新型コロナ感染者なぜ急増?「町ごと封鎖」したイタリアの徹底ぶり

イタリアで、新型コロナウイルスの感染者が急増しています。これまで、ヨーロッパの国々における感染者数は多くても十数人程度だっただけに、今回の感染拡大でイタリア国内に大きな動揺が広がっています。

イタリアの感染者はなぜ急増したのでしょうか。また勢いを増すコロナウイルスに対して、現在はどのような対策が取られているのでしょうか。現地からのレポートをお届けします。(本記事は原稿執筆時である2月25日23:00時点の情報をもとにしています。)


25日現在、イタリアの感染者数は322人

2月25日23:00現在、イタリアの新型コロナウイルス感染者数は322人と発表されています。ミラノを州都とするロンバルディア州を中心に、ヴェネト州、ピエモンテ州、エミリア=ロマーナ州など、感染者は複数の州にまたがって増えています。

また、中部のトスカーナ州や南部のシチリア州でも感染者が確認されており、イタリア全土に広がるのは避けられない事態となってきました。

各紙ともコロナウイルスの感染状況を事細かに報じる

イタリア国内の感染者数は、2月20日までわずか3人でした。つまりたった5日間のうちに107倍にも膨れ上がったことになり、国内はちょっとしたパニックになっています。ミラノでは街中の様子こそ普段と変わらないものの、スーパーには市民が食料品の買いだめに殺到したり、学校や美術館、映画館などが閉鎖される事態になっています。

イタリアの感染者急増はなぜ起きた?

短期間のうちに非常に多くの感染者が発見されたイタリア。こうした事態はなぜ引き起こされたのでしょうか。その理由について、国家市民保護局のアンジェロ・ボレッリ局長は「医師の知識不足により、どのような症状を疑うべきかが認知されていなかった」と発言しています。

イタリアにはもともと新型コロナウイルスの二次感染症例がなく(それまでに確認されていた感染者は、いずれも中国人旅行者など国外での感染が疑われる人々)、重症ではない人に対して検査は行われていませんでした。そのため、最初に確認された患者が入院したコドーニョの病院では、少なくとも5人の医師や看護師が感染したままだったことが分かっています。

「医師が感染するということは、ウイルスの拡大だけでなく、適切な対応が行われていないことを意味する」というボレッリ氏の言葉通り、病院が感染の苗床になっていた可能性も否定できません。これは、ちょうど1ヵ月前の中国の状況と非常に似ていると指摘されています。

イタリアが中国と異なったのは「中国は新しいウイルスを公開することを躊躇したが、イタリアでは即座にすべてのデータを公開した」ことであると、ミラノ大学のウイルス学研究者のファブリツィオ・プレリアスコ氏は指摘しています。

また、イタリアのその後の対応について、保健省副大臣のピエルパオロ・シエリ氏は「徹底的なスクリーニング検査を行った。短期間で3,000件以上の検査を行ったため感染者が急増しているように見えるが、この数字は広範囲に徹底した検査が可能であることの裏返しでもある」とFacebookのタイムラインに投稿しています。

つまり、イタリアの感染者が急増した背景には、感染の疑いがある人に対して徹底した検査が行われたことがあげられるでしょう。実際、こうしたスクリーニング検査の中には、走行中の電車を停めて接触者を探し出し、その場で医師が診断をしたケースもあったといいます。

コロナウイルス封じ込めの取り組み

シエリ氏の言葉の通り、イタリアでは最初の感染者が確認された翌日には、直接接触のあった人物を割り出し、150人に対してウイルス検査を行っています。また同時に、感染者が住んでいた町をまるごと隔離し、公共施設やレストラン、バールなど人の集まる場所を閉鎖。住民には不要不急の外出をしないよう呼びかけました。

少し厳しすぎると感じる点もありますが、ウイルスを封じ込めるという意味では、そのスピード感や決断は見事と言えるでしょう。

感染者が確認された21日以降、ニュースはコロナウイルス一色に

現在、この自治体では住民の出入り禁止のほか、以下のような措置が行われており、違反者には罰則が設けられています。

・あらゆるイベントの開催を禁止
・全ての経済活動の中断(公益事業や生活に不可欠なサービスを除く)
・リモートワークができる場合を除き、全ての労働活動を中断
・オンラインを除き、教育サービスの中断
・電車、バスなどすべての公共交通機関を一時休止

つまり、薬局や食料品店以外の店は閉鎖し、学校や仕事もすべて休業。電車やバスもすべてストップしているという状況です。

これらの取り組みに関しては、少しやりすぎの感もあり、パニックを引き起こしているという意見もあります。ただその一方で、ここまでやることで一定の安心感があるのも確かです。この対応が正解かどうか、その答えが出るのは数ヵ月後のことになるでしょう。その頃には、世界的な感染拡大が少しでも落ち着いていることを願うばかりです。

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