Jリーグは、「ならでは」のルールとして高校生や大学生が学校のチームに在籍しながらJリーグでもプレーできる特別指定選手、ユースの選手がトップチームでプレーできる2種登録の2つがある。
特別指定の選手は2018年からのルールでは獲得が予定されている選手に限るため100%プロ入りが約束されているのだが、問題は2種登録選手だ。
2種で登録される選手は数多いがその後の進路は様々で決してトップチームに昇格できるわけではない。中にはJ3のU-23チームでプレーしたとか、カップ戦に出場なんて言う選手もいるが大多数は大学へ進学することとなる。
そこで今回は「2015シーズンに2種登録」された選手だが4年後の今どうなっているのか調べてみた。
まず、2015年に2種登録された選手は全部で44名いた。
2015年Jリーグ2種登録選手一覧(日付順)
岡野 洵(ジェフユナイテッド千葉) 日付なし
阿部 航斗(アルビレックス新潟) 2/13
藤谷 壮(ヴィッセル神戸) 2/20
和田 昌士(横浜F・マリノス) 2/20
佐々木 匠(ベガルタ仙台) 2/27
野田 裕喜(ロアッソ熊本) 3/6
小島 雅也(ベガルタ仙台) 3/13
間嶋 佑弥(アビスパ福岡) 3/13
斎藤 宏太(アルビレックス新潟) 3/20
大西 聖哉(ジュビロ磐田) 3/27
松原 秀模(セレッソ大阪) 3/27
滝本 晴彦(柏レイソル) 4/3
熊川 翔(柏レイソル) 4/3
浮田 健誠(柏レイソル) 4/3
東 隼也(ヴィッセル神戸) 4/17
山川 哲史(ヴィッセル神戸) 4/17
井上 潮音(東京ヴェルディ) 4/17
大川 圭為(浦和レッズ) 4/24
波多野 豪(FC東京) 5/1
川田 拳登(大宮アルディージャ) 5/1
黒川 淳史(大宮アルディージャ) 5/1
藤沼 拓夢(大宮アルディージャ) 5/1
宮崎 幾笑(アルビレックス新潟) 5/8
長谷川 巧(アルビレックス新潟) 5/8
堀口 皓平(徳島ヴォルティス) 5/15
冨安 健洋(アビスパ福岡) 5/15
齊藤 未月(湘南ベルマーレ) 5/22
森島 司(サンフレッチェ広島) 6/5
真木 晃平(大分トリニータ) 6/19
田中 勘太(ベガルタ仙台) 7/17
山田 晃士(浦和レッズ) 7/24
小木曽 春樹(愛媛FC) 7/24
忽那 喬司(愛媛FC) 7/24
沼 大希(京都サンガ) 8/21
荻野 広大(京都サンガ) 8/21
田上 大地(ロアッソ熊本) 8/21
藤永 大雅(ロアッソ熊本) 8/21
米原 秀亮(ロアッソ熊本) 8/21
礒江 太勢(ガイナーレ鳥取) 8/28
曽我 大地(ガイナーレ鳥取) 8/28
加倉井 拓弥(町田ゼルビア) 9/4
庄司 朋乃也(セレッソ大阪) 9/11
児玉 潤(東京ヴェルディ) 9/11
山本 祥輝(V・ファーレン長崎) 9/18
吉川 虎王達(グルージャ盛岡) 9/18
なお、Jリーグのプレスリリースでは大津高校から3月に野田裕喜がロアッソ熊本に4月に一美和成がロアッソ熊本へ2種登録されたことになっているが、ともに特別指定の間違いなので除外している。
冨安を筆頭に後の代表選手を輩出
高校1年、2年で2種登録されている選手もいるが、このシーズンは“あたり年”と言ってよいだろう。後の日本代表に入る冨安健洋(アビスパ福岡)やU-23代表で主力の齊藤未月(湘南ベルマーレ)、森島司(サンフレッチェ広島)が登録されているからだ。
冨安は2015シーズンに高校2年生ながら2種登録すると天皇杯3回戦町田ゼルビア戦でトップチーム・デビュー。2016シーズンには高校卒業を待たずにトップチーム昇格となった。
冨安と同じように高校2年時で2種登録されたのは波多野豪(FC東京)、長谷川巧(アルビレックス新潟)、米原秀亮(ロアッソ熊本)、齊藤未月がいるが、2019シーズンこのうち4名はJ1でプレー、長谷川も金沢(J2)で存在感を示した。
ユース年代での評価はきちんと意味があるといったところだろうか。
大学進学後Jリーグへ戻れる可能性は?
