行動範囲・所在公表を 新型肺炎で自治体から開示求める声

神奈川県庁

 新型コロナウイルスの感染者の確認を巡り、県が個人の特定や風評被害などを防ぐために、居住地の自治体名などを公表せず、政令市のほかは保健所単位での発表にとどめていることに、賛否の声が上がっている。市町村の担当部署にも詳細は知らされておらず、各自治体からは行動範囲や所在などについて県への情報開示を求める声も相次ぐ。県は市町村の意向を踏まえながら対応を検討する考えも示す。

 県は24日に鎌倉保健福祉事務所管内(鎌倉、逗子、三浦市、葉山町)に住む男性会社員、26、27日には厚木保健福祉事務所管内(厚木、大和、海老名、座間、綾瀬市、愛川町、清川村)に住む男性2人の感染が確認されたと発表。ただ居住地などの詳細は明らかにせず、県は「正しい情報として公表したい思いはあるが、個人が特定される恐れがある」などと説明する。

 こうした発表に対し、各自治体には心配した市民からの問い合わせも多いといい、厚木市危機管理課の担当者は「県に再三問い合わせ、情報提供を求めている」と強調。家族構成なども新聞報道で知る状態といい、「市内で介護サービスなどを利用している可能性もある。子どもがいる場合は学校関係の対応も必要。市町村には、しっかり情報を伝えるべきだ」と訴える。

 鎌倉事務所管内のある自治体職員は「当該地域かどうかで住民の危機感は違ってくるし、感染拡大防止は住民の協力なしにできない。せめて自治体を特定してほしい」と憤る。

 県は現在、市町村から感染者の有無を問われても回答していない。担当者は「当該の市町村が特別な対応を取ることで居住地を限定してしまうこともある」と懸念する一方、「市町村が困っているのであれば今後、各市町村の意向を改めて確認したい」と柔軟な対応を検討する考えも示す。

 一方で、綾瀬市の担当者は「基礎自治体が対応できることは限られる。仮に市町村ごとに情報を公表された場合、綾瀬は市域が狭いので市民の間で無用の混乱が発生する恐れもある」と保健所単位の公表に理解を示す。別の自治体からは「個人情報保護や人権擁護に配慮する県の姿勢は理解できる。感染拡大を防ぐ行動を一人一人が取ることが大切」との声も上がる。

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