賀来賢人×山本舞香「死にたい夜にかぎって」インタビュー “男と女”の6年に及ぶ波乱の同棲生活に「私にしかできない役だ」

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賀来賢人×山本舞香「死にたい夜にかぎって」インタビュー “男と女”の6年に及ぶ波乱の同棲生活に「私にしかできない役だ」

Webサイト「日刊SPA!」で驚異的なPV数を誇る連載エッセーを小説として再構築した「死にたい夜にかぎって」(扶桑社)。原作者・爪切男(つめきりお)さんの実体験を基にした本作は、幼くして母親に捨てられた男・小野浩史が、人生最愛の女性・橋本アスカと過ごした6年間を中心に、さまざまな女性たちに振り回され続けた“ろくでもない半生”を描いた、切なくも笑える作品です。

このたび主人公・浩史役に賀来賢人さん、浩史が愛した女性・アスカ役に山本舞香さんを迎え、実写ドラマの放送がスタート。高校時代に「君の笑った顔、虫の裏側に似てるよね」と言われ、この日を境にうまく笑えなくなった浩史と、“唾を売って”生活しているアスカを演じるお二人は、この物語をどのように受け止めているのか――。作品の見どころや役への印象をお聞きしました。

■賀来賢人&山本舞香、互いに「全部受け入れる」?

──クランクインから5日後というタイミングですが、共演されてみていかがでしょうか。

賀来

「僕、現場では女優さんとあんまり話さないんです。でも舞香ちゃんとはよく話してます。すごく今回の現場に集中してきてくれるし、サバサバしているので、俳優さんといるような感覚です」

山本

「よく言われます~!」

賀来

「お芝居の話ももちろんするし、仕事の話や、プライベートの話もします。最近の芸能界の若い子たちの事情とかも聞くし(笑)」

山本

「(笑)」

賀来

「この2人の関係性が近い方がいいので、なるべくフラットに話をしています。すごく面白いです」

山本

「私は、最初は怖い人なのかなって思っていて…」

賀来

「なんで?(笑)」

山本

「全く笑わないんですよ。以前、賀来さんにも話したじゃないですか?」

賀来

「まぁね(笑)」

山本

「でも、眼鏡を取ってこういう格好をすると賀来賢人さんなんですけど、眼鏡をかけてダサい服を着た瞬間、浩史になるんです。だから(愛犬を愛でるように)『わー! よしよし!』ってやりたくなるんですけど、眼鏡を取ると賀来さんに戻るので…」

賀来

「怖い?」

山本

「怖い(笑)」

賀来

「どんだけ怖いのよ。やだよ~(笑)」

山本

「だから、すぐ『すみません、お疲れさまでしたっ!』ってあいさつしちゃいます(笑)」

賀来

「うそでしょ~(笑)」

山本

「賀来さんはオンとオフというか、役と普段の切り替えがすごいんです。リハの時から眼鏡をかけたり衣装を着たりして、やりやすい環境を作ってくださって。でも眼鏡を取ると『あの賀来賢人さんだ…』ってなって…」

賀来

「(笑)」

山本

「だからすごく楽しいです。あと聞き上手な方なので、私がいろんな話を『わーーー!』って一気に話しても『あー。分かる』って言ってくださったり」

賀来

「俺も一緒だからね(笑)」

山本

「共感しながら話を聞いてくださるというか。話をして『それって違うじゃん』って言われると『あ、もういいです…』って思っちゃうけど、互いに全部受け入れながら話してくださるから、すごく話しやすいです」

賀来

「うん、全部受け入れる(笑)」

■「『もっともっとアスカを自分に入れたい』って、こんなふうに感じたことは今までなかったです」(山本)

──本作への出演にあたって、賀来さんは「いい予感しかしません」、山本さんは「気合入ってます!」と意気込んでいらっしゃいましたが、撮影がスタートした今、あらためてこの作品についてどのように感じていますか?

