原爆症認定訴訟 経過観察「特別な事情必要」 最高裁初判断 原告3人敗訴

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判決を受け「残念です」と涙を拭う内藤さん(中央)=東京、最高裁判所前

 原爆の放射線で病気になった被爆者が病状を経過観察している場合、原爆症と認められるかどうかが争われた3件の訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)は25日、「病気の悪化や再発の恐れが高いなど、経過観察自体が治療に不可欠で、積極的な治療行為の一環と評価できる特別な事情が必要」とする初判断を示した。

 その上で、原告3人について「特別な事情は認められない」と指摘。原爆症と認定しなかった国の処分を取り消すよう求めた請求を退け、原告の敗訴が確定した。裁判官5人全員一致の結論。
 原爆症認定の要件は「原爆放射線に起因したものであること(放射線起因性)」「現に医療が必要な状態にあること(要医療性)」の二つ。最高裁は、要医療性について初めて統一的な見解を示した。
 原告は広島で被爆した内藤淑子さん(75)、長崎で被爆した高井ツタヱさん(84)と女性(82)の3人。白内障や慢性甲状腺炎にかかり、いずれも経過を観察していた。それぞれの二審判決では、要医療性について広島、名古屋高裁が認めた一方、福岡高裁は認めず、判断が割れていた。
 最高裁判決は、経過観察が要医療性に該当する「特別な事情」について、病気の悪化や再発の可能性、悪化・再発した場合の結果の重大性、経過観察の頻度、医師の指示内容などの条件を示した。「事情を総合考慮して個別具体的に判断すべきだ」と指摘し、3人の状況は病状の悪化などがないか確認している程度で、積極的な医療行為の一環と言えないと判断した。
 一方、宇賀裁判長は補足意見で「疾病の状況の変化や事情の変更により、今後要件を満たす可能性もある」と今後の原爆症認定に含みを持たせた。
 判決を受け、全国原告団は「被爆者に手厚い援護をするという被爆者援護法の趣旨からすれば経過観察は重要な医療行為。最高裁は被爆者の当然の訴えに耳を貸さず、国の主張を追認した」とする声明文を発表。厚生労働省健康局総務課は「国の主張が認められたと認識している。今後の認定制度については、関係省庁と判決内容を精査し、適切に運用したい」とコメントした。