【レッドブル密着】開幕戦仕様の空力をテスト。強風の影響受けるも良好な手応え/第2回F1バルセロナテスト2日目

 2020年のプレシーズンテストも残り2日となったところで、レッドブルは開幕戦仕様の空力パッケージを持ち込んできた。メインプレーンが3枚翼になりフラップが大きく湾曲した新型フロントウイング、整流フィンが追加されたノーズ下のターニングベイン、より複雑化したいバージボードとポッドフィンなどだ。

 多くのチームが本格的なレースシミュレーションや予選シミュレーションに突入する中、レッドブルはこの新パッケージの評価を行うために短い周回数のランを繰り返し、様々な条件で細かなデータ収集を進めていった。そのためもっぱら性能変化の少ないC2タイヤでの走行とし、ベストタイムは狙いにいったものではなくこうした走行プログラムの中でたまたま記録されたものに過ぎない。

 それでもC5タイヤのセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)から0.897秒しか離れておらず、タイヤ差を考えれば実質的にフェルスタッペンの方が速いタイムだと言えた。

 この日は突風が吹き荒れ、サーキット内の旗やアドバルーンが激しくたなびいていた。そのためどのドライバーもマシンの不安定さを訴え、特に回り込むターン4やターン5で挙動を乱す場面が散見された。

 フェルスタッペンもターン5で突然リヤが流れて飛び出し、グラベルに捕まって赤旗を出してしまった。しかしこれは濡れた白線に乗っただけであり、フェルスタッペン本人も気にはしていない。

 それよりも改良型空力パッケージで『RB16』がさらに進化したことの方を評価し、チーム内でも上々の様子だったという。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

 フェルスタッペンが担当した午前中は、前夜の雨でウエットコンディションでのセッション開始だったこともあり、僅か31周。午後のアレクサンダー・アルボンも61周とトータル92周しか走ることができなかった。しかしそれは細かなテストプログラムをこなすためであり、RB16開幕仕様パッケージをより上手く使いこなすための準備作業をしているからだ。

「先週から僕らにとってはタイムを出すことはまったくもって目的ではない。マシンを学ぶためのロングランなどはしっかりとやれたし、新しいパーツを試すものだったり異なるセッティングを試すものだったりその内容は様々だ」

「上手くいくものもあればそうじゃないものもあるけど、今のF1マシンはとても複雑だから、そういったものをすべてこなすためにはすごく時間が掛かるし、(細切れの走行が多く)トータルの周回数としては多くならないこともあるのはそのためだよ」(フェルスタッペン)

■アルボン「RB16はどんなコンディションでも良い感触」

 午後になると何台ものマシンがフルレースシミュレーションを行って6日間の開幕前テストの総仕上げに掛かり始めたが、レッドブルのアルボンだけは3〜5周の短いランを繰り返し、新パッケージのデータを取り続けた。

 強風の影響でドライバーのフィーリングだけで善し悪しを判断するのは難しく、あとは夜の間のデータ解析の結果を待つことになるが、限られた安定条件下での走行からは良好な手応えが得られているという。

「今日は風が強かったからフィーリングだけで語るのは難しいし、テスト条件としては楽なコンディションではなかったからね。新旧比較をするのは簡単ではなかったよ。これからデータを見なければならないけど、基本的にこのマシンはどんなコンディションでもフィーリングが良いよ」(アルボン)

アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)

 先週の段階ではまだメルセデスAMGとはやや大きなタイム差があった。特にメルセデスAMGが強く、レッドブルが課題としていた中低速コーナーの多いセクター3での差が大きかったが、それは改善の糸口が見えているとテクニカルディレクターのピエール・ワシェは語る。

「マシンのスタビリティは良くなっているし、先週と昨日起きたサスペンションの問題も解決できた。そして空力アップデートも入念にデータ収集に専念し、これからその性能を引き出すセットアップを見付け出すところだ」

「セクター3では確かに遅れを取っているけど、我々はまだC3で2回走っただけに過ぎない。柔らかいタイヤを履けばメカニカルグリップが高く、セクター3の差は縮まることになる」

 果たして昨年までのレッドブルの課題であったコーナー入口でのスタビリティ不足と中低速域・中高速域の空力性能はしっかりと強化されているのだろうか。それはまさに本来のRB16の姿であるこの開幕戦仕様の空力パッケージをきちんと使いこなせるかどうかに掛かっている。

 最終日に予選・レースシミュレーションを行うかどうかはまだはっきりしていない。2日目のデータが不充分であれば、見かけ上のタイムを記録することよりも、実戦でしっかりと使いこなすためのさらなる準備作業に充てる方をレッドブルは優先することになる。

 果たして、テスト最終日にレッドブルがRB16の速さを限界まで引き出してくるのか、それともそれは開幕戦メルボルンまでお預けになるのか。いずれにしてもテストの残り2日となったこのタイミングで、レッドブル・ホンダが大きな一歩を進めたことは間違いなさそうだ。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

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