半面、大学へ進学するなどトップチームへ昇格できなかった選手は21名と約半数に上る。2種登録されても半分はJリーガーになれないのだ。
大学を経て、今シーズンよりJリーグに戻れたのは阿部航斗(アルビレックス新潟)、浮田健誠(柏レイソル)、山川哲史(ヴィッセル神戸)、忽那喬司(愛媛FC)、田中勘太(ベガルタ仙台)とわずか5名しかいない。それも浮田はレノファ山口、田中はカターレ富山と元のユース年代でプレーしたチームではないチームへの加入だ。
確率にすると25%ほどしかJリーガーになれず、さらに半分は元のチームでのプレーではない。
残りの大学経由のJリーガーは高校生年代で2種登録されておらずこの年代での育成は1年、いや1日1日が大事となるといったところだろうか。
また、Jリーガーではなくとも海外や地域リーグでプレーすることが決定しているのも大川圭為、小木曽春樹の2名しかいない。そう考えるとサッカー選手になれたのは1/3である。
また、イレギュラーなケースとして熊川翔(柏レイソル)があげられる。流通経済大学へ進学も途中でいわきFCへ移り、2020シーズンより横浜FCでプレー。いわきFC経由でJリーガーという夢をかなえた格好だ。
サッカー以外の選択肢は?
2006年に柏レイソルで2種登録された山本紘之さんはその後明治大学へ進学、その後日本テレビへ就職しアナウンサーとなった。現在、大学進学以降の就職先などはわからない選手も多いが、サッカーだけが人生じゃない。このように新しい道をみつける者も登場するだろう。
藤永大雅(ロアッソ熊本)はその1人だ。20歳でビーチサッカーへ転向し現在はビーチサッカーでの日本代表を目指している。
2015シーズン2種登録選手のその後(2020/2/20現在)
岡野 洵(ジェフユナイテッド千葉) 2016シーズンにジェフ千葉トップチームへ昇格、大分へ期限付き移籍を経て2020シーズンにジェフ千葉へ復帰
阿部 航斗(アルビレックス新潟) 筑波大学へ進学。2020シーズンよりアルビレックス新潟でJリーガーに。
藤谷 壮(ヴィッセル神戸) 2016シーズンにヴィッセル神戸トップチームへ昇格。
和田 昌士(横浜F・マリノス) 2016シーズンに横浜F・マリノストップチームへ昇格。2017年にレノファ山口、2019年にブラウブリッツ秋田へ期限付き移籍をし、2020シーズンよりSC相模原へ移籍
佐々木 匠(ベガルタ仙台) 2016シーズンにベガルタ仙台トップチームへ昇格。徳島、讃岐、山口と期限付き移籍を行っている。2020シーズンはベガルタ仙台へ復帰。
小島 雅也(ベガルタ仙台) 2016シーズンにベガルタ仙台トップチームへ昇格。町田、金沢と期限付き移籍を行い、2020シーズンはザスパクサツ群馬へ移籍。
間嶋 佑弥(アビスパ福岡) 中央大学へ進学。
斎藤 宏太(アルビレックス新潟) 流通経済大学へ進学。
大西 聖哉(ジュビロ磐田) 中京大学へ進学。
松原 秀模(セレッソ大阪) 大阪産業大学へ進学。
滝本 晴彦(柏レイソル) 2016シーズンより柏レイソルトップチームへ昇格、リーグ戦デビューはまだだが2020シーズンも柏レイソルでプレー。
熊川 翔(柏レイソル) 流通経済大学へ進学も途中でいわきFCへ加入。2020シーズンより横浜FCへ移籍。
浮田 健誠(柏レイソル) 順天堂大学へ進学。2020シーズンよりレノファ山口へ加入。
東 隼也(ヴィッセル神戸) 2016シーズンにヴィッセル神戸トップチームへ昇格。2018シーズンに福島ユナイテッドへ期限付き移籍、2019シーズンに完全移籍で福島へ移り、2020シーズンより東京ユナイテッド(関東1部)へ移籍
山川 哲史(ヴィッセル神戸) 筑波大学へ進学。2019シーズンにヴィッセル神戸へ今度は特別指定されると、2020シーズンよりヴィッセル神戸へ加入。
井上 潮音(東京ヴェルディ) 2016シーズンに東京ヴェルディトップチームへ昇格。レギュラーとして活躍し、2020シーズンも東京ヴェルディでプレー。
大川 圭為(浦和レッズ) 筑波大学へ進学。2020シーズンよりアルビレックス新潟シンガポールへ加入。
波多野 豪(FC東京) 高校2年生での2種登録で、翌2016シーズンも2種登録。2017シーズンよりFC東京トップチームへ昇格。
川田 拳登(大宮アルディージャ) 2016シーズンに大宮アルディージャトップチームへ昇格。群馬、栃木と期限付き移籍を行い、2020シーズンもレンタルでAC長野パルセイロでプレーする。