賀来

「さえない男と、とてもオープンで元気だけど決して心が強いわけではない女性という、全く相反する2人の話なんです。“ラブストーリー”という分かりやすいものっていうより、“男と女”の話だなと思って。すごいドラマがあるわけでもないし、分かりやすい何かが起きるわけでもないんだけど、2人のやりとりで泣けたり笑えたりする物語です。いろんな要素が詰まっているので、それをドラマ化するというのが、自分の中では今までの日本では見たことのない作り方だなって思いました。自分がやったことのないものだし、プラス、実は一番やりたかったことでもあったりして。監督も面白い方ですし、以前からお付き合いのある方だったので、『ぜひやらせてください』とお返事しました」

山本

「最初にお話をいただいた時に、今の自分がやるべき作品だなって思ったんです。今年で芸歴10年目になるんですが、こういう役はやったことがなかったし、自分の経験としてすごくやってみたい作品だなと思いました」

──浩史、アスカという役を、それぞれお二人はどのように捉えていますか?

賀来

「アスカがうつ病になってから、浩史はアスカに首を締められたり、いろいろなことがあるんですけど、2人にとってはディープで暗くなっちゃうようなことも、浩史はすごくポジティブに捉えるんです。『ま、いっか』って乗り越えられるのが彼の魅力だと思っていて。その『ま、いっか』っていう部分に、彼のすべてが集約されている気がします」

山本

「アスカはすごく明るい子で真っすぐなんだけど、普通と思っていることが周りの人からしたら普通じゃなくて。例えば唾を売ってたりとか…。そんな中、浩史が頑張っているのを見て『ちゃんと仕事をしよう』って頑張るんだけど、働き始めたことでうつ病になってしまって。そこから浩史と一緒に治していこうとするんだけど、『自分を支えているせいで浩史が苦しんでるんじゃないか』『自分と離れた方が浩史は幸せになれるんじゃないか』って、そういう思いから首を締めてしまうんじゃないかなって。私はそう感じてるんですけど…。難しい役だけど、笑う時は笑うし、かわいらしい女の子で、本当に浩史のことを好きなんだろうなと思います」

──そんな浩史、アスカという役に、共感する部分はありますか?

賀来

「よく監督とも話すんですけど、浩史はいつも『どうせ俺なんて』っていうところから入るんです。そこがアスカと出会うことで変わっていく部分でもあるんですけど、常にそういう空気をまとっていて。でも人って自信があるように見せていても、自信がないじゃないですか。不安とかって誰にでもあるものだし、すごく人間らしいキャラクターだなと。あと、アスカにどれだけ首を締められようが、どれだけひどいわがままを言われようが、すべてを受け入れるんです。アスカに浮気されたら、自分は風俗に行って『これでおあいこだ』って(笑)。そういうところはよく分からなかったりもするんですけど(笑)、ちゃんと人を許せる人だなって。ちゃんと人と向き合えるのがうらやましいです。自分に似ているというよりは、強い人だなって思います。ピュアですてきな人なんだなって、演じながら感じています」

山本

「アスカが抱えるような心の病気のイメージがなんとなく分かるからこそ、今の自分がやるべき作品だなって思ったんです。手が震える、自分じゃない自分がいる、人を殺したくなる…。そういううつ病の症状も自分でしっかりと演じたいなって思ったし、声を掛けていただいた以上、『私にしかできない役だ』という気持ちで臨んでいます」

──これまでさまざまな役を演じてきた山本さんですが、そういった思いをいつも以上に感じたということですか?

山本

「初めてですね。『もっともっとアスカを自分に入れたい』って、こんなふうに感じたことは今までなかったです。毎日苦しいし、お芝居をしてない時も息がしづらくなるんですけど、それは今この時期に経験しておかなきゃいけない苦しさだと思っています。この作品が終わった時、自分がどれだけ成長できるかが自分自身も楽しみだし、共演者の方々やスタッフの皆さんに『成長したな』って思ってもらえたらうれしいなっていう気持ちでやっています」

賀来

「山本さんは本当にはまり役だと思います。放送が始まっていろんな人の目に触れたら、間違いなく話題になると思うんです。アスカは明るい時は明るいけど、暗い時はどん底まで堕(お)ちてしまうような、起伏の激しい役で。そういう空気を話し合うことなく作ってくれるから、芝居をしていても『うーん…』って思うことがない。普段、かみ合わないなと思ったら話すようにしてるんですけど、そういうのは1回もないです」

山本

「やったー!」

賀来

「(笑)。偉そうに聞こえちゃったかもしれないんですけど、そういうつもりじゃなくて。本当に、すごくいいものが撮れてるんじゃないかなって思います」

■「僕、生きることにものすごく執着しているんです」(賀来)

──台本や原作を拝見して、浩史にとって小説を書くことと、アスカにとって音楽を作ることが、“好きで好きで仕方ない”というより、どこか“執着”しているように個人的には捉えたのですが、お二人は浩史とアスカにとって、小説と音楽はどういう存在だと思いますか?

