障害超えた憩いの場、川崎に 自閉症児支援者ら開設

完成した「くるみのおうち」を紹介する太田さん

 自閉症など発達障害のある子どもやその家族に安心して過ごしてもらうための憩いの場が今月、川崎市中原区に誕生した。自閉症児支援に取り組むNPO法人が、築50年の空き家をリフォームして開設。障害の有無にかかわらず誰でも利用でき、交流を育む地域の居場所として機能させる構想を思い描く。着想から丸2年、掲げてきた「誰もが自分らしく暮らせる社会の実現」へ、新たな一歩を踏み出した。

 クリーム色の明るい壁に囲まれたリビングで、みんなが食事をしながら語らう。庭先では、焼き芋作りやバーベキューを楽しめる。疲れたときは、いつでも和室で寝転がっていい。同区上平間に構える「くるみのおうち」。誰もが気軽に立ち寄れる地域交流の場として、8日にオープンした。

 「明るい未来はきっと来る!」。そんな思いから名付けられたNPO法人「くるみ─来未」は2014年に設立。発達障害や知的障害のある子どもが社会とつながり、より豊かに暮らしていけるよう、月1回ほど弁当作りやハイキングなどのイベント、保護者向けのセミナーを催してきた。

 くるみにはこれまで活動の拠点がなく、「初めての場所や公共施設に足が向かない当事者がたくさんいる課題に直面した」と理事長の太田修嗣さん(43)。自身も父子家庭で自閉症の長男・直樹さん(19)を育ててきたこともあり、「息子をはじめ、皆がありのままでいられる場を」と、拠点を兼ねた居場所づくりに着手した。

 18年春から先行事例を調査し、物件探しを始めた。見つけたのは築50年の2階建て一軒家。大規模な改修が必要だった。DIY(日曜大工)で壁紙や床板を張り替え、部屋を隔てる壁を撤去して広々とした空間をつくるなど、支援者ら延べ120人の協力で完成にこぎ着けた。

 8日午前には開所式が行われ、支援者らが集まって完成を祝福した。作業を手伝った直樹さんもあいさつ。「くるみのおうちの役に立てるようになりたい」と意気込んだ。同日午後から2日間にわたって行われた見学会には、およそ120人もの親子連れらが訪れた。

 今後は月1回程度イベントを行い、徐々に活動の幅を広げる。将来的には児童虐待や不登校の子どもを一時保護するシェルターの役割を担うことも目指しており、太田さんは決意する。「さまざまな立場に置かれた人が生き生きと暮らせる場所を、地域の方々と共につくり上げていきたい」

 くるみには常勤スタッフがおらず、事業拡大に必要な人件費や設備費を捻出するため、寄付を募っている。詳細はくるみのホームページ(http://kuruminaoto.org/)。問い合わせは、メール(kurumi.naoto@gmail.com)で。

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