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「東京オリンピックを開催するかどうかの判断の期限は5月下旬」
日本国内での新型コロナウイルスの感染拡大をうけて、そう見解を語っていたIOC(国際オリンピック協会)のディック・パウンド委員。そのIOC委員が2月26日、今度は開催の延期について言及しました。
「もし、日程の再検討が必要となれば、理論上は同じ開催時期で2021年に延期される可能性がある」
まるまる1年ずらすという案ですが、すでに年内に行う案に関しては「まずい」としています。
「数カ月の延期はNFLやNBAのシーズンと重なるため、北米のテレビ局が納得しない」
現代のオリンピックは、スポンサーであるアメリカのテレビ局が支払う莫大な放映料に支えられていますので、そんな現実の前では、「平和の祭典」のお題目も「アスリートファースト」の精神も、全く関係ないといったところです。
「デッドラインは5月下旬」と言い放っていたディック・パウンド委員の発言に対しては、日本の橋本聖子オリンピック・パラリンピック大臣がすでにこう否定しています。
「IOCに説明を求めたところ、IOCの公式の見解ではなく、発言は、東京大会の予定通りの開催に向け、IOCが準備を進めていることを説明するものだという回答を得ました」
しかし、そんな否定もどこ吹く風で、IOCの委員が発言した「5月下旬」情報は瞬く間に日本中を駆け巡りました。そして、日本国内では「この感染状況を考えれば、やむをえない。最悪、中止になってもしかたがない」といったあきらめムードが蔓延していきました。
それがここにきて、今度は「1年後に延期」発言です。
もしも1年延期したとすれば、経済的な損失は大きなものになるでしょう。しかし、中止することに比べれば、はるかに損害を抑えることがでます。当然、世論はこういった声で溢れていきます。
「1年後にできるならいいじゃない!」
ネットやSNS上でもこういった意見が多数を占めてきています。
ただ、1年ずらすということは、新型コロナウイルスの発生から1年半以上経過させるということです。終息まで長かったとされる疾病のSARSでさえ10カ月ですから、かなりずらすことになります。
IOCとしては、数カ月の延期ではNFLやNBAとかぶってしまうから、延期するならならまるまる1年なのです。
この「1年後に延期」発言も、IOCは公式の発表ではないと否定するでしょう。
そもそも「デッドラインは5月下旬」が公式発言でないなら、IOCは言い出しっぺのディック・パウンド委員に釘を刺しているはずです。
しかし、ディック・パウンド委員は二の矢を打ってきました。ようは、親分には命令されてはいないが、子分が意を汲んで、かましてきているわけです。まるでヤクザの手法です。
ヤクザは相手に非があれば、まずこちらが絶対に飲めない要求をしてきます。その要求をとことんゴリ押してきます。こちらに非があるわけですから、思わず観念してしまいそうになりますが、そこでヤクザは「優しさ」を見せます。当初よりも、飲めるギリギリの要求に変えてくるのです。結果、こちらはヤクザに「感謝」までしてしまうかもしれません。
「生かさず殺さず」
IOCがとっている手段そのままです。最後はこちらがカタにはめられている未来しか見えません。(文◎編集部)