【レビュー】白夜の世界にめくるめく極彩色の恐怖が踊り狂う―『ミッドサマー』

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ホラー映画『ヘレディタリー/継承』で、トラウマ級の恐怖体験をさせてくれたアリ・アスター監督。

今回は、スウェーデンの自然宗教を崇拝するコミュニティを訪問した主人公たちが見舞われる異常体験を描く

当初から訪問先の場に満ちたカルト色に戸惑いを隠せなかった訪問者たちは、90年に1度開催される夏至祭において、問答無用に決定的かつ衝撃的な出来事を目撃する。

その後も、この奇祭を大学の論文の題材にしようと気持ちを何とか切り替えるが、じわじわとコミュニティの底無し沼にズブズブと足をとられていく主人公たち。

ホラー映画にありがちな夜や暗闇の場面ではなく、白夜の明るい日中の世界が延々と続く中で展開していく狂気――

人々は特に怒りを見せるでもなく微笑を漂わせて優しく接してくれるし、祭りを彩る衣服や花飾りやダンスは華やかで眩しいほど鮮やか。

その湿気のない乾いた狂気は、人間関係のもつれや不信、すれ違いを確実に絡め取って増幅していく。

監督は良い意味で完全に頭のネジが飛んでいる。

暗がりに隠れた恐怖ではなく、明るさに照らされた恐怖さえもこちらの心に刻み込んでくるとは・・・ホラーの才能が卓越しすぎていて、本当に呆れるほど。

最後にもう1つ、カップルで鑑賞するのはなかなかキケンなのでその場合はそれなりの覚悟を。

『ミッドサマー』 あらすじ

家族を不慮の事故で失ったダニー(フローレンス・ピュー)は、大学で民俗学を研究する恋人や友人と5人でスウェーデンの奥地で開かれる“90年に一度の祝祭”を訪れる。美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい住人が陽気に歌い踊る楽園のように思えた。しかし、次第に不穏な空気が漂い始め、ダニーの心はかき乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖……それは想像を絶する悪夢の始まりだった。

■脚本・監督:アリ・アスター
■出演:フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー、ウィル・ポールター、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー 他
■製作:パトリック・アンディション、ラース・クヌードセン

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