落胆「心が折れた」  原告側「国の責任忘却」 原爆症訴訟・最高裁判決

記者会見で「心が折れた」と話す内藤さん(右)=東京、参院議員会館

 経過観察での認定には特別な事情が必要-。長崎、広島で被爆した女性3人が原爆症と認めなかった国の処分の取り消しを求めた上告審判決で、最高裁第3小法廷は25日、観察中も医療が必要な状態だとする原告の主張や証拠をことごとく退けた。「ここは最高じゃなく、最低裁判所だ」。期待を胸に判決に臨んだ原告、支援者らは唇を震わせた。

 「不当判決」。最高裁から重い足取りで出てきた原告・弁護団が正門前でそう記された紙を掲げると、支援者は落胆した。原告の中で1人だけ判決に立ち会った広島市の内藤淑子さん(75)はか細い声で「いい結果でなく、残念です」。支援者と抱き合い、涙をこぼした。
 提訴から約9年。家族や支援者らに支えられ、認定訴訟を闘ってきた。記者会見では「皆さんに申し訳ない」と何度も口にし「本当に心が折れた」と心境を吐露。今後のことを記者から問われると「もっと頑張れるなら頑張りたい。国にはまだ言いたいことがある」と声を振り絞った。
 弁護団からは判決に対する批判の声が噴出した。樽井直樹弁護士は「抽象的内容で恥ずかしい判決文。手当の制度論に終始し、国の責任を忘却している」と断じた。
 判決に立ち会った長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)の田中重光会長(79)は「最高裁も被爆者を見捨てたのか。判決の影響は大きい」とつぶやき、経過観察のハードルが上がったことを危惧した。

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