めばわかる」と言ってくる人もいるが、それはその人個人の体験であり、他人に当てはまるとは限らない。自分と他人は別の人間なのだから。

うちは夫婦共に子どもを望んでいなかったので、子どものいない人生を選んだ。それは我々2人の人生であって、その選択を他人に勧める気も押しつける気もない。

前回も書いたが「他人の生き方を邪魔しないこと」「余計な口出しをせず、ほっておくこと」で多様性社会が成り立つのだ。

多様性社会を目指す私は、子どもを産まなかったことに対する罪悪感もゼロである。「罪悪感を持たせる社会の方がおかしい」という意見だからだ。

「女は子どもを産むべき」というジェンダーの呪いに苦しむ女子は多いし、それが「子育ては女の仕事」「母親は子どものために犠牲になるべき」という呪いにもつながっている。

周りの女子からも「友達や親せきの子はかわいいと思う。でも『赤ちゃんを見ると欲しくなるでしょ』『次はあなたの番ね』『予行演習で抱っこさせてもらったら?』とか言われるのはつらい」との声が寄せられた。

そんなときはBLや猫の話をして乗り切ろう。そして何より、こうした発言をする側が「無意識にジェンダーロールを刷り込まれていないか?」と自問するべきだろう。

■生むも地獄、産まぬも地獄

とはいえ、選択的子ナシの私の意見にイラッとするママさんがいるのはわかる。

我が子のおむつも替えたことないおっさんに「子どもを産まないなんてけしからん、ワガママだ」とか言われたら「こいつの肛門から腸を引っ張り出してやるか、オーエス!」と腕まくりする。

一方、出産や育児で苦労しているママさんが「私はこんなに大変なのに、子ナシはずるい」と思う気持ちはよくわかる。だからこそ、もっと出産・育児しやすい社会に変えるべきだと思うのだ。

日本はママさんたちが血反吐を吐きながら子育てする修羅の国。日本の子持ち女性の睡眠時間は世界一短いともいわれる。

そんな彼女らを少しでもサポートしたくて、私は以下を実践している。

・子どもが泣いたり騒いだりしていたら「大丈夫ですよ!」と笑顔でアピール・電車で子連れママに席を譲る、ベビーカーを運ぶ・新幹線で子連れママに「何かあったら声をかけてくださいね」と声をかける・貧困家庭の子どもの学習支援のための寄付を続ける・誘い控えをしない。夜の飲み会など「子どもがいるし無理かな」と思っても声はかける・子育てや家庭の愚痴を吐き出せる場(女子会)を設ける

ジェンダーギャップ指数121位のヘルジャパンで、女は産んでも産まなくても地獄なのだ。

「女は子どもを産むから」と進学や就職で差別され、産休育休を取っても、ベビーカーで電車に乗っても迷惑がられる社会で「じゃあ子どもを産まない」と選択すると「けしからん、ワガママだ」と責められる。

いざ決死の思いで出産すると、保育所に入れるのは超ハード、働きながら子育てするのは超超ハード、ワンオペ育児で死にそうDEATH!!みたいな地獄で生きる私たち。

だったらせめて、我々女子は助け合っていこうよと言いたい。子持ちも子ナシも「こんな地獄で生きてるだけで偉い!」と認め合って、手をつないでマイムマイムを踊りませんか?

■ジェンダーの檻をぶっ壊し、手を取り合いたい

マーイマーイマーイ♪と踊りながら宣伝するが、新刊『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』が絶賛発売中である。

新刊の解説は、金田淳子さん(BL研究家・社会学研究者)にお願いした。金田さんは

幼少期から「結婚したい」とも「子どもが欲しい」とも思ったことがない

アルテイシア氏の言葉を借りれば、リアルな男が必要ない「完全生命体」、それが私だ

と書いている。

以前、彼女と対談したときに「私、子どもの形状が苦手なんですよ。頭が大きくて等身が低い」「やっぱり少しはかわいく思ってないと、欲しくならないですよ」という率直な言葉に感銘を受けた。

後日、サイン会で出会った読者の女性が「金田さんのあの言葉に救われました……うっ」と涙ぐみつつ「子どもを欲しいと思わないって、堂々と言ってもいいんだって」と話していた。その後も「あの言葉に勇気をもらった」と多くの女性から感想をいただいた。

それぐらい世の女性は「女は子どもを産むベき」という呪いに苦しんでいる。また、その呪いが女性の健康に悪影響を及ぼす場合もある。

新刊にも書いたが、私は子宮全摘手術によって劇的に健康になり、人生の幸福度が爆上りした。

一方「子宮は女性性の象徴」「子宮をとると女じゃなくなる」的な呪いから、手術を拒み続けた結果、症状が悪化する患者さんも多いらしい。その呪いの根っこには「妊娠出産するのが女の価値」というジェンダー観が存在する。

すべての女性の健康と幸福のために、私はジェンダーの檻をぶっ壊したい。そして産みたい人が好きなだけ産めて、産まない人が責められない社会を実現したい。

そのためにマイムマイムを踊りつつ「子持ちも子ナシもめっちゃ偉いじゃん、ヘルジャパン♪」とライムを刻みたいと思う。

(文:アルテイシア、イラスト:若林夏)

※次回の#女子を困らせる人は「体育会系ノリの人」。3/22(日)公開予定です!

新刊『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』発売中!

生涯のパートナーを求めて七転八倒し、オタク格闘家と友情結婚。これで落ち着くかと思いきや、母の変死、父の自殺、弟の失踪、借金騒動、子宮摘出と波乱だらけ。でも「オナラのできない家は滅びる!」と叫ぶ変人だけどタフで優しい夫のおかげで、毒親の呪いから脱出。楽しく生きられるようになった著者による、不謹慎だけど大爆笑の人生賛歌エッセイ。

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