ようやく開設

 「ようやくか」。今月1日、長崎市の長崎みなとメディカルセンターに救命救急センターが開設されたとの報に、そんな感慨を抱いた市民もいたことだろう▲市は老朽化した市立市民病院などを建て替え、みなとメディカルセンターとして2014年2月に開院する際に救命センターも設置の予定だったが、実現できていなかった▲これまで常勤の救急専門医を確保できなかったためだが、人材確保の困難さは計画段階から指摘されていた。その問題解決につながると、他の公的病院との統合が提案されたこともあったが、市は自らの計画を推し進めた▲今回開設した救命センターは24時間体制で重篤な患者に対応するが、市が目指していた「ER型」ではない。患者の重症度や傷病の種類に関係なく受け入れるER型には、より多くの医師が必要なのだという。限られた医療資源を確保するのが、いかに難しいことなのか改めて実感させられる▲折しも公的病院の再編・統合が国主導で提起されている。だが各病院にはそれぞれ経営方針があり、協議は思うように進んでいない▲とはいえ、少子高齢化が進む中で、今のままの態勢を続けるのも難しいだろう。地域に必要な病院、医療とはどんな姿なのか。命や健康に関わる課題であり、市民としても無関心ではいられない。(久)

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