31歳女性「手術代70万、運用資産を取り崩して捻出したい」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、手術費用のために70万円が必要だという31歳の女性。手元に現預金がなく、運用資産から取り崩したいといいますが……。FPの伊藤亮太氏がお答えします。

視力矯正手術をするため70万円必要になる予定です。現在、手元のお金は最低限しかなく、運用資産を崩して捻出しようと思っています。

投資は以下のような内訳なのですが、プラスが多い外国株式から優先的に取り崩してしまってよいのでしょうか。それとも割合は均等にしたまま、少しずつ取り崩すのがいいのでしょうか。アドバイスよろしくお願いします。

外国株式:210万円(+35万円)

外国債券:90万円(+4万円)

日本株式:60万円(+5万円)

日本債券:90万円(+1万円)

※( )は評価損益です。

〈相談者プロフィール〉

・女性、31歳、未婚

・職業:会社員

・居住形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:30万円

・毎月の世帯の支出目安:25万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:5万円

・現在の貯蓄総額:5万円

・現在の投資総額:450万円

・現在の負債総額:なし


伊藤:ファイナンシャルプランナーの伊藤亮太です。回答させていただきます。

現状、ほぼ投資に回している状況ですね。幸いなことに、すべて評価益が出ておりますので、取り崩ししても特段問題ない状況にあります。

取り崩しは利益の出ているものから?

当初の投資配分にもよりますが、決めた配分は忠実に守っていますでしょうか? それともまとめて投資した結果、今に至る状況でしょうか? 外国株式の配分が多いのは、中長期的な投資からでしょうか? そのあたりの状況でどう考えるかは多少異なってきます。

相談者の方が言われるように、プラスが多い外国株式から優先的に取り崩す形でよいと思います。おそらく配分から見て、中長期的な投資を目指されているのだと思います。とはいえ、70万円の資金捻出のためには、プラスの大きい外国株式から売却していくのが無難だと思います。足元では若干円安が進んだこともあり、売却するには悪くないタイミングです。

もし私であれば、というのが前提になりますが、外国株式から70万円売却し手術資金をまずは確保します。その後、コロナウイルスなどの問題により、さらに株式市況が悪化するのであれば、毎月の貯蓄をもとに外国株式を買っていきます。

コロナの問題は景気を冷やす恐れがあります。とはいえ、短期的な問題としてとらえた方がよいように思えるからです。過去の様々な事例から、数年も続くとは考えにくいからです。なお、リスクヘッジのために、時間分散を利用してコツコツと中長期的な運用を目指して、毎月投資していくほうがよいと思います。

手元に現預金は必要、確保するためには…

手術代金とは別になりますが、手元にまったく現預金がないのもどうかとは思います。そのため、昨今の金利情勢からみてあまりうまみがないと考えられる日本債券を売却し、90万円分を現預金で保有することを検討されてはいかがでしょうか。

これは、今後追加で資金が必要になった場合の備えという意味があります。また、株式市況が大幅に下落した場合に買いに向かう資金として利用するという意味も込められています。

まずは「3つのステップ」、その後リスクに備えた運用を

まずは上記のように、【ステップ1】として、手術代金に相当する外国株式70万円分を売却する。【ステップ2】として、日本債券を全額売却し、その資金を手元に置く。【ステップ3】として、毎月の貯蓄額から数万円程度、時間分散を利用して外国株式を購入していく。このステップを実践してみましょう。

その後に、ぜひ考えていただきたいのが、外国株式の比率がある程度高まってきたら、ほかの資産を増やすかどうか。仮に外国株式が再度210万円程度まで膨らんできたら、その後は毎月1万円ずつ、外国株式、外国債券、日本株式へと投資していくスタイルもアリです。

また、リスクヘッジとして今後市況がさらに悪化するといった場合に備えて、金など貴金属への投資も視野に入れてみてはいかがでしょうか。中長期的に見て、世界は3%前後の経済成長を遂げていくと想定されるため外国株式中心でよいとは思いますが、景気が冷え込み市況悪化となる恐れもあるためです。有事の金といわれるように、国内では40年ぶりの高値となっています。コロナだけではなく、今後の景気マイナス要因に対する備えをそろそろしておくべきです。

なお、残りの毎月の貯蓄額2万円は、とりあえず現預金で貯めていきましょう。そして、いざというときの資金に備えましょう。

一つの目安ですが、本来は会社員の方の場合、3ヵ月分の生活費は最低限現預金で保有すべきです。日本債券を売却すればいざというときの資金は確保できますし、それ以上に貯めていくことで株式などを買いたいときの資金源にもできます。短期売買を行うかどうかは別としても、大きく下落したときに買うスタイルは身につけておくべきです。以上、参考にしてみてください。

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