がん告知の衝撃「子の成長見られない…」 治療の苦しみ「ご飯がサビのよう」 外部講師が「いのちの授業」 

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がんになった経験を6年生の児童に伝える野田真記子さん。患者仲間だった故上水流政美さんのスライドも使いながら、命の大切さを訴えた=3日、那覇市立真地小学校

 がん経験者らでつくる鹿児島県のNPO法人がんサポートかごしま副理事長で、乳がんを患った野田真記子さん(49)による「いのちの授業」が今月初旬、那覇市立真地小学校であり、6年生ががんの原因や治療法、命の大切さなどについて学んだ。国が全国展開を目指す学校の「がん教育」で、重要な柱となるのが野田さんのようながん経験者や医療者ら「外部講師」の活用だ。沖縄県内でもがん教育の本格導入に備え、2020年度から講師養成に動きだす。(学芸部・新垣綾子)

 真地小での授業は、がん教育について研究する琉球大学医学部保健学科の照屋典子教授の仲介で実現。6年生2クラス計約70人は、事前にがんの基礎知識を学習し、講師への質問を書き出して臨んだ。

 野田さんは、児童の質問に答える形で話を展開した。41歳で右乳房に2センチほどのがんが見つかり「夏の暑い日だったのに、体の震えが止まらなかった」「息子たちの成長を見られなくなってしまうと思った」と告知時の衝撃を振り返った。

 脱毛や手足のしびれ、「ご飯がサビのような味に感じる」味覚障害など、治療の副作用に苦しんだが、定期通院中の現在は「右手に重たい物を持たないように心掛けるぐらい」と不自由なく暮らしているという。「人間の死亡率は100%。いつ死ぬか分からないけれど、その時まで一生懸命生きていくことが大事。今しんどくても、成長したらいろいろな世界があって、支えてくれる仲間がいる」と呼び掛けた。

 授業後半では、同法人の元メンバーで胃がんを患い2012年に亡くなった上水流(かみづる)政美さんを紹介。上水流さんが残した「未来に生きるあなたたちに、いのちのバトンタッチをします」とのメッセージも読み上げた。

 児童の一人、糸数晴菜(はな)さん(12)は「病気になっても明るく生きる野田さんや、亡くなった後もいろいろ教えてくれる上水流さんはすごいと思った。つらい気持ちの人がいたら、手を差し伸べられる人間になりたい」と話した。

 がん教育は中学校、高校の新学習指導要領に盛り込まれ、20年度の小学校を皮切りに順次本格スタートする。同法人のメンバーは10年度から、鹿児島県内外の学校を回って授業を担当。文部科学省が外部講師の活用を推進する中、全国でも先進的な取り組みとして注目されている。

 沖縄県内では19年度、医師や教育・行政関係者、がん経験者らでつくる連絡協議会が立ち上がり、教員向けの研修会や向陽高、具志頭中をモデル校に公開授業が行われた。

 20年度以降は小中高から新たなモデル校を1校ずつ選ぶほか、全国がん患者団体連合会の協力を得て、外部講師の養成プログラム策定や研修会の実施を予定している。

 連絡協委員長で、琉大医学部付属病院の増田昌人がんセンター長は「将来的には研修受講者をリスト化し、要請があった学校とマッチングしてはどうか」と見据える。

 

(写図説明)がんになった経験を6年生の児童に伝える野田真記子さん。患者仲間だった故上水流政美さんのスライドも使いながら、命の大切さを訴えた=3日、那覇市立真地小学校