社説(2/27):新型肺炎と中国/強権的統治を見直す契機に

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 肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が延期された。異例のことである。

 中国は「社会主義制度の長所を発揮する」(習近平国家主席)と、強制措置を駆使し収拾を目指す。だが早期の封じ込めができなかった背景には、強権的な統治の在り方が浮かぶ。今後の対応次第で習氏の権力基盤を揺るがす事態にもつながろう。

 新型肺炎は中国全土のみならず、日本を含む各国に拡大した。世界第2位の経済大国となった中国とつながるヒト、モノ、カネの規模は、かつてとは比べものにならない。大国として世界への責任がある。透明度の高い政治・行政や情報公開の進展へ、力を注ぐべき段階に来ている。

 感染症が発生したとみられる地元当局の初動の遅れが指摘されている。

 湖北省武漢市で「原因不明の肺炎」が公表されたのは昨年末。1月7日前後には省と市で重要会議が開かれた。会議を順調に進めるため当局が肺炎の死者などを意図的に少なく公表し、情報公開を遅らせた疑いが持たれている。

 習氏の「1強体制」による共産党最高指導部に権力が集中する中、責任だけを地元に負わせるわけにはいくまい。権力集中の弊害の一断面と見ることができよう。

 新型肺炎に警鐘を鳴らした医師が「デマを流した」として警察の処分を受け、その後に新型肺炎で死去する悲劇も起きた。中国の人権問題を扱うサイトによると、武漢市を訪れ当局の情報隠しや貧弱な医療態勢を批判したジャーナリストの弁護士が行方不明になってもいる。拘束されたとみられている。

 情報を力ずくで押さえ込む当局に対する国民の怒りは強い。習氏が「透明性のある情報公開で大衆の懸念に応える」と約束せざるを得なかったほどだ。

 ただ最近の状況を見ても習氏の言葉通りにはなっていない。武漢市などで感染者数の発表修正が相次いでおり、会員制交流サイトでは「操作ではないか」と疑念の声が上がる。

 「習氏は統治能力の低さを露呈した」(北京の党史研究者)との見方も出るようになった。習指導部は発足以来の試練に直面していると言っていい。

 習氏ら党最高指導部は3日の会議で「一連の対応で至らない部分が明るみに出た」との認識を示した。対応に誤りがあったと認めた形である。世界に感染が拡大し往来制限が広がり、中国が孤立する状況も生じている。「誤り」に思い切ったメスを入れなければ、国際的な不信は容易には拭えまい。

 とはいえ今は対策に国際協力が不可欠だ。手を携えることが中国に前向きな変化をもたらす礎ともなろう。日本が果たす役割も重要になる。