愛しのレコードジャケット<ニューミュージック>

お正月太りも解消しないうちに、2月になってしまった。
2月といえばバレンタインデーだが、学生時代にクラスメートからもらったチョコの数を聞かれ、「えっと、1コ」と、おかんからもらった分を見栄はって答えたのも若気の至りだ。
恥ずかしい記憶は、シャラララ、すてきにキッス♩と歌って誤魔化しながら脳の奥底へしまっておきたい。

今回紹介するレコードジャケットは、「ニューミュージック」である。
ニューミュージックは、1970年代後半から始まった新しい歌謡曲のジャンルだ。
自ら作詞・作曲した曲を歌い、テレビには出ずラジオやライブを中心とするスタイルは、従来の演歌やアイドル歌手とは一線を画し、若者たちから絶大な人気を誇っていた。
10代だった私も、当然ニューミュージックにどっぷりはまっていたものだ。
当時のレコードジャケットを見て、甘酸っぱい青春の記憶を掘り起こしてみよう。

勝手にシンドバッド/サザンオールスターズ

作詞・作曲:桑田佳祐
今更説明するまでもない、サザンオールスターズのデビューシングル。
洋楽のエッセンスをふんだんに取り入れたサウンドに英語と日本語が織り交ざった歌詞など、当時あまりに斬新すぎるスタイルに一部の評論家から「早口言葉」と揶揄されたこともあったが、私たちはお構いなしに「今何時!?」とシャウトしていた。

あんたのバラード/世良公則&ツイスト

作詞・作曲:世良公則
第14回ヤマハポピュラーソングコンテストグランプリ受賞曲。
サザンオールスターズと人気を二分した世良公則&ツイストのデビュー曲でもある。
スローなイントロから、「あんたにっ!!」のシャウトのインパクトが絶大で、ボーカルの世良公則の全身からあふれるオーラに若者たちは憧れたものだった。

ガンダーラ/ゴダイゴ

作詞:山上路夫・奈良橋陽子 作曲:タケカワユキヒデ
日本テレビドラマ「西遊記」エンディングテーマ曲
ゴダイゴは、ゴールデン・カップスのメンバーだったミッキー吉野をリーダーに、タケカワユキヒデ、スティーブ・フォックスらをメンバーに活動していた
オリエンタルなメロディと歌詞が印象的で、ドラマの人気と共にゴダイゴ初のミリオンヒットとなった。
また、オープニングテーマ曲の「Monkey Magic」もヒットしている。

大都会/クリスタルキング

作詞:田中昌之・山下三智夫・友永ゆかり 作曲:山下三智夫
第18回「ヤマハポピュラーソングコンテスト」グランプリ受賞。
ムッシュ吉崎と田中昌之のツインボーカルが印象的なクリスタルキングのデビュー曲である。
何かが始まりそうなイントロから田中の突き抜けるようなハイトーンボーカルで、聞くものを一気にクリキンの世界に引き込むパワーを持った曲であった。

万里の河/チャゲ&飛鳥

作詞・作曲:飛鳥涼
第17回ヤマハポピュラーソングコンテストに入賞し、1979年に「ひとり咲き」でデビューしたチャゲ&飛鳥3枚目のシングル。
叙情的なメロディと歌詞と共に二人のハーモニーが非常に印象的な曲で、初期のチャゲアスの代表曲ともいえる。

愛はかげろう/雅夢

作詞・作曲:三浦和人
第19回「ヤマハポピュラーソングコンテスト」優秀賞受賞曲。
美しいメロディと愛しい人と離れる心情を綴った歌詞は、崇高さを感じさせる名曲である。
雅夢は三浦和人と中川敏一によるフォークデュオとして活動していたが、当時の若者の志向がフォークからロックやポップスへ移りつつある時代で、残念ながら84年に解散してしまった。

A面で恋をして/ナイアガラトライアングル

作詞:松本隆 作曲:大瀧詠一
大瀧詠一、佐野元春、杉真理のユニットである「ナイアガラトライアングル」のシングル曲。
大瀧詠一独特の奥行きのあるサウンドに松本隆のポップな歌詞が合い、何度も聞いても飽きない。
この頃、大瀧詠一にハマっていた私は「A面で恋をして」もすぐに買ったのだが、佐野元春、杉真理にも同時にハマってしまい、3人のレコードを買うのにこづかいが足りず苦労したものだ。