黒川 淳史(大宮アルディージャ) 2016シーズンに大宮アルディージャトップチームへ昇格。2018シーズンより2シーズンプレーした水戸でレギュラー格に。2020シーズンに期限付き移籍を終えて大宮へ復帰。
藤沼 拓夢(大宮アルディージャ) 2016シーズンに大宮アルディージャトップチームへ昇格。栃木、盛岡、秋田と期限付き移籍先のJ3で結果を残し、2020シーズンに大宮へ復帰。
宮崎 幾笑(アルビレックス新潟) 2016シーズンにアルビレックス新潟トップチームへ昇格。2017、2018シーズンに期限付き移籍をした金沢で活躍し、2019シーズンよりFC東京へステップアップ。
長谷川 巧(アルビレックス新潟) 高校2年時での2種登録。2016シーズンも引き続き2種登録され、2017シーズンよりアルビレックス新潟トップチームへ昇格。2018年に群馬、2019年に金沢と期限付き移籍を行い、2020シーズンも期限付き移籍を延長して金沢でプレー。
堀口 皓平(徳島ヴォルティス) 立命館大学へ進学。
冨安 健洋(アビスパ福岡) 高校2年時での2種登録。2016シーズンに高校卒業を待たずにアビスパ福岡トップチームへ昇格。シント・トロイデン(ベルギー)、ボローニャ(イタリア)と海外で活躍。U-15からA代表まで日本代表に選ばれ続けている。
齊藤 未月(湘南ベルマーレ) 高校2年時での2種登録。2016シーズンも引き続き2種登録されていたが5月にプロ契約へ変更され今も湘南でプレー。U-15~U-23日本代表歴がある。
森島 司(サンフレッチェ広島) 2016シーズンにサンフレッチェ広島トップチームへ昇格。まだ完全なレギュラーではないが、U-18~U-23日本代表歴があり、2019シーズンには日本代表デビュー。
真木 晃平(大分トリニータ) 福岡大学へ進学。
田中 勘太(ベガルタ仙台) びわこ成蹊スポーツ大へ進学。2020シーズンよりカターレ富山へ加入。
山田 晃士(浦和レッズ) 早稲田大学へ進学。
小木曽 春樹(愛媛FC) 大阪学院大学へ進学。2020シーズンよりFC.ISE-SHIMA(東海1部)へ加入。
忽那 喬司(愛媛FC) びわこ成蹊スポーツ大へ進学。2019シーズンに愛媛FCへ特別指定され、2020シーズンより愛媛FCへ加入。
沼 大希(京都サンガ) 2016シーズンに京都サンガトップチームへ昇格。鳥取、テゲバジャーロ宮崎と期限付き移籍を経験し、2019シーズンにSVホルンへ移籍。2020シーズンは日本へ戻り、VONDS市原(関東1部)へ加入。
荻野 広大(京都サンガ) 2016シーズンに京都サンガトップチームへ昇格。讃岐、テゲバジャーロ宮崎、ロンドリーナEC(ブラジル)と期限付き移籍を経験。2020シーズンは京都サンガへ復帰。
田上 大地(ロアッソ熊本) 1993年生まれの選手とは同姓同名の別人。その後の消息不明。
藤永 大雅(ロアッソ熊本) 20歳でビーチサッカーに転向。アヴェルダージ熊本BSに所属。
米原 秀亮(ロアッソ熊本) 高校2年時での2種登録。2016シーズンも引き続き2種登録され、2017シーズンよりロアッソ熊本トップチームへ昇格。2019シーズンに松本山雅FCへステップアップ。
礒江 太勢(ガイナーレ鳥取) 2種登録ながらJ3デビューをすると2016シーズンにガイナーレ鳥取トップチームへ昇格。2018シーズンに松江シティFC(当時、中国リーグ)に期限付き移籍をすると、JFL昇格に導きそのまま完全移籍。2020シーズンに福山シティFC(広島県1部)へ移籍。
曽我 大地(ガイナーレ鳥取) 2種登録ながらJ3デビューをすると2016シーズンにガイナーレ鳥取トップチームへ昇格。しかし、その後出場機会に恵まれず、2019シーズンにFCティアモ枚方(関西1部)、2020シーズンに福山シティFC(広島県1部)と移籍。
加倉井 拓弥(町田ゼルビア) 青山学院大学へ進学。
庄司 朋乃也(セレッソ大阪) 2016シーズンにセレッソ大阪トップチームへ昇格。2017、2018シーズン金沢へ期限付き移籍しレギュラー格も、2019シーズンの大分ではあまり出場機会に恵まれず。2020シーズンに期限付き移籍を終えてセレッソ大阪へ復帰。
児玉 潤(東京ヴェルディ) 桐蔭横浜大学へ進学。
山本 祥輝(V・ファーレン長崎) 日本文理大学へ進学。
吉川 虎王達(グルージャ盛岡) 拓殖大学へ進学。
以上、2015シーズンに2種登録された選手のその後を追った。