ハイピッチの西武松坂、慎重に歩を進めるロッテ佐々木朗 “両怪物”の現在地は

ロッテ・佐々木朗希(左)と西武・松坂大輔【写真:宮脇広久、荒川祐史】

松坂は本番さながらに65球のブルペン投球、25日の練習試合に登板予定

 今季のパ・リーグの“新旧・目玉コンビ”、西武の松坂大輔投手とロッテのドラフト1位ルーキー・佐々木朗希投手が23日の練習試合(高知・春野)の前に、相次いで同じブルペンに入って投球した。

 「マジかよっ!?」。テレビ、新聞のカメラマンが一斉に駆け出した。佐々木朗がキャッチボールを行っていたサブグラウンドを見下ろす坂の上に、突然松坂が姿を現したからだ。

 日頃から「他人の投げる球を見ることが無性に好き」と言っている松坂だけに、最速163キロの片鱗を覗きに来たというわけか。「平成の怪物」と「令和の怪物」の歴史的接触かと騒然となったが、松坂はそのままウエートトレーニング場へ向かってさらに坂を上っていき、結局2人は前日に続いてニアミスに終わったのだった。

 年齢では松坂が21歳も上。横浜高時代に甲子園春夏連覇を達成し、特に夏はPL学園との準々決勝で延長17回250球完投勝利、2日後の京都成章との決勝ではノーヒットノーランまで達成した松坂と、夏の岩手大会決勝で監督の方針により故障予防を理由に登板を回避しチームは敗退、千載一遇の甲子園のチャンスを逸し全国的に物議を醸した佐々木とでは、イメージがあまりに対照的だ。それでも、いま野球ファンに一挙手一投足を注目される存在であることに、変わりはない。

 まず、中日に在籍した昨季、右肩を痛めて1軍登板がわずか2試合に終わったベテランは、予想をはるかに超えて順調な仕上がりぶりを見せている。この日は、捕手を座らせ、ワインドアップとセットポジション、球種もカーブ、スライダー、チェンジアップ、カットボールを織り交ぜ、本番さながらに65球を投じた。

 25日の韓国・斗山との練習試合(宮崎サンマリン)で先発として今季初の実戦マウンドを踏む予定。西口投手コーチは「順調でしょう。内容はそこまで重視しない。打者に対してどこまで投げられるか。開幕ローテ入り? もちろん、そこを目指してもらわないと。結果を出していってほしいし、本人も結果を求めてやっていくと思う」とうなずいた。

 西武はパ・リーグ連覇こそ達成したものの、投手陣は手薄でチーム防御率が2年連続リーグワースト。松坂にも割って入る余地は大いにある。

佐々木朗は約15メートルの距離で初めて捕手を座らせて投球

 一方の佐々木朗は、慎重の上にも慎重を期した調整ぶりだ。この日はキャンプイン以降、5度目のブルペン入りで、初めて捕手を座らせたが、並みいる報道陣は立ち入り禁止。ブルペンが手狭なこともあったが、吉井投手コーチは練習試合終了後、「皆さん(報道陣)には迷惑をかけたが、練習のレベルを1つ上げたので集中させたかった」と意図を明かした。

 しかも、捕手が座ったのはホームベース上で、正規の距離より短かった。本来、ホームベースの五角形の先端から投手板の縁までは18.44メートルと定められているが、吉井コーチは「今日は15メートルくらいじゃないかな。とにかく気持ちよく投げてもらうことが目的。距離が短い方が、ストライクを取るのが簡単ですから」と説明した。「距離が短いので、あれはピッチングではありません」と、細かく刻む調整法だ。

 開幕に間に合わせるつもりは毛頭なく、5月26日に始まる交流戦で1軍デビューできれば御の字、といったムードである。

 それでも、超人的な球威はキャッチボール程度でも周囲を驚かせている。190センチ、85キロの体は、テレビなどで見るより骨太の印象を与え、平均的な高卒ルーキーのそれではない。

「あれなら、甲子園でバンバン投げても壊れることはなかったんじゃないの?」と関係者は首をひねることしきり。辛口で鳴る野球評論家の張本勲氏も、23日に日出演したTBS系テレビ番組「サンデーモーニング」で、これまで見てきた高卒ルーキーで「速さなら尾崎(行雄=浪商→東映)、2番目に佐々木を挙げます。163キロと言ってるけど、下半身鍛えたらもっと出ますよ。3番目が大谷。4番目が松坂」と高く評価した。

 2人の怪物が投げ合うシーンは、いつ実現するのか。そして、松坂が貫録を見せるのが先が、それとも佐々木朗が一気に世代交代を印象づけるのだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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