賀来

「最初から最後まで、実は浩史って小説とそんなに向き合ってないんです。アスカとチャットしてる時も『今、小説書いてるよ』ってうそをついてるし、アスカと付き合い始めてからはアスカとしか向き合ってないんです。彼の6年間は、本当にアスカがすべてで。皮肉なもんなんですが、アスカのために常に何かをしていた結果、小説が書けたという。彼にとってもちろんコンプレックスでもあっただろうけど、自分を最終的に表現したのがこの『死にたい夜にかぎって』という小説。一番遠くにあるんだけど、一番近くにあるみたいな、不思議な関係性ですよね」

山本

「アスカは、最初は本当に音楽が好きだったと思うんです。でもうつ病っていう病気って、何かをしていないと本当に落ち着かないという部分があって。大人用の塗り絵をしたりして治す人もいるんですけど、アスカは何かに没頭するために、自分が好きな音楽をやっていると私は思ったんです。浩史に対して素っ気ないことを言ったりもするんですけど、本当は心の底から大好きだし、支えてもらってすごく感謝をしているから、そんな気持ちを音楽に乗せて表現したりして。アスカにとって、音楽はすごく大事なものだと思います」

──最後に、お二人は“死にたくなるような夜”を迎えたことはありますか?

賀来

「僕、生きることにものすごく執着しているんです(笑)。なので死にたくなったことはないです。死ぬのが怖いですね。生き続けたい」

山本

「つらいこともあるけど、生きてたら楽しいし。苦しいこともあるけど、死んだら一番悲しむの、親だなって思っちゃうから。家族が大好きなんですよ。もし死んじゃうなら、一瞬で死にたい(笑)」

賀来

「そういう話じゃないよ(笑)」

山本

「そういう話じゃない?」

賀来

「うん、死に方の話じゃないかな(笑)」

【プロフィール】


賀来賢人(かく けんと)
1989年7月3日生まれ。東京都出身。かに座。O型。2007年、映画「神童」で俳優デビュー。主な出演作は、映画「ちはやふる-結び-」「AI崩壊」「ヲタクに恋は難しい」、連続テレビ小説「花子とアン」(NHK)、ドラマ「Nのために」(TBS系)、「スーパーサラリーマン左江内氏」「今日から俺は!!」(ともに日本テレビ系)、「アフロ田中」(WOWOW)、「ニッポンノワール-刑事Yの反乱-」(日本テレビ系)など。7月17日には、主演を務めた映画「今日から俺は!! 劇場版」が公開予定。

山本舞香(やまもと まいか)
1997年10月13日生まれ。鳥取県出身。てんびん座。B型。11年、ドラマ「それでも、生きてゆく」(フジテレビ系)で女優デビュー。主な出演作は、映画「暗殺教室」シリーズ、「ひるなかの流星」「恋は雨上がりのように」「SUNNY 強い気持ち・強い愛」「ギャングース」「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」「東京喰種 トーキョーグール【S】」、ドラマ「SR サイタマノラッパー~マイクの細道~」(テレビ東京系)、「漫画みたいにいかない。」(日本テレビほか)、「チア☆ダン」(TBS系)など。「王様のブランチ」(TBSほか)のレギュラーとしても活躍中。

【番組情報】


MBS/TBSドラマイズム「死にたい夜にかぎって」
MBS 日曜 深夜0:50~1:20
TBS 火曜 深夜1:28~1:58
※放送時間は変更の場合あり

<配信情報>TBS放送終了後からTSUTAYAプレミアムで見放題独占配信。TVer、MBS動画イズムで見逃し配信予定。

取材・文/宮下毬菜(TBS・MBS担当) 撮影/尾崎篤志