ベテルギウスの減光がついにストップ。増光の兆しを見せる

同じ条件で撮影されたベテルギウスの比較画像。左は2016年2月、右は2019年12月31日に撮影。背景の星々は変わらないが、ベテルギウスは右のほうが暗い(Credit: Brian Ottum/EarthSky)

昨年2019年後半から急速に暗くなり始めたオリオン座の赤色超巨星「ベテルギウス」。ベテルギウスはいつ超新星爆発が観測されてもおかしくないとされており、いよいよその時が近づいたのかと話題になっていましたが、直近の観測では昨年から続いていた減光が止まり、増光に転じつつある様子が明らかになっています。

■最も暗くなったのは2月10日前後、1.6等で底を打つ

Edward Guinan氏(ビラノバ大学、アメリカ)らの研究チームが国際天文電報(ATel)を通じて報告した内容によると、ベテルギウスの実視等級は2月7日から13日にかけて約1.6等で底を打ち、その後は徐々に明るくなっています。2019年9月のベテルギウスの実視等級は約0.6等だったので、5か月の間に1等級ほど暗くなったことになります。

アメリカ変光星観測者協会(AAVSO)のデータベースに登録されている観測結果(実視等級に相当するVバンドの観測値)をグラフ化してみると、ベテルギウスは2019年10月後半から2020年2月前半にかけて暗くなり続けた後に、現在は1.5等付近まで増光していることがわかります。

2020年2月26日からの直近180日間におけるベテルギウスの観測データ(Vバンド)。AAVSOウェブサイトの「Light Curve Generator」にて作成(Credit: AAVSO)

脈動変光星のひとつであるベテルギウスでは、明るさの変化する周期が幾つか確認されています。長年に渡りベテルギウスを観測してきたGuinan氏は、近年の「420~430日周期」の変化に注目し、2月1日の時点で「2月21日頃(誤差は前後一週間)を境にベテルギウスが増光に転じる」と予想していました。誤差を考慮した期間は2月14日~28日となるため、ほぼGuinan氏の予想通りに増光が始まったことになります。

■赤外線では変化なし、放出するエネルギーは変わっていない?

また、Robert Gehrz氏(ミネソタ大学、アメリカ)らの研究チームによる報告では、2020年2月21日にベテルギウスを赤外線の波長で観測した結果を50年ほど前の観測結果と比較したところ、その違いは観測上の不確実性の範囲内であり、ベテルギウスの光度は変わっていないとされています。

以前もお伝えしたように、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の「超大型望遠鏡(VLT)」を使ってベテルギウスをクローズアップ撮影しているMiguel Montargès氏(ルーヴェン大学、ベルギー)は、今回観測された減光について、ベテルギウス自身が放出した塵によって光がさえぎられたか、ベテルギウス表面の温度が例外的な活動により低下した可能性を指摘しています。

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ベテルギウスの放出するエネルギーが半世紀前と比べて変化がないとすれば、今回の実視等級の減光は超新星爆発につながるような恒星内部の変化による現象ではなく、Montargès氏が指摘するような表面的な現象だった可能性が高まります。前例のない減光を正しく理解するためにも、Guinan氏らは経過を引き続き観測する必要があると述べています。

2019年12月に超大型望遠鏡(VLT)で撮影されたベテルギウス。向かって下半分が暗く見える(Credit: ESO/M. Montargès et al.)

Image Credit: Brian Ottum/EarthSky
Source: ATel(1)/ ATel(2)/ Sky & Telescope/ EarthSky
文/松村武宏

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