なぜ鷹コラスの“亡命騒動”は起きたのか? モイネロ、グラシアルらと異なる背景

ソフトバンクのオスカー・コラス【写真:藤浦一都】

時間をかけて人間性も調査するが、コラスはトライアウトの合格者だった

 新年早々、降って湧いたソフトバンクのオスカー・コラス外野手の亡命騒動。メジャーリーグ挑戦を目指してキューバを出国し、消息不明になり、現在はドミニカ共和国に滞在している。保留者名簿に記載されながら来日しないコラスに対し、ソフトバンクは制限選手としてNPBコミッショナーに申請し、19日にNPBから公示された。

 アメリカとキューバの関係上、現在は、MLB挑戦の道筋は亡命しかないキューバ人選手たち。ホークスファンの中にはモイネロやグラシアルといったチームに不可欠な助っ人が“第2のコラス”とならないか、と不安を覚えている人もいるのではないだろうか。

 ただ、少なくとも、現時点でそのリスクは限りなく低いようだ。ソフトバンクの中南米担当スカウトを務める萩原健太氏によれば、モイネロやグラシアルと、コラスでは獲得に至るまでの経緯がいささか異なるというのだ。

 キューバをはじめ、ベネズエラやドミニカなどで活動する萩原氏。中南米の国でスカウティングを行う際、基本的には1人の選手を獲得するまでに2、3年という長い歳月を要し、その選手の実力やポテンシャルはもとより、選手の性格や人間性などもしっかり調査する。試合だけでなく、練習をどのような姿勢で行っているかなども萩原氏がその目で見て確認する。

 それだけでなく周囲の人間にも綿密に話を聞き、その選手が一体、どんな人間性、性格なのかを徹底的に調査するという。「真面目でしっかりやるべきことをやる、練習で手を抜かない選手」を重視し、実力と性格面を兼ね備えている選手が、初めてソフトバンクの助っ人の候補として推薦される。

トライアウト合格のコラスは内面を把握する前段階で入団した

 モイネロやグラシアルもそうやって萩原氏が見極めた上で獲得に漕ぎ着けた選手。21歳でソフトバンクに入団したモイネロは18歳から注目し、グラシアルも2年から3年間、チェックを続けた上でようやく獲得に至った。2人とも真面目な選手で、しっかり者だという。

 一方で、コラスはソフトバンクが行ったトライアウトに合格して入団した選手。萩原氏も注目はしていたものの、人間性や内面の部分を把握する前段階で入団したのだという。

 結果的に、モイネロやグラシアルに比べるとコラスは若く、人間性でも子供っぽいところがあったという。萩原氏も「周りに影響されやすいところがありました。周りの人間やエージェントにオイシイ話をされて、そそのかされてしまったところがあるのかもしれません」と分析している。

 キューバ人選手と契約する際には切っても切れない亡命のリスク。それでも、モイネロやグラシアルに関しては、そのリスクはさほど高くなさそうだ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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