獲得まで3年、スカウトは「恋人探し」 鷹中南米スカウトの優良助っ人発掘術

ソフトバンクで中南米担当スカウトを務める萩原健太氏【写真:福谷佑介】

ソフトバンクで中南米担当スカウトを務める萩原健太氏「まずは素材です」

 今季は3年ぶりのリーグ優勝、そして4年連続の日本一を狙うソフトバンクホークス。今や球界を代表する常勝チームとなり、ここ10年間でリーグ優勝5回、日本一は6回と、他球団を圧倒する好成績を残している。

 この好成績を残す原動力となっているのは、もちろん12球団でも群を抜く選手層の厚さ。そして、助っ人外国人たちの働きぶりも特筆すべきものだ。ここ数年はデスパイネを筆頭にグラシアル、モイネロ、スアレス(今季から阪神)、コラスとキューバ人をはじめとする中南米系の選手たちがチームに貢献してきている。

 この中南米系の選手たち、モイネロ、グラシアルらをソフトバンクに招き入れたキーマンがソフトバンクで中南米担当スカウトを務める萩原健太氏だ。現在、宮崎で行われている春季キャンプに訪れている萩原氏に“当たり外国人”を探し当てるスカウティング術を聞いた。

――スカウティングではまずどこを見ていますか?
萩原氏「まずは素材です。今持っているポテンシャルがどれだけ1軍のレベルに通用するか、そこを見ますね。そこに達しない選手は推薦できませんが、モイネロやコラスは間違いなく素材としては日本の1軍レベルに行けると思いました」

――モイネロの場合はどこを評価しましたか?
「初めて見たのは18歳の時です。その時はまだ140キロも出ない投手でした。ですが、カーブが良くて間違いなく通用すると思いました。そして、カウントに関係なくストライクが取れる。外国人であれほどのカーブを投げられる投手はなかなかいません。だからこそ『この子はいいな』と思って見ていました。だんだんとスピードが上がるようになっていき、来日した21歳の時は147、148くらいになっていましたね」

――18歳の時から見続けていたのですか?
「18歳の時から目をつけて見ていましたね。大きくなればスピードもついてくるのかな、と思って見続けていましたね」

――かなり長い期間見るんですね?
「かなり長い間、見極めには時間をかけます。グラシアルの場合も2、3年見続けていましたね。そうしないと、その選手の本当の姿は分かりません」

――ホークスの外国人を見ると性格も優れている印象を受けます。人間性はやはり重視していますか?
「人間性は凄く見ていますね。試合だけじゃなく、ずっと練習も見ています。モイネロの時も代表を見に行って、練習中のキャッチボールとかも見ていました。打者であれば、試合中のときの走っている態度とかもチェックします。特に日本でプレーするのにそういう部分って必要じゃないですか。やらないと首脳陣に使ってもらえなくなるんで」

――どういう所を重視しますか?
「やはり真面目でしっかりやるべきことをやる、練習で手を抜かない選手ですね。選手とは契約する前にしか話しませんが、周囲の人間には色々と聞いて、選手の性格や人間性を知ります。『恋人』を探すようなものですね。やっぱりお付き合いする前に、周りの友達とかに『あの子どんな子?』って聞いたりしますよね。そういう感じです」

打者は「脚力とパワー」、投手は「1番はモイネロのタイプ」

――モイネロやグラシアルはその点も優れていた。
「モイネロは外野でのランニングもきっちりやってましたし、短い距離のキャッチボールでも凄くしっかりやって、変化球の感覚も試していました。そういう1球1球を見ていましたね。適当じゃなかった。試合中に見る姿と、そういうところの姿は全然違うので。パフォーマンスも大事ですけど、練習態度、走る態度は大事ですね。1試合や2試合見ただけでは分からないので何度も見に行きますし、性格を知るためにはやはりどうしても時間がかかりますよね」

――選手と直接話したりはしないのでしょうか?
「契約する前になってですね。それまではあまり選手と話すことはないですね。基本は球場に何回もいって見て、周囲の人にいろいろ聞いて確認します。その時もやっぱり性格の部分の確認は欠かしません。選手と話すのは取りに行こうか、となった段階です。その時にようやく『どうだ?』と。その時にも性格を把握しますけど、大体、イメージしていた通りになりますね」

――打者を見る際はどこを大事にしていますか?
「脚力とパワーですね。中南米の選手はそこの部分が他の国の選手と違うところ。スカウティングする上でも重視します。走れる選手が大事なんです。なんだかんだいってデスパイネもグラシアルも結構走れますから。走れる選手の方が間違いない。走れない選手は守るところが限られてしまう。最低でも普通くらいで走れれば、日本に来て使えるところが増える。遅いとDHしかなくてチャンスが減ってしまいますので」

――投手での大事なのは?
「1番はモイネロのタイプじゃないでしょうか。変化球が多彩でストレートも150キロ以上投げられる投手は世界的に見てもなかなかいないですから。彼は賢いので日本に来てからチェンジアップを覚えたりとか、しっかりこっちで教わった。吸収も早い。ふざけてる時はふざけてますけど、やる時はしっかりやるタイプなので」(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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