ダンシング・オールナイト/もんた&ブラザーズ

作詞:水谷啓二 作曲:もんたよしのり
ダンサンブルなリズムと哀愁を帯びたメロディに、もんたのハスキーボイスがマッチした曲で、1980年の大ヒット曲になった。
私がこの曲を聞いたのはアルバイト帰りに寄った牛丼屋で流れていた有線放送で、その後じわじわとヒットしていったのだが、こういう売れ方は演歌ではよくあるものの、ニューミュージックでは珍しかったのを覚えている。

い・け・な・いルージュマジック/忌野清志郎・坂本龍一

作詞・作曲:忌野清志郎+坂本龍一
1982年資生堂春のキャンペーンテーマ曲。
RCサクセション忌野清志郎とYMO坂本龍一のジョイントユニットとして、当時大きな話題となった。
無表情でキーボードを弾く坂本キョージュと、対照的にノリノリで歌う清志郎とのツーショットは非常にかっこよかったが、さらに二人がキスをするという衝撃的なパフォーマンスもあり、いたいけな少年には刺激の強すぎる内容であった。

夢の途中(セーラー服と機関銃)/来生たかお

作詞:来生えつこ 作曲:来生たかお
映画「セーラー服と機関銃」のテーマ曲で、映画では薬師丸ひろ子が歌ったバージョンが使用されている。
哀愁を感じさせながら湿っぽくないメロディに、青春の苦しみや悲しみを綴った歌詞が聞くものを惹きつける。
当時の私は、薬師丸バージョンより来生バージョンの方を推していたが、テレビから頻繁に流れてくる薬師丸バージョンも気になって、結局両方買ってしまった。
良い曲は、誰が歌っても良い曲なのである。

虹とスニーカーの頃/チューリップ

作詞・作曲:財津和夫
「サボテンの花」や「心の旅」のヒット曲を持つチューリップ16枚目のシングル。
チューリップ結成10周年ということもあって大ヒットし、中期の代表曲となった。
イントロのドラムから「わがままは、男の罪」という歌詞のインパクトとハーモニーの美しさ、そして青春の終わりを感じさせるような哀愁あるメロディが印象的だ。

さよなら/オフコース

作詞・作曲:小田和正
哀愁を帯びたメロディに恋人との別れを綴った歌詞、そして小田和正によるハイトーンボイスが心に残る曲である。
オフコースは、それまでコアな音楽ファンからは知られた存在ではあったが、一般的にも知られるようになったのが「さよなら」のヒットによるものだ。

あの日にかえりたい/荒井由実

作詞・作曲:荒井由実
現在でもライブや楽曲提供などで活躍する松任谷由実(当時は旧姓)の6枚目のシングル。
まるで洋楽を聞いているようなメロディと恋人と別れた女性の心情を淡々と綴った歌詞、そしてモノトーン調のジャケットも非常におしゃれなレコードであった。

今だから/松任谷由実・小田和正・財津和夫

作詞・作曲:松任谷由実・小田和正・財津和夫
ニューミュージック界のビッグネーム3名によるコラボレーションソングである。
男女3人による友情と恋愛のはざまに揺れる歌詞が秀逸で、青春時代の甘酸っぱい思い出がよみがえってくる名曲だ。
編曲はYMOの坂本龍一が手がけており、テクノ色が強いアレンジになっている。

時代/中島みゆき

作詞・作曲:中島みゆき
第10回ヤマハポピュラーソングコンテストグランプリ受賞曲。
後に数々のヒット曲を生み出す中島みゆきのデビューシングルで、力強い歌声と骨太な歌詞は当時からのものだ。
この「時代」と「あの日にかえりたい」が発売されたのは共に1975年で、歌謡曲の新時代の到来を予感させるインパクトを持った曲であった。

いかがであろうか。
今回取り上げたジャケットは、作詞、作曲、歌手が同じという曲ばかりだ。
当時の若者は、自ら作った曲を自ら歌うミュージシャンに憧れ、必死でレコードを聴きギターを練習したものだ。
夢に破れた苦い思い出と共に、レコードジャケットを懐かしんでもらえたらうれしい。
それでは来月も、よろしく哀愁。

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