社説:辺野古軟弱地盤 科学データ考慮せぬとは

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 国が米軍新基地の建設工事を続ける沖縄県名護市辺野古の海で、海底の地盤が従来の政府の説明よりさらに軟弱なことを示す新たな調査データの存在が明らかになった。

 安倍晋三政権は海底の地盤について「海面下70メートルより深い部分にくいを打ち込めば強化できる」としていたが、データは70~90メートルの層でも軟弱な地点があることを示している。

 岩屋毅前防衛相は「その地点の調査はしていない」と国会で述べていた。

 実際には、データは調査委託した業者から防衛省に報告され、防衛省は昨年3月に国会に提出した報告書の巻末に英文資料として掲載していた。

 政府は昨年12月、軟弱地盤の強化を含めた総工費の見直し額を公表したが、このデータの存在には言及していなかった。

 基地建設のために不都合な事実を伏せ、前防衛相は国会で虚偽答弁をしていたことになる。

 選挙で繰り返し示された民意も、科学的なデータも顧みようとしない。基地が重要なら安全性に目をつぶるわけにはいかないはずだ。

 河野太郎防衛相は「業者が調査船上で簡易な方法で調査した」としてデータを考慮に入れない姿勢を示している。それならなぜ国会提出した報告書に盛り込んだのか。

 調査は国内最大で最先端の技術を持つボーリング調査船で行われた。河野氏は「簡易な方法で信頼できない」などと否定的に見るが、国の責任で行われた調査である。疑わしいデータが出たら再調査するのが筋ではないか。

 そもそも安倍政権は軟弱地盤の存在そのものを長く伏せていた。2016年のボーリング調査で地盤の強度が限りなくゼロを示す数値が出たのに公表せず、沖縄県に埋め立て許可申請を出していた。

 「マヨネーズのような地盤に構造物を建設するつもりなのか」。京都市から10年前に沖縄に移住した土木技術者の北上田毅さん(74)は18年、情報公開請求で引き出した数値を目にして、仰天したと振り返る。

 国は近く、軟弱地盤の改良を含めた基地の設計変更を県に提出するが、改良の対策はあくまで深さ70メートルまでにとどめる方針だ。ただ地質や地盤の専門家グループは、このまま建設すれば構造物の安全性は国の設計基準を満たさず崩壊する可能性があると独自試算を示している。

 沖縄県は設計変更を認めない方針だが、当然だ。9300億円に膨らむ総工費はすべて国民の税金である。沖縄県だけの問題ではない。

 基地建設を巡っては、国が県に出した埋め立て海域のサンゴ移植の申請を県が留保していることについて、江藤拓農水相が早急に認めるよう県に異例の勧告をした。国と自治体は対等なはずだ。同じことを他県にするだろうか。

 都合の悪いデータを隠蔽(いんぺい)するのは、これまでも森友・加計学園や「桜を見る会」の問題で繰り返されてきた。安倍政権の体質が問われている。