JAXAの火星衛星探査計画「MMX」、サンプル採取の目標がフォボスに決定

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宇宙航空研究開発機構(JAXA)で現在進められている「火星衛星探査計画(MMX:Mars Moons eXploration)」では、火星に2つある衛星「フォボス」と「ダイモス」どちらか一方からのサンプル採取が予定されています。今回、MMXの探査目標がフォボスに決定したことがJAXAから発表されました。

■世界初の火星圏往復ミッション、2029年にサンプルを持って帰還の予定

火星に到着したMMX探査機の想像図(Credit: JAXA)

MMXでは探査機を2024年9月に打ち上げ、2025年8月に火星圏(火星とその周辺)へ到着させることが予定されています。MMXでは「はやぶさ」「はやぶさ2」で培われた技術が活かされていて、火星圏到着後は探査機をフォボス表面に着陸させてサンプルの採取などを実施します。サンプル採取などを実施した探査機は2028年8月に火星圏を出発し、打ち上げから5年後の2029年9月に地球へ帰還させる予定で計画が進められています。なお、MMXではイオンエンジンを搭載せず、短時間で速度を大きく変更できる化学エンジンのみが使われます。

はやぶさ・はやぶさ2では小惑星の表面にタッチダウンする一瞬でサンプルを採取しましたが、MMXではフォボスの表面に数時間ほど滞在し、ロボットアーム先端の採取装置を使って地表から2cmよりも深いところにあるサンプルを採取する方法が採用されています。フォボスには隕石の衝突によって火星表面から吹き飛ばされた物質が降り積もっているとみられており、MMXによって火星由来のサンプルが採取される可能性も示されています。

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火星の衛星フォボスとダイモスは、一見すると小惑星のような見た目をしています。その起源についてはもともと別の場所で形成された小惑星が火星の重力に捉えられたという説と、火星で生じた大規模衝突の破片が集まって形成されたとする説が提唱されています。MMXでは、フォボスで採取したサンプルを地球に持ち帰り分析することで、この議論に決着を付けることが一つの目標となっています。

NASAの「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」が撮影したフォボス。MMXではこの表面のどこかに着陸する(Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)

また、地球の水は太陽系の外側から飛来した小天体の衝突によってもたらされたと考えられていますが、仮にフォボスとダイモスが火星に捉えられた小惑星だった場合、地球に水をもたらした小天体の生き残りである可能性があります。もしもフォボスが火星への天体衝突にともなう破片でできていたとしても、水をもたらした小天体の破片が含まれているかもしれません。いずれにしても、MMXが採取して持ち帰るフォボスのサンプルからは、地球の水の起源につながる情報が得られるのではないかと期待が寄せられています。

さらに、MMXは、世界で初めて火星圏から探査機を帰還させるミッションでもあります。火星有人探査では太陽フレアにともなう宇宙飛行士への放射線の影響が懸念されていますが、MMXでは搭載する放射線環境モニタを使って放射線量を計測することで、将来の有人探査に向けた技術開発に貢献することも予定されています。

JAXAをはじめ、NASA、欧州宇宙機関(ESA)、フランス国立宇宙研究センター(CNES)、ドイツ航空宇宙センター(DLR)も協力する国際共同ミッションであるMMX。日本の火星圏探査としては、1998年に打ち上げられたものの、火星周回軌道への投入はかなわなかった火星探査機「のぞみ」以来のミッションとなります。

Image Credit: JAXA
Source: JAXA/ 文部科学省
文/松村武宏