西武今井、本人も喜べない“自己最速更新155キロ”の怪 指揮官も「ダメでしょ」

練習試合に登板した西武・今井達也【写真:宮脇広久】

「絶対出てないです、絶対出てないです、絶対出てないです。それはもう断言できます」

 2016年夏に作新学院のエースとして全国制覇を成し遂げ、同年ドラフト1位で西武入り、昨季7勝(9敗)を挙げ、4年目の今季に本格覚醒の期待がかかる今井達也投手。26日のオリックスとの練習試合(宮崎・清武)に登板し“不本意な”自己最速をマークした。

 観客がどよめいた。5回から2番手で登場した今井は先頭の宜保に対し、ボール、ボール、ボール、見送りストライク、ボールでいきなり四球を与えたが、5球全てが150キロ超。続く中川を149キロで遊ゴロ併殺に仕留めた。そして小田への初球は、球場スコアボードの表示で155キロを計測。昨年3月30日のソフトバンク戦でマークした自己最速154キロを1キロ更新した。さらにカウントを1-2とした後、再び155キロを計測した4球目が、小田の右太もも付近を直撃する死球に。小田はそのまま交代したほどだ。今井は続く杉本を149キロで投ゴロに打ち取る。結局、8回まで計4イニングを投げ、1安打3四死球を許したものの3三振を奪い無失点で切り抜けた。

 だが、辻監督は試合後、首を横に振り「ダメでしょ。(ストライクとボールが)ハッキリしていたもの。(技術的に)きっちり確立されていない」と手厳しかった。むしろ、最速こそ150キロ止まりだったものの、空振り三振2つと右直で3者凡退で終えた8回の投球を評価。「せっかく良くなったから、西口(投手コーチ)に『もう1イニング投げさせろ』と言ったんだけど、『球数が……』と反対するし、どこかおかしくなったら俺の責任になるから、折れたよ」と笑わせた。

 今井も自覚していた。「力み倒して制球が定まらず、まだまだっていうか、実戦で投げられるレベルじゃないと思いました。試合前に西口さんから『ストライク先行でいけるように』という話をしてもらっていたんですけど、なかなかできなかった」と猛省。遊ゴロ併殺と投ゴロも「真っすぐがたまたま、ちょっとシュートして……狙い通りのボールではなかった」という。

開幕投手のニールは4回5安打2失点も辻監督は「安定している。余計な四球を出さない」

 その上で「最後の回だけですね。あれくらい力が抜けて、最後(リリースの瞬間)だけ力が入れば、いいボールが行く。あれが最初からできなければいけないと、試合後に森(友哉捕手)さんと話しました」と明かした。

 そして155キロについては「絶対出てないです、絶対出てないです、絶対出てないです。それはもう断言できます」と繰り返し、「(自分の感覚では)150も出ていないんじゃないですかね」と計測ミスと言わんばかりで、自己最速認定を拒んだ。

「真っすぐの強さ、質で勝負していきたい。球速はあまり気にせず、真っすぐを狙われてもファウルになるような、そういうボールを求めています。狙った高さ、コースにしっかり投げ切ることも大事なので、自分の目的、目標を見失わず、完成度を上げていかないと」と語り、「しっかり練習をしないといけないと、改めて思いました。ブルペンでも打者に立ってもらうなり、極力実戦に近い形で練習することが足りてなかった」と自ら解説してみせた。

 オープン戦・練習試合序盤のこの時期は、単純に結果だけではその価値を計れず、ましてやスピード表示は球場によってまちまちで当てにならない。この日の先発は昨季12勝1敗で、すでに今季開幕投手を務めることが発表されているザック・ニール投手で、最速は147キロ、4回5安打2失点とパッとしなかったが、辻監督は「安定している。余計な四球を出さないし、大量失点しそうにない。(球速は)『速すぎたんじゃないか?』と本人に言ったよ」と信頼を深めた様子だ。現時点でこのあたりに、今井との大きな差がある。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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