災害時に中学生は― 港中生徒会と中区、共に作成の防災ガイドが顕彰受賞 横浜

横浜市立港中学校の(左から)國分教諭、ブラウネルさん、夛田さん

 横浜市立港中学校(横浜市中区)の生徒会が19日、同区と共に作成した防災ガイド「中区 地域防災拠点支援ガイド ~中学生ができること~」で「中区区民活動顕彰」を受賞した。高齢化が進む中、地域の担い手として期待される中学生がアイデアを出して生まれた冊子は、全国的にも注目されている。

 市は1995年の阪神大震災を受け、減災と人命を最優先する対策を強化しようと同年4月、被災者が一定期間滞在する地域防災拠点の整備を計画。同区では現在、小中学校など15拠点が定められ、防災訓練などが行われている。

 2011年の東日本大震災後に対策を強化する中で高齢化に直面。日中に地震が起きた場合、体力がある20~50代が仕事などで同拠点から離れた場所にいることが想定され、残された高齢者や乳幼児連れの母親らをサポートできる人手として、同拠点に指定されている中学校の生徒たちに着目した。

 同区職員の危機管理・地域防災担当の相浦正弘さん(50)が担い手となる中学生の目線でのガイド作成を持ち掛け、避難訓練を年4回実施するなど防災教育に力を入れる同校が快諾。3年の生徒会長、ブラウネル留果さん(15)を中心にアイデアを形にしていった。

 東日本大震災発生時、6歳だったブラウネルさんは「災害が実際に発生すると想像できるように」と、食料配布や炊飯訓練の様子を撮影した写真の掲載を提案。地震関連のクイズや拠点で起こり得る出来事をイラストで紹介した4こま漫画を各ページに配置した。

 2カ月に1回の話し合いを約1年間続け、昨春に完成。同拠点や広域避難場所をまとめた区全域の地図もあり、地域の状況が一目で分かる内容だ。区内の中学校に3千部を配布。自分ができることや、家族や友人の連絡先などを書き込む欄もあり、防災教育に役立っている。

 元町、山手、横浜中華街などが学区の同校は、中国や韓国など外国籍や外国にルーツを持つ生徒が3割を占める。ブラウネルさんの「難しい漢字は振り仮名があれば読むことができる」との助言で英語などの併記をしなかったが、「分からないことを生徒同士で教え合うなど交流につながっている」(相浦さん)と思わぬ効果も生まれている。

 市立みなと総合高校と隣接しており、3年の生徒会本部役員、夛田悠馬さん(15)は「災害時は連携が必要になる場面もあると思う。日頃から交流を深めていきたい」。港中教諭の國分英幸さん(60)は「生徒たちが災害を自分たちのこととして考えられるようになった」と意義を強調した。

 ガイドは防災専門図書館(東京都千代田区)に所蔵され、内容について県外の自治体から問い合わせが寄せられている。A4判、オールカラーで計8ページ。同区の公式サイトからダウンロードできる。

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