神奈川県内初「子どもホスピス」 2021年夏、横浜に誕生

横浜市金沢区に開所予定の「子どもホスピス」のイメージ(同市提供)

 難病の子どもが、家族と安心して楽しく余命を過ごせる療養生活支援施設「子どもホスピス」が2021年夏にも、横浜市内に誕生する。かつて次女を脳腫瘍で亡くした田川尚登さん(62)がNPO法人を立ち上げ、資金集めにも奔走。行政が土地を無償で貸与し、民間が設置・運営する形式で、「夢のような話」(田川さん)を実現させた。田川さんは「横浜型のモデルとして全国に普及させたい」と意気込んでいる。

 建設予定地は、市が所有する市立大学男子学生寮跡地(同市金沢区六浦東)。

 約730平方メートルの土地を市が30年間、無償で貸し出し、田川さんが代表理事を務めるNPO法人横浜こどもホスピスプロジェクトが建設、運営する。

 ホスピスは2階建て。1階に地域交流や遊びの場、食堂などを、2階には四つの個室と、家族で一緒に入浴できる大きめの風呂を設ける計画だ。開所は21年夏ごろを予定している。

 市が今夏行った整備運営事業者公募に、同法人のみが応募。選定委員による審査を経て、決定した。市は開設から5年間、看護師の人件費として上限500万円を補助する。

 子どもホスピスは英国が発祥。欧州では、難病などを患いながらも日々、成長する子どもたちに遊びや学びのプログラムを提供、家族と一緒に楽しい時間を過ごす場として根付いている。一方、日本には大阪の計2カ所しかないという。

 田川さんは1998年、当時6歳だった次女を亡くして以来、小児医療支援活動を続けてきた。横浜での子どもホスピス開設に向けて、17年には同法人を設立し、チャリティーコンサートを開催するなど協力を呼び掛けた結果、寄付金は3億円を超えた。

 「娘のおかげでさまざまな人々と出会い、見えない力に引っ張られ、歩んできた。やっと、ここまできた」と田川さん。娘からの「宿題」は解決までこぎ着けたが、同時にここからがスタートとの思いも抱く。

 行政が無償貸与した土地に、民間が建て、運営もする子どもホスピスは全国初といい、田川さんはここをモデルに、国内での普及につながればと願う。「企業や市民、大学などに支えてもらいながら、子どもと家族が豊かな時間を過ごす場をつくりたい」。目指すは地域が誇る施設だ。

 同法人は23日午後2時から、チャリティーコンサートを、はまぎんホール・ヴィアマーレ(同市西区)で開く。ピアニスト斎藤守也さんが演奏を披露し、小児科医で文筆家の細谷亮太さんが「子どものいのち」をテーマに講演する。収益は子どもホスピス設立準備資金として活用する。前売り3千円、当日3500円